世界で一番大きな水族館は沖縄の美ら海水族館だそうだ。77の展示水槽があり、その水量をすべてあわせるとおよそ1万トン、中でも巨大なジンベエザメとマンタが何尾も泳ぐ「黒潮の海」の水槽は人気で幅35m、奥行き27m、深さは10mある。ああ、これならこの春沖縄に行ったときに訪ねておくべきだった、と今頃後悔する。
この水槽に使われているアクリルパネルは厚さが60cmもあるそうだ。昔は水槽といえばガラスだったが、今は成型自由、接着剤でいくらでも大きく出来るアクリルが使われる。形も円筒型などのものが多くなった。円筒型容器に張った水にモーターで緩やかな流れをつくってやる。すると魚は流れに逆らってみな一定方向に動き、見やすいのだそうだ。
この本は水族館にいったら子どもでも考えるような疑問をずらりと並べ優しく解説する形を取っている。著者は鳥羽水族館でアシカトレーナーを経て、巨大水族館のさきがけとなった鳥羽水族館をプロでユース、その後あの新江ノ島水族館の監修とプロモーションにも加わったという現場のベテランらしい。以下幾つかの疑問と答え
・水槽の岩はどうやって入れるの?
昔は本物の岩を使ったが、今はみな擬岩。硬質プラスチックのFRP樹脂と、コンクリートで作るGRCが良く使われる。後者は質感があるが、現場で手間がかかり、その後もコンクリートから出るアクが、長い期間しみこみ、魚をなかなか入れられない。
・ペンギンは日本の暑さにはへいきなの?
ペンギン=南極というイメージが強いが南極に住むペンギンは少ない。特にフンボルトペンギンは日本の気候が彼らに会うから飼いやすく、全国で繁殖している。
・イルカやアシカはどうやってショーを覚えるの?
動物の送る合図を有効にするためには、お互いの価値観を共有しなければならぬがそのためにはやはりエサだ。しかしイルカは自身結構楽しんでいるようにも見える。そのためトレーナーも一緒に楽しむという姿勢が必要だ。
・水族館の動物たちは退屈しない?
魚は水族館で飼い始めると緊張がゆるむのが一般的。結構退屈している。ハンカチを水槽にくっつけるとその動きに合わせてまわったり、ペンギンが時計などの反射光を追いかけるなどは典型的な暇つぶし?だそうだ。
・ピラニアの水槽工事は恐くないの?
ピラニアはとても臆病な魚なのだそうだ。アマゾンでは巨大魚に食われないように逃げ回っており、食われて少なくなる分を補うために数だけはイワシやサンマのように多い。
・人食いざめに襲われた飼育係はいる?
大抵の魚は調教できるがサメだけは出来ない。しかしサメの水槽もきれいにしなければならないから、水槽を仕切ったり、係員が檻の中に入って掃除するなど工夫をしている。
・水槽の魚は大きく見える?
円形型水槽では、屈折率の関係で何割か大きく見得る。ただガラスのそばにきた魚の場合は余り変わらない。逆にトンネル水槽の場合は小さく見える。
最後に飼っていると愛情がわくのか死んだ魚は食べないそうだ。水族館に慰霊碑がたっているところもある。実験やショーには使うそうで、マグロの中身を見せようと解体ショーを企画したところ「ワサビは持参するのですか。」と聞かれて驚いたとか。
なかなか面白い話があるでしょう?肩の凝らない、それでいてなかなか奥の深い本、これから夏本番、海辺のテラスでこんな本を読んで時間を過ごすのも一興か。
後記 魚も水族館で飼いはじめると緊張感がなくなるのが一般的。危険が迫ると水を吸い込んでまん丸な針のボールになるハリセンボンは、めったなことで膨らまない。飼育係が手で持ち上げ、タモですくっても平気にしているほどずうずうしい。この話を読んで平和な日本をふと思った。
060814