大変だア       遠藤 周作


新潮文庫

不甲斐ない男どもの多い中に、塙剛太は強い男。家では「風呂、メシ、寝る」の三語で済ませる関白亭主。飲み屋で知り合った男を自宅に呼んで鍛えるなどしている。妻の静江は、夫の横暴に慣れていたけれど、何となく満ち足りない。女友達に連れられて、都心のホストクラブに行き、刺激を受けた頃、娘時代に彼女が好きだったという田辺正明から「御会いしたい」の手紙を受け取る。娘の巴絵は、お年頃、母親をごまかして友人と不良大学生の主催するゴーゴーパーテイに潜り込み、逃げ出してくるなどしている。
向坂部長はフランスが水爆実験を行ったマッカラン島の調査結果をみて驚いていた。生き物にプラターズ線の影響が出ているのだ。雄が雌化し、雌が雄化する。彼は作家の遠藤周作にそれに関するユーモア小説を書いてくれるよう頼む一方、プラターズ線の影響を受けた鶏二羽を実験用に貰い受けることにする。ところが部下の泉に取りにやらせたのだが、油断しているうちに一匹が逃げ出してしまった。
巴絵と交際したい大学生二人が塙家を訪れると、剛太が出てきて、「軟弱は許せん。俺と闇鍋を食うなら認めてやろう。」大学生二人、鍋に入れるものに困って、たまたま庭に逃げ込んできた鶏を絞めて鍋にいれてしまった。それがあの逃げ出した鶏だったから大変。しばらくして剛太はふっくらとし、乳が出てくるし、巴絵は男顔負けになるし、大学生は妙になよなよしてくる…・・。

ユーモア小説。しかし「おバカさん」とか「私が・棄てた・女」などとは違って、ストレートに現代の風俗を皮肉っているようである。教訓じみた話はない。ところでこの作品書かれたのが昭和四十四年、今から三十年前、時代は変わりましたなあ。女はずっとずっと強くなってしまいましたよ。どうしましょう、遠藤先生!
000613
(1969 )