幼児教育と脳   文春新書

澤口俊之

知性はひとつではなく、多数の並列した知性から成り立っている。

言語的知性

絵画的知性

空間的知性

論理数学的知性

音楽的知性

身体運動的知性

社会的知性

感情的知性

このうち特定の分野を伸ばそうとする特定教育には意味がある。しかしイデイオサバンと呼ばれる偏った人間になることも問題である。理想的な幼児教育は自発的な英才教育である。しかしそれだけでは不十分である。

自我とは自分のもつ多重知性を総括してうまく操作し、将来に向けた計画を立てつつ前向きに生きる知性。多重知性の統括者であり、スーパーバイザーのような役割を担っており、もっとも高度な働きを担う。人格、理性、さらには主体性、独創性・創造性などにもこの知性が中心的役割をもつ。前頭葉に存在する。

前頭連合野に存在する知性群は、自我+社会的知性+感情的知性であり、これが人間の人間たるゆえんになる。前頭前知性と称しPQであらわす。

性格が凶暴なものなどに一時期前頭葉を除去するロボトミー手術がおこなわれたことがあるが非常識で今ではおこなわれていない。

うつ病や強迫神経症、注意欠損多動症などはPQの機能障害である。

幼児教育の根幹はPQ教育である。PQは実は遺伝する。しかしPQフレームは幼児期に可塑的にしかもドラステイックに変化する。原因は環境である。オオカミ少年はいつまでたってもPQが変化しない。PQをはぐくむためには「普通の環境」が大切である。「普通の環境」とは父母がいて、叔父がいて、兄弟がいてなど複雑な人間環境のもつ環境である。

PQ教育をおろそかにしてしまったことが教育を荒廃させている。核家族化、少子化、都市化に伴う野原や高原の喪失、父性の希薄化、女性の社会進出の加速、「主婦」の役割の軽視・・・これらが「普通ではない環境」を子供にもたらしている。

これらが「いじめ」や問題行動を生む素地を作っている。いまこそ社会全体として幼児に普通の環境を取り戻す努力をしなければならない。