新潮文庫
28歳電気技師だった私は、わずか15歳のカフェの女給の卵の奈緒美と親しくなり、先方の両親の了解も得て一緒になる。大森に小さな文化住宅を買い、彼女にはピアノと英語を慣わせ、風呂に入れ、お馬遊びをしてやり、おままごとみたいだけれど、うるおいのある生活を始めた。私の庇護の元、奈緒美の隠れた能力は次第に開花し、音楽も英語もうまくなるし、水泳も一夏のうちに覚え込んでしまった。性的関係も出来、私をパパさんと呼んで慕った。
しかしだんだん彼女の自我が芽生え、私に反抗するようになり、さらに私を打ち負かす事さえ覚えてしまった。18歳の秋、浜田という男があらわれた。何でも奈緒美のダンス友達という。私も誘われてダンスを習うようになり、とうとう舞踏会に行った。
パーテイ以来、奈緒美は浜田、熊谷など舞踏会で知った連中が我が家を訪れ、傍若無人に振る舞うようになった。懐がだんだん苦しくなる。そうして、雑魚寝・・・何がおきているか知れた物ではない。会社の同僚から奈緒美の芳しからぬ情報が入り、私は彼女を疑い出す。そうしたとき奈緒美の提案で鎌倉の別荘を借りて移り住む。しかしそれが熊谷の差し金で、熊谷と奈緒美が出来ていることに気づかされた。さらに浜田とも・・・。
私は浜田の忠告を元に、奈緒美に熊谷と切れるようせまり承諾させる。しかしそう言う中で次第に私と奈緒美の間には亀裂が出来始める。子供を産ませようとも考えたが奈緒美は拒絶する。とうとう再び奈緒美が熊谷と密会する現場を押さえた私は「出て行け。」と一喝。ところが彼女がいなくなると、私は急に恋しくなり探し回る。そして外人といたなど芳しくない情報ばかりを聞かされる。そうしているうちに陰で私を支えてくれていた母が他界した。私は会社での評判を落とし、辞職した。
捜していた奈緒美は、突然荷物を取りに来たと称し、戻ってきた。荷物をわずかづつ持ち出し、それを口実に足繁く訪れるようになった。その間私を散々誘惑する癖に、意地を張り通す。そしてこちらが弱くなったときに条件を持ち出す「昔のようにお友達になりたいの。」ただの友達は私を散々じらすけれど、後一歩は許さない。「顔を剃れ!」「脇の下を剃れ!」それだけ!結局全面降伏で、私は奈緒美と元の鞘に収まることに・・・。
知性も道徳感情もまるでない妖婦奈緒美の肉体にひかれ、いいようにあしらわれる主人公の河合譲治の行動は愚かしい。しかし人間として考えてみるとその愚かしいところに、読者はあこがれや共感を感じるのではないかとも思う。全編にあふれる何とも言えぬ奈緒美の妖気というかエロテイシズムに唖然とする。2年ほど前世間を騒がした渡辺淳の「失楽園」がずいぶんこの作品と似ている、と感じた。
991013