中公新書
日記のお天気の欄にカンカン照りと書いた。夏らしくてよいけれど、本当に暑い。今日当たりは35度近く、観測地点によっては越えたところもずい分あるようだ。
今年は冷夏だったが、ここ2、3日急に暑くなった。おかげでセミがどの種類の順番もへったくれもなく、一斉に鳴きだしたように見える。
虫偏に 単(ひとえ)に涼し 蝉の声
こんな句が高等学校の教科書に載っていたように覚えている。確か太田蜀山人の作である。
中尾舜一「セミの自然誌」を読む。合わせて幾つかの本を参考にする。
まずはセミの鳴き方あたりから・・・。
セミは、発音神経が興奮すると、胸部と腹部の境にあるV字状の鳴筋と呼ばれる筋肉の収縮運動を起こす。この運動は翅を動かす飛翔筋の運動よりも激しくアブラゼミで1秒間に100回くらいおこす。鳴筋は、その両腕が発振膜に連動しており、鳴筋の収縮で膜がへこんだり戻ったりして音を出す。雄の腹腔が大きな空洞になっていて、共鳴させ拡大する。共鳴室の空気量や形や容積を変えて、音の強弱・高低・リズムを生み出す。
セミは分類学的に見ると、半翅類と呼ばれている昆虫の仲間で、その半翅類は、異翅目(カメムシなど)と同翅目(セミ、ウンカ、カイガラムシなど)に分けられる。いづれも口が尖った口吻状で汁を吸うのに適している。セミにおしっこをかけられる事があるが元は気の汁だからそんなに汚いものではないようだ。
日本にいるセミは32種、そのうち15種は沖縄地方だけにいる種類でチョウやトンボに比べると少ない。東京都区内にいるセミはニイニイゼミ、ヒグラシ、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシの5種のみである。かって晩春から初夏にかけてなくハルゼミというのがいたが、最近ではみかけない。
ニイニイゼミは夏の太陽が照りだすと最初に鳴き始める小型のセミ。体長20-26ミリで北緯5度から45度にわたって生息し世界でもっとも分布範囲が広い。<チーシー>とか細くなきサクラ、ケヤキ、マツなどに多い。
アブラゼミはニイニイゼミについで現れ、体長34-40ミリ。<ジージリジリジリ・・・>と鳴き、サクラ、ケヤキ、スギ、ナシなどに多い。日本でもっとも普通のセミ。
ヒグラシは スギやヒノキ林に多く早朝や夕方などに<ケ、ケ、ケ・・・カナカナカナ・・・>と鳴く。雄32-39ミリ、雌23-28ミリで大きさが違う。
ミンミンゼミは翅が透明の美しいセミで、体長29-39ミリと大型。ケヤキ、サクラなどの喬木を好み<ミーンミンミンミンミー>と鳴く。
ツクツクボウシは体長23-33ミリの小型のセミ。サクラ、ケヤキ、カキなど多くの木に住み、これが鳴きだすと、夏の終わりが感じられ、涼しい秋の訪れが近いことを知る。
鳴き声は<ツクツクオーシツクツクオーシ・・・ツクリョーシ>とある。しかしあるお医者さんによるとによるとオーシンツクツク・オーシンツクツク・イーオス・イーオス・ジャーと聞こえ、<往診つくつく、往診つくつく、いいです、いいです、じゃあ、さよなら>と言っているようだ、という。
外国のセミの話も知りたいところだが、あまり触れられていない。フランスのアブラゼミは<ジュー、ジュー、ジュール、ジュール、ボン・ジュール>と鳴く?
セミの卵は多くは枯れ枝に産み付けられ、枯れ枝の中で1ヵ月半ないし10日あまりを過ごす。やがて孵化して幼虫となって地に落ち、地の中で長い幼虫時代を過ごす。期間はニイニイゼミで4年、アブラゼミ、ミンミンゼミで2-5年、ツクツクボウシで1-2年との報告がある。終齢に達して羽化が近くなると、老熟幼虫は地上近くまで移動する。待機している穴の中で、薄い土の天井から絶えず外部の情報をチェックし、適当な条件になれば穴を脱出して地上に出る。木の幹に這い上がり、好みの場所に静止して羽化する。羽化のタイミングを決めているのは明るさで、ニイニイゼミでは午後4時前から11時ころ、アブラゼミでは午後7時ころから12時ころになる。
羽化してからセミの寿命は2-3週間。雌の方がやや長いらしい。成熟するまでが4-5日間、そのあとは雄は毎日鳴き暮らし、雌は産卵をしながら10日余りを過ごす。
この卵から羽化の間に多くの天敵に遭遇する。それらについては本文に譲るが、最近面白い話を聞いた。カラスは非常に賢く羽化直前のセミの潜む穴を見つけ、そこに木の枝など差し込み、幼虫を地上に追い出し、食ってしまうという。本当だろうか。
考えてみればセミはわずか2-3週間のために長い幼虫時代を耐え忍ぶわけで、それだけに羽化後はものすごく勢力的に生きているように見える。件の往診つくつくのお医者さんは、言っていた。
「人間のように後先のことなど考えずに今と言う瞬間を精一杯生きるのさ。考えようによっちゃすばらしいじゃないか。」・・・・なるほどネ。