桜の園     チェーホフ作


岩波文庫 小野理子訳

19世紀末のロシアのある地主一家を舞台に貴族階級の没落とブルジョアジーの台頭というどこにでもあるテーマを描いたチェーホフの名作。しかしそこに人間の理論では割り切れぬ感情と生の悲しさが描かれているところが人を引きつける。日本では築地小劇場の東山千栄子以来、栗原小巻、杉村春子、佐久間良子、奈良岡朋子など歴代有名女優がラネーフスカヤを演じている。
第一幕
地主アンドレーヴィッチ家の子供部屋。パリで恋人と5年間暮らしたラネーフスカヤ夫人がマントンの別荘など手放し、一文無しに近い形で戻ってくる。彼らに使えていたロバーヒンは成功して今では実業家となっている。そのロバーヒンが「先祖伝来の桜の園は借金のかたにうられることになりました。しかし、別荘を建てる人々に貸し出せばこの危機を乗り越えられます。」と提案する。しかしラネーフスカヤ、その兄のガーエフは一笑にふする。ラネーフスカヤが去った後、娘のワーリャがロバーヒンの嫁になる話が出る。地主のピーシクが借金を申し込み、すげなく断られる。ラネーフスカヤ夫人は死んだ子供、亡くなった母のこと等思い感傷にくれている。
第二幕
桜の園。ロバーヒンは決断をせまるがラネーフスカヤもガーエフも相手にしない。ラネーフスカヤは長いこと金を使い散らしたこと、借金を作るより脳のない夫と結婚したこと、その死後別の男にパリで骨の髄までしゃぶられたことなどを懺悔する。彼女はワーリャを嫁にもらわせようとするがロバーヒンははっきりしない答え。大学生のトロフィーモフが哲学ぶった経済思想を開陳するが、自身は何の力もないことは明らかである。
第三幕
客間。第二幕で話題になったユダヤ人グループの演奏が聞こえる。家庭教師のシャルロッタが手品など披露しなごやかな雰囲気である。ラネーフスカヤが金が入らないことを嘆いている。彼女は桜の園に対する哀惜の情をこまごまと述べる。またパリの恋人のことを述べるがトロフィーモフは冷静に分析する。それがまた夫人の感にさわる。アーニャが桜の園が誰かに売れた、との話を聞きつけてくる。やがてロバーヒンが到着、買ったのは何と彼であったと判明する。ロバーヒンは父母が農奴だったころに思いを馳せ一人笑う。そして桜の園の新しい主人と胸を張ってみせる。
第四幕
第一幕と同じ子供部屋。窓のカーテンも絵画もなくなり売り物が角にまとめてある。ラネーフスカヤ、ガーエフが去った後、ロバーヒンが登場し、トロフィーモフ等を相手に酒盛りを始めようとしている。トロフィーモフはロバーヒンの金などの申し出を拒否して去って行く。ラネーフスカヤがガーエフと共に現れ、桜の園に最後の別れを告げる。彼らに金のなくなった事を知ったビーシクも又去る。ワーリャも又ロバーヒンとの結婚に敗れて去ることになる。
「ああ、私のいとしい、なつかしい、美しい桜の園!私の命、私の青春、私の幸せ…・さようなら、永久にさようなら。」
020703