城 カフカ


河出書房新社 原田 義人訳

主人公Kは深い雪の中に横たわるウエストウエスト伯爵城下の町に到着して、城から呼ばれた測量技師だと言う。城は彼の挑んだ挑戦を受け入れたらしく、測量技師として任命してくる。そしてアルトウールとイエレミーアスなる二人の助手を割り当ててくるが、子供のようなものでまるでものの役に立たない。また城とKの連絡役に村八分を受けているバルナバスという青年が割り当てられてくる。体制は整うがK自身は任命されたものの測量技師としての仕事は与えられない。
紳士荘なる宿屋の酒場に到着すると城のクラムという男が泊まっているから泊めるわけに行かぬという。しかしKはクラムの女で給仕女のフリーダと意気投合し、フリーダの泊まる橋亭で同棲生活を始める。彼は関係をはっきりさせようとクラムへの接触を試みるがやんわりと撥ね付けられる。Kも調書などの協力要請に応じない。やがて橋亭も出ることになる。村長は、話し合いの中で事務関係の手違いなどくだくだと説明した後、「あなたにやってもらう仕事はない。ただそれでは困るだろうから学校の小使ではどうだ、と提案してくる。仕方なく受け入れ、学校の体育館でフリーダとの生活を始めるが、教師たちからさんざんいたぶられる。彼はとうとう邪魔な助手二人を追い出す。
Kはフリーダがいやがるのを無視してバルナバスを訪問する。オルガと妹のアマーリアがおり、彼ら自身の置かれている状況を説明してくれた。三年前、家は靴屋をやり、父は消防士として尊敬され一家は幸せであった。ところがある時ソルデイーニという役人がアマーリアを見初めたのかおかしな手紙をよこしすぐに自分の元に来い、と要求してきた。アマーリアは怒って使者の前でその手紙を破いてしまった。
それから村のものが急にバルナバス一家との交際を断るようになり、父も消防士を解雇された。靴屋も売れなくなり店を閉め、父は何とかソルデイーニと使者に釈明しようと村に来る役人を探したが見つからなかった。そのうちに体を壊してしまった。父の意を受けてバルナバスは何とか城に近づこうと努力した結果、あなたに連絡を取ると言う仕事を始めてもらった。そこで張り切ったのだがうまく行かない、と言うのだ。
学校に戻るとフリーダがイエレミーアスとねんごろになり、Kは行き先さえない。フリーダを説得しようとするが失敗、彼女は再び紳士荘に戻るという。さらにKは役人エルランガーから「お前のせいでフリーダが紳士荘をでたが、クラムが仕事の環境が変わって困っている。フリーダを元に戻せ。」と強圧的に命令される。ところが紳士荘に行くとフリーダの後がまに収まっていたペーピーからフリーダはこの酒場では大変な勢力を張っていた、私は部屋付き女中で店に出ることを夢見ていた、せっかくのチャンスだったのにまた元に戻らなければ行けない、と散々に愚痴を言われる。そこに女将が出てきて…。

作品は未完で終わっている。作者はこの作品で何を言おうとしたのだろうか。カフカは1983年現在のチェコスロヴァキアの首都プラハ、当時はオーストリア帝国領プラークに生れたユダヤ人でドイツ人はおなじように憎まれてきた。その為に生活上の不利益を被ったらしいし、ユダヤ人としての意識も強かったのだろう。そういった事に対する問題意識がこうした作品を生み出させたのだろうか。
次にこの作品が未完にも関わらず、どうして今日まで読み次がれているか、と言う点だ。城は村民にとって絶対的権力である。その権力を背景にタテワリ官僚主義をベースに官僚がのさばり、村民に絶対的な服従を強いている。その動きが正当で速やかなものならば良いのだが、とてもそうは思えない。村民はそんな条件の中でひれ伏すだけである。当然それはよそ者にはひどく不合理に映る。しかし城も村もそういった意見をまったく受け入れようとしないばかりか、追い出そうと試みる。
良く考えてみると弱い庶民の立場からはどんな組織にいても多かれ少なかれ感じられることだ。共産主義社会、今の日本の社会、ずっと進んでいるはずのアメリカ社会。長いものには巻かれろ、という諺がある。その長いものの不条理をグロテスクに描こうとしているところに皆共感を覚えるのだろうか。

しかし古いからかも知れぬが、難しい訳文ですな。読んでて眠くなる!次の文は読んですぐに意味がわかりますか?
Kの招聘が行われた事情について、またこの招聘が村と城とでであったさまざまな困難について、Kの当地滞在のあいだにすでに起こった、あるいは起こりそうだったさまざまなもつれについて何も知ることなしに、そうしたすべてについて何も知ることなく、そればかりか、これは一人の秘書からただちに考えられるはずのことだが、少なくともそんなことがあるという予感は彼の心に浮かびそうなものなのに、そんな様子も見せないで、ビュルゲルはいきなり小さなメモ帳の助けを借りてこの件を上の城で解決してやろうといいだしたのであった。(294P)

(1922 39歳)
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