岩波新書
著者は929年生まれ、「中国陶器の海上交易による世界的な分布と技術交流を研究、50カ国以上、100回以上にわたり海外の遺跡・博物館の調査を行う。」とある。
磁器は中国の特産品として各地に伝わった。磁器を焼くのに必要な二つの要素は1300度の高熱と磁土、カオリンである。一つにはカオリンが多量に存在したことである。カオリンは花崗岩や石英班岩が風化作用を受けて分解した、白色微細な結晶が集まった鉱物で化学成分はAl2O3・2SiO2・2H2Oで、加熱すると500度くらいで脱水し、Al2O3と2SiO2化合物に変わってゆく。耐火性が強く、純粋なものは1700度強までの火に耐えるが、雲母、長石、石英などが混ざっていると1300度前後に留まる。
今一つには燃料に多くの場合植物の茎や葉、家畜の糞などを用いたが、中国北部では早くから石炭を用いたため高温が得られやすかった。また宮廷ご用達の官窯が分業体制を発展させ、技術の進歩を助けることとなった。
磁器は陶器と比べ吸水性がなく,透光があり、熱伝導がよく、たたくとチンチンと涼やかな音がする。絹などの中国特産品は、駱駝にゆられてシルクロードを西欧に運ばれていったが、磁器は、海を通って、回教徒の交易船や中国人によって運ばれていった。ヨーロッパでは、土器や陶器しか焼くことができず、磁器はその製法もわからぬ憧れの焼き物であったのだ。
青磁はすでに中国では殷の時代から作られていたらしいが、9世紀には越州青磁が輸出されていた。北部中国では甲窯といわれる形式の炉で、石炭で焼き、芝草色である。南部では焼成室が傾斜にそって這い上がる龍窯を用い、燃料には松薪を用いる。また半透明にした粉青色に発色させたものも現れた。これらの技術を元に南宋時代には青磁のピークを迎え、それらは世界中へ伝播していった。
白い磁胎の上に透明釉をかけた白磁が中国で初めて作られたのは7世紀である。代表的なのはやはり景徳鎮のもので宋代のものは鉄分が残りやや青みを帯びている。
白い磁肌の上に美しい絵や文様を酸化コバルトの濃い藍色で絵筆によって施されたものが14世紀に大量に生産され始めた。中国でも唐三彩にコバルトを用いた例があるが、どうもこの染付け技術はペルシャが起原、その基本となるアフリカ産のコバルトは回教徒の手を経て中国にもたらされたようである。景徳鎮は特にこの需要にこたえようとした。しかし元時代の染付けは紅巾の乱などの革命騒ぎのうちに終焉を迎えた。
白磁の上に赤、緑、黄、紫、黒、青などを使った色彩的な絵や文様が施されたものを「色絵」と呼ぶ。これには上絵行けと呼ばれる2度焼き技術が使われる。景徳鎮では15世紀明朝初期に始まり、世紀末には大量に生産されるようになった。清代になると、これがさらに発展して多彩釉にうつってゆく。色調も従来は透明度の高いものが多かったが不透明な硬彩とよばれるものまで現れた。
17世紀になってようやくヨーロッパでも作ろうとマイセン窯、セーヴル窯などが開かれた。また日本は秀吉の朝鮮出兵に伴って、朝鮮人陶工が日本にやってきた。彼らが有田焼などの基礎を築いた。それらが発展し、一部がヨーロッパにまで輸出され、影響を与えた。
話がときどき飛んで分かりにくいところもあるが、やきものの東西の交流と発展を知る上ではなかなか面白い一冊であった。
2007年6月9日(土)曇り、晴れ
(参考)
久しぶりに陶芸教室。2年位前から茶碗ばかり引いている。
今日は備前の土が入ったから、というので渡された。
夏茶碗を2個引いたのだけれど、粘土の伸びがものすごく良くてびっくりした。
土の量も少なかったせいか、轆轤に簡単に座った。
成形性の良い粘土というのは、ウエブサイトのあるページに由れば
1)「ぬれ」がよいこと。すなわち粒子表面と水との相互作用(主に静電的相互作用=電気の+とーの引き合う力による)が大きく、粒子表面に形成される水の皮膜がおおきいこと。
2)極めて微細な粒子であること。(大体500nm以下)
3)粒子の形態が扁平であること。
石英(二酸化珪素)や酸化アルミニウムは細かくしても1)や3)に欠けるため、工業的には結合剤を加えて成型する。
多くの粘土は多少なりともこの性質を備えている。もっともこの性質が大きいのがモンモリオナイトだが、乾燥したときの収縮が大きく、単独では成型できない。しかし他の粘土を少量追加すれば良質な粘土になる。
またハロイサイトやセリナイトは粘りが弱い。
単独でもっとも成型に適した物性を持つのは堆積性のカオリナイトといわれており、薄板状で陽イオン交換応力が大きいため、電荷が中性からずれやすく、静電的な効果を表面に誘発しやすい性質を持っている。また置換陽イオンとなるカルシウムやマグネシウムは表面の濡れやすさを増強する。
粘土の成型にもう一つ影響を与える要素にインターカーレーションがある。粘土のようなアルミノケイ酸塩は、シリカとアルミナの複合体から成るシートが何層にも重なった層構造を持っている。それぞれの間は水素結合や分子間力で緩やかに結合しているが、粘土はその層間にポリペプチド、アミノ酸、アルキルアンモニウムイオンなどの比較的小さい分子(インターカーレーション)を取り込んでいる。これがvan der Waals力に由来する分子間力、水結合の影響等から層間の相互作用を変化させ、結果として粘土の可塑性、粘性に変化を与えるのである。
現在備前焼に使われている土は「ヒヨセ」と呼ばれる木節系の土である。平均的な化学組成はSiO2(ケイ酸分)60-65%、Al2O3(アルミナ分)18-22%、Fe2O3(鉄分)1.5-2.5%,CaO、MgO、K2O、Na2O(アルカリ分)の合計3-4%、灼熱減量8-12%で、耐火度19、典型的なせっ器質粘土である。カオリンに比べケイ酸分がかなり多い。
こんな風に考えれば今日たまたま成型がスムースに行ったのも納得がいく。
この後、実は石見銀山近くで採取したという土を渡された。こちらは成形性がまるっきりダメ。少し力を入れると割れがはいってバラバラになってしまう。ほかの土を加えてなんとか轆轤に乗せ茶碗上のものを轢いたが、厚手のボールみたいになってしまった。