文春文庫
殺人百科シリーズは三巻に分かれているが、ここでは六件の犯罪について、犯人がどうしてそのような行為をするに至ったかが中心に述べられていて興味深い。
淫獣小平義雄
事件 終戦前後にかけて、米を買える農家を紹介してやるなどと若い女性を次々にだまし、殺したもの。
過去 1905年、犯行当時は40歳くらい、生家は小旅館で、父は飲む・打つ・買うに熱中し、家業傾く。小学校時代から成績不良、粗野にして乱暴、不注意、不熱心。卒業と同時に就職、後に海軍に入るも29年除隊。結婚するも別れ、32年分かれた妻の実家を襲う。40年仮出獄、東京に出てボイラーマンとして働き始め、海軍に再び就職。44年再婚し、一子をもうけるも終戦。アメリカ軍雑役夫として働いていた。
犯行動機 性欲が人並みはずれて強く、それに生き甲斐を感じていた?
・まず女を殴り、ついで頸部を絞めて仮死状態にする。この絞め方は、右手を前、左手を後ろにし、、両手で少し上に持ちあげる。二、三分そうしていると、はなを垂らし手をだらりと下げ、仮死状態になるのである。(41p)
冷血正田昭
事件 1953年、金に困って金貸しを新橋のバーで殺した。
過去 1929年大阪市で末っ子として生まれる。父は弁護士だったが生まれた年に死亡。母は女学校教師で、用心深く、冷たい性格。昭は慕っていなかった。成績優秀で48年慶応大学予科に入学。ダンス教習所で知り合った女性とつきあい始める。彼女との結婚をが考えられたが、52年卒業時に結核と診断され生活が荒れる。証券会社に就職するが、生活が派手で、金に困り、かつ件の女性に逃げられた。
犯行動機 金に困ったからだが、冷酷で衝動的。犯行後すぐに逃げ出している。性格が冷酷になった背景には母の性格、長兄の粗暴が影響しているように思う。
誘拐魔本山茂久
事件 1960年、金に困って幼児を誘拐、ガス中毒により死亡させた。
過去 1928年、新潟県の豪農の長男として生まれる。大事に育てられ、成績優秀で、47年東京歯科大予科に入学。優秀な成績で卒業、ダンス所教師と結婚、見習いを経た後、56年下井草で開業。はやったが、女を作り、金に困りだし、実家から借りる等していた。
犯行動機 金に困ったからだが、いかにもお手軽な犯罪。甘やかして育てられたことが原因と思う。
酩酊魔石部金吉
事件 1966年夏暑い夜、勤め先の工場で酒を飲み、大暴れ、止めに入った妻にガソリンをかけて殺すなどした。
過去 1939年福島県の農家の三男として生まれた。学業は奮わなかったが、図画等は優秀。中学校を卒業すると東京に出て印刷会社に勤務、主任になった。無遅刻、無欠勤でまじめだったが、酒を飲むと乱れる癖があり、自らもそれを知り、押さえていた。
犯行動機 たまたま行きがかりでたががはずれ、ビール3本とウイスキーを飲み、酔ってしまった。しかし心の奥には中卒というコンプレックスがわだかまり、係長と対立していた鬱積がでた。
・多くの場合、酔っぱらいは正論を吐く。それだけに怒りが、増幅して行くのである。(137p)
爆破狂若松善紀
事件 1968年6月横須賀線の網棚におかれた時限爆弾が爆発、多くの人が死傷した。
過去 1943年山形県で末っ子として生まれた。父親はトラック運転手だったが戦死、母は再婚した。中学校の成績は中等、おとなしく、機械いじりが好きだった。卒業後高等学校に行きたかったが、母の反対で、東京に出て工務店で働き始める。まじめな性格であったが、66年頃から銃に興味を持ち始める。幼なじみの女性と再会、結婚同然になるが、彼女に別の男が出来たらしく出ていったため、新婚生活のために予定した家が無駄になった。
犯行動機 彼女を男の元に行かせないようにするには横須賀線を爆破したら良いだろう、っというのだから単純。まじめ過ぎたのがいけなかったのは明らか。
・爆破事件一覧(194p)
・爆発に使用した火薬はニトロセルロースとニトログリセリンを主成分とするもので、日本では猟用散弾の発射薬として市販されていることが分かった。(196p)
鉄砲玉鳴海清
事件 1978年京都市の「ベラミ」で山口組組長田岡を狙撃した。
過去 1952年大阪で野菜の行商の子として生まれる。教室では「お客さん」として過ごし、盗み等で警察の厄介になることしばしば。長じて「大日本正義会」に入り、大阪戦争で先代会長を殺されたことから、山口組に報復を決意した。
犯行後 隠れていたが反山口組と見られた忠誠会に惨殺された。
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