早川書房 ONE CHILD 入江 真佐子訳
その子は黒ずんだ顔をし、敵意むき出しの目をしていた。6歳の子供にしてはずいぶんちっぽけな子供でひどいにおいがした。彼女の名はシーラ。父親は、季節労働者でキャンプにすみ、母親はずっとまえにシーラをすてて逐電していた。シーラは幼児を火傷させるという傷害事件を起こし、精神病院に送られることになったが、あきがなかったため、トリイのところにおくりこまれてきたのだ。
トリイはあらゆる障害児教室から見放された自閉症や強迫神経症の子供たち8人をすでに抱えていた。シーラはきた早々金魚の目玉をつぶしたり、ブロックをなげつけたりするなど凶暴だった。決してしゃべろうとせず、泣きもせず、何かをやらせようとすると金切り声をあげて大暴れする。ただでさえデリケートな子供たちがパニックに陥った。こんな扱いにくい子供は初めてだ。
しかし彼女のボキャブラリーが多いなどIQは高く、知的障害児どころではないことが明らかになった。彼女は生まれてから6年間ずっと疎んじられ、無視され、拒否され続けてきた。車から放り出され、人々の生活からも放り出されることによって心に深い傷をおっているのだった。
こぎれいに、女お子らしくさせ、やさしく辛抱強く接することによって彼女は次第に心を開いてきた。しかし状況はなかなか改善されない。校長との対立、シーラの父親との対決など問題がおおかった。さらには自分自身が少しの間来られないことになりその間どうするかという問題もあった。印刷物が徹底してきらいなことも問題だった。
しかしとうとう精神病院に送られることになった。私たちは徹底して戦い、シーラをここにおいておく決定を勝ち取った。私たちはそれを祝ってピザを食べ、さらに赤い洋服を買ってやった。
ところがシーラは今度は叔父から性的暴行を受けた。しかし今ではそれも彼女は乗り越えたのだった。やがて本当に私たちが分かれなければならない日がやってきた。
家庭内暴力、貧困、性的虐待に蝕まれた少女が、一人の献身的な教師におそるおそる心を開きと、やがて深い信頼の絆で結ばれえゆく姿を描き、世界中でヒットした作品。考えさせるものがある。教師という職業が四六時中生徒についているわけには行かぬことにもどかしさを覚え、同時に甘えさせるのではなく自立させることに力点をおいていることになるほどと思った。
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