漱石事件簿          古山寛原作・ほんまりう画


(コミック)新潮社

 コミックだが、明治文壇裏話をベースにした推理小説と言った趣。時代の流れを知る上でも興味深い。
第一綴黄色い探偵(前編クマグス)
 1892年ロンドン。当時としてはめずらしい日本人南方熊楠は一人勉学に励み、大英博物館の嘱託になった。しかし彼はピルトダウン原人をインチキと喝破し、調査現場でであったコナン・ドイルが夢中になっていた降霊術のインチキを見破ってしまう。アヘン戦争を声高に非難し、館員と問題を起こしたこともあって帰国させられる。
第二綴黄色い探偵(後編金之助)
 1900年ロンドン。ボーア戦争にゆれ、霧が支配し、ビクトリア女王の葬儀が執り行われていた。漱石は病院でホームズのモデルとなったベル博士に邂逅。二人はビルトダウン原人をインチキと決めつけ、コナン・ドイルと対決する。漱石が日本に帰国した頃、団子坂で男女の死体が発見された。
第三綴団子坂殺人事件
 首くくっていた女は芸者のお夏、男は黒田清隆の書生。黒田は酒癖が悪く、しかも過去に自分の妻を含め二人の女性を殺していたが、その都度同郷の大久保利通がかばっていた。あるいは黒田が殺したのではないか。しかし森鴎外の調査結果は違っていた。サド・マゾ遊びの結果だというのである。
第四綴明治百物語
 1911年東京。文豪が小日向養言寺に集まり、百物語。最後の百個目が語られるとき化け物あるいは魔物があらわれるという。かっけの話、精神と肉体が分離する話など。百米の蝋燭が消されたが何もあらわれなかった。しかし何かが空を覆い始めていることを感じた者がいた。そして大逆事件と統帥令。ある意味ではこれらが言論人の自滅を招き、太平洋戦争で日本が焦土と化すまでの方針を決めてしまったのである。

r990918