探偵小説の「謎」       江戸川 乱歩


社会思想社

著者の有名な作品に「類別トリック集成」があるが、これを一般にもわかりやすく書いたのだという。推理小説学校でもあればそのままテキストとして使えそうな内用。私はノートを取りながら読んだのでここにはそのノートをそのまま記す。

奇矯な着想
・サーカスで獅子にくしゃみをさせ獅子使いにかみつかせる・・・・
・人形がピストルを発射(木質の湿気による膨張作用)
・太陽の殺人・・・・ズームドルフ殺人事件
・目の前に時限爆弾、目をさまして逃げだし、エレベータホールに墜落
・列車の消失・・・・支線に列車だけを引き込む
・・・・列車ごと消失
・口に銃をくわえて死亡・・・・歯科医による殺人
・死んだふりして脈を止める・・・・不可能犯罪捜査課
・洗面器に組んだ川の水で溺れさせる。・・・・船から消えた男
・水に濡れると縮む繊維・・・・顎十郎捕物帖

意外な犯人
・一人二役・・・・列車に自分と自分が演ずる他人、
・探偵が犯人・・・・813、黄色い部屋、お前が犯人だ、ビッグ・ボウ事件
・事件の記述者が犯人・・・・アクロイド殺人事件、スミルノ博士の日記
・死体が犯人・・・・死人の指(アーサー・イーリー、死後硬直により、通夜の夜引き金が引かれる)、ケンネル殺人事件
・意外な多数犯人・・・・オリエント急行殺人事件
・動物が犯人・・・・レントン館事件(オウム、マッチと貴金属)
・事件の発見者が犯人・・・・ザングイル、チェスタートン

凶器としての氷
・水が凍る時の膨張力と氷の溶解性の利用
・閂と氷片
・氷の弾丸、氷の短剣(蒸し風呂の中)
・毒氷
・ドライアイス 炭酸ガスで死亡、液体空気で凍らせバラバラ(海野十三)
・花氷、氷の張った湖水のスケート、剣を仕込んだ雪人形の落下

異様な凶器
・接吻殺人(舌をかみきる、毒を飲ませる)
・加速度による殺人・・・・上からハンマー
・動物を凶器として使用・・・牛の角、獅子の爪
・ガラスが凶器・・・刃物、粉にして注射、食べ物に混ぜる

密室トリック
・犯行時犯人が室内にいなかったもの
(1)室内の機械的な装置によるもの
(2)室外よりの遠隔殺人・・・・ムーンクレサントの奇跡
(3)自殺ではなくて被害者自らの手で死に至らしめるトリック・・・・赤後家の殺人
(4)別室内で他殺を装う自殺・・・・本陣殺人事件
(5)自殺を装う他殺・・・・密室の行者
(6)密室における人間以外の犯人・・・・まだらの紐、モルグ街の殺人
・犯行時犯人が室内にいたもの
(1)ドア、窓または屋根に施すメカニズム
イ ドアにしかけるメカニズム・・・・鍵、差し込み錠、カンヌキ、ねじこみ錠
蝶番、錯覚利用の早業、二つの鍵のトリック
ロ 窓に仕掛けるメカニズム
ハ 屋根を持ち上げるトリック
(2)実際より後に犯行があったと見せかける
イ 偽音トリック
ロ 視覚をあざむく
ハ 一人トリックと密室トリックの組み合わせ・・・黄色い部屋の秘密
(3)実際より前に犯行があったとみせかける
(4)もっとも簡単なトリック・・・・帽子から飛び出した死
(5)汽車と船の密室
・犯行時、被害者が室内にいなかったもの
・密室脱出トリック・・・・十三号独房の問題
隠し方のトリック
・物品の隠し方・・・郵便配達夫、六つのナポレオン、鵞鳥に飲ませる
金貨を伸ばして家中に貼り付ける ガラスの凶器
・生きた人間の隠し方・・・・病人、仮装舞踏会、車掌(Xの悲劇) 棺 蝋人形
・死体の隠し方
イ 永久に隠すトリック・・・ パノラマ島奇談、二瓶のソース、オ・ソレ・ミオ
ロ 一時隠すトリック・・・樽、負けると決まった戦いで死体を隠す
ハ 死体を移動して隠すトリック・・・探偵小説、天狗
二 顔のない死体・・・刺青殺人事件

プロバビリテイの犯罪
暗示を与えて死地にゆかせる
途上(谷崎潤一郎)、幼児を殺す、少女に暗示

顔のない死体
・死体の顔をつぶす・・・・顔全体を包帯でまく
・首を切断・・・・刺青殺人事件
・ヘロドトスの神話・・・・建築師が石庫に秘密の抜け穴を作る

変身願望
一寸法師、人間椅子、二十代の美青年(マルセル・エメ)、自分の妻と浮気(石榴)

異様な犯罪動機
・乱歩の分類・・・・感情の犯罪、利欲の犯罪、異常心理の犯罪、信念の犯罪
・変わった犯罪動機・・・・
男の首・・・・貧困と不治の病の絶望から来た富裕階級への嘲笑
僧正殺人事件・・・・優越感と老化、能力喪失から来る劣等感
Yの悲劇・・・・自己の劣等感への復讐を子供が実現する
二人に親友の間に起こった殺人事件・・・・一方が常に優勢
動機のない殺人・・・成功したが両親の仮借
自殺できないから、他人を殺して死刑にしてもらおう
叔母殺人事件・・・・自分の自由を束縛している叔母を殺そう
・逃避の動機・・・大統領探偵小説=大統領が人知れず引退したい!

探偵小説に現れた犯罪心理
男の首のラデックと罪と罰のラスコーリニコフ
僧正殺人事件・・・・超絶的思想と道徳不感症者
赤毛のレドメイスン家の犯人の告白
=犯罪者の心中の密かなる後悔こそ発覚への第一歩である。(132P)

暗号記法の種類
・割符法
・表計法・・・奇岩城、指暗号、手旗信号
・寓意法・・・黄金虫の後半
・置換法
(1)普通置換法・・・逆進法、横断法、斜断法
(2)混合置換法
(3)挿入法
(4)窓板法・・・窓の穴あけが重要
・代用法
(1)単純代用法・・・図形代用法、数字代用法、文字代用法
(2)複雑代用法・・・ヴィジュネル表、計算尺暗号法、円盤暗号法、自動計算機械
・媒介法   恐怖の谷(年鑑)フレンチ警部最大の事件(株式売買票)二銭銅貨(点字)ヘロドトス(人間)

魔術と探偵小説
・民族学中心としての呪術
・神秘学(オカルテイズム)の中心題目としてのマジック
小栗虫太郎、デイクスン・カー(プレイグコートの殺人、孔雀殺人事件、読者よ欺かるるな          かれ、三つの棺)
・奇術としてのマジック・・・・フーデイニの秘密

明治の指紋小説・・・幻燈(岩出銀行血染めの手形・・・英国人ブラック)、赤い拇指紋

原始法医学書と探偵小説
・當陰比事物語 ・・・・ 七十二対の話
夫を殺して家に火をつけたか、事故か。・・・・豚を焼いて比較
・本朝桜陰比事

スリルの説
快感のスリル、苦しみのスリル、悲しみのスリル
天の邪鬼、ドストエフスキー(カラマゾフの兄弟、罪と罰)