新潮文庫
「李朝滅亡」と題されているが、必ずしも李王家の変遷を描いたものではない。日本が19世紀後半に朝鮮半島に進出してから1945年の敗戦による撤退まで、約100年にに渡る朝鮮(韓国)の近代史を日本との関係を軸にして紹介した、いわば「日韓近代百年史」である。
物語風に面白く書かれているが、日清戦争後の閔妃暗殺事件から太平洋戦争当時の従軍慰安婦に至るまで、「日本という国と日本人が、韓国・朝鮮で一体何をやったかと言うことを(略)わたしが勝手にぶちまけてしまう」というもので、基本的には朝鮮半島における日本の「横暴」「悪業」を詳細に記したものである。従って全体が「被害者の立場」への理解という視点で記述されている。
ただ、日本が韓国に悪いことをした、という視点だけでは歴史を解釈出来ない気がする。
日本が一切韓国に手を出さなかったらどうなったのか、李王朝が現在まで続いていたとしたらどういうことになったのか、そのようなネガテイブな見方も必要に思う。
ただ、日韓近代史について、詳細に調べ上げ、まとめたものは日本の資料としてはないように思う。そのような意味で見直す際の教科書的役割は十分に果たしうる作品で、その貢献するところは大きい。
目次が内容をかなりうまく説明しているので記す事にする。
第1章 朝鮮開国
日本海軍軍艦「雲揚」発砲す(1875 開国要求と日本の恫喝のはじまり)
吹き荒れる洋憂の嵐…・江華島事件への歩み(1871 江華島からの侵入失敗と鎖国攘夷意識の徹底)
李王朝骨肉の争い…・大院君と閔妃(1873 鎖国攘夷の大院君の追放と閔妃支配の始まり)
朝鮮は自主の邦なり…・日朝修好条規(1876 それでもまだ守旧派の力が強い)
出兵の駆け引き…・壬午軍乱(1882 農民放棄による一時的大院君復帰と清国(李鴻章)による閔妃復帰)
開花派と守旧派…・・政争の構図(日本と金玉均の接近、日本の影響力増大)
開花への死闘…・甲申政変(1883 金玉均のクーデター失敗と清国の進出)
第2章 李王朝の内紛
外交という名の戦い…・天津条約(1885 日本と清国の朝鮮半島に関する妥協、ロシアの暗躍 清国による金玉均暗殺)
清国軍、日本軍出兵す…・甲午農民戦争(農民暴動に端を発した清の進出と日本の対応)
日清戦争勃発…・豊島沖海戦
「朕の戦争に非ず…・・」黄海海戦
勝者と敗者の苦悩…・下関条約(清国の宗主国としての地位喪失)
閔妃暗殺(日本のロシア影響排除作)
大韓帝国の誕生…・日露戦争への期待
第3章 大国のはざまで
植民地化の足がかり…・日韓議定書
日露戦争…・にがい勝利
大韓国は日本の保護国なり…・第2次日韓協約
慟哭の日…・乙巳五賊と憤死者たち
高宗最後の抵抗…・・ハーグ密使事件
第4章 日本支配のはじまり
悲劇の皇帝・純宗…・高まる抗日義兵闘争
伊藤博文暗殺…・「義士」安重根
日韓併合条約
李朝滅亡
日帝三十六年…・国家の原罪
・ 桂―タクト協定 (1)日本はアメリカのフィリピン統治を認め、フィリピンに侵略的意図をもたない。(2)極東における平和は、日本、アメリカ、イギリスの協力によって維持される。(3)アメリカは日本の朝鮮支配を認める。(301p)
・ 外交権を失った国には、原則として公使館はおいておくことが出来なくなる。(333p)
020205