哲学原理    デカルト

岩波文庫

この書は自分の哲学を学校用のテキストとして説明した第一部と、新しい独自の自然学を展開した第二部以下からなる。文庫本に治められているのは第二部の衝突の法則など力学に関するところまで、第三部以降に宇宙の生成、地球の生成、地球の諸物体の生成から磁気現象にいたるまで一貫した理論でせつめいされているとのことだ。またこの書はホイヘンスやニュートンなどの力学形成に重要な影響を与えた、とか。
「すべてのことについて生涯に一度は疑う決意をする」必要がある、とは、デカルトの基本的な考え方のように思われる。私たちはまだ自分の理性を十分に使えないでいるうちから、身の回りで怒ったことに対して、感覚的にようような判断を下してきており、その経験から多くの先入観が出来てしまっている。それらはしばしば間違っている上、それらに妨げられて真の認識が出来なくなっている。
一生に一度はほんのわずかな不確実な疑念のみいだせるものは、疑ってみよう。明晰に、最も確実なもの、最もたやすく認識できるもの以外は、偽であるとみなすのが有益だ。
このような方法で、自分の周囲を見渡し、共通概念を導き出し一般には精神はそれが真であることを確信する。しかし精神は絶えず注目していることは出来ないから、最も明証的に見えることでさえ思い違いをしていないかどうか、考えるなければいけない。
神の我々の概念には必然的に存在の概念が含まれるから、その存在は正当化される。そうした神の概念を振り返ることによって我々は神が永遠・全知・全能にしてすべての善及び真理の源であり、万物の創造者であること、ならびにその無限性、および完全性をしる。そうしたとき神は我々がいつも誤ってばかりいるように、創造しようと欲したのかもしれない。そう考えて疑う必要があるのだ。
デカルトは、このように述べる一方で、懐疑主義を実生活にまで適用してはならないとするところが面白い。なぜなら実生活では、我々が懐疑から脱し得ないうちに行動すべき機会を失ってしまうケースが実に多く、単に真実らしいというだけで容認したり、ふたつのうちどちらかを選ばなければならないような場合も現出するからである。
第二章で「宇宙は無限の広さを持っており、真空と言う空間は存在しない。また物質はどこまでも分割が可能で、原子と言うものは存在しない。」と述べていることも新しい考え。もし空間に何もないとするなら、壷は内側同士がくっついてしまう、というような議論を展開している。
また「運動及び静止は、物体の相異なった様態であるにすぎぬ、とする。「神は運動の第一原因であり、宇宙のうちにつねに同一の運動量を保存する。」「いかなるものも、出来る限り、つねに同じ状態を固持する。」「一たん動かされたものはいつまでも運動し続ける」「すべての運動はそれ自身としては直線運動である。」・・・これらが後にニュートンの運動の第一法則につながっていったことはいうまでもない。

050416