新潮文庫
或日の大石内蔵之助
大石良雄等6人は見事に討ち入りを果たした後、細川家に御預かりの身となる。世間では討ち入りをたたえる声が大きくなり、敵討ちのまねごとがはやる。皆は口々に討ち入りの偉業をたたえ、参加しなかった者を非難する。しかし正直な良雄は迷いながら、行き着いた成果が思わぬ誤解を招き、またそれに気づかなかった自分に腹立たしい思いを募らせる。
戯作三昧
式亭三馬は風呂場で当てこすりのような彼の近作への批評を立ち聞き、家に戻ると待っていた出版もと和泉屋の親父に筆が遅いの、面白いところがないなど注文をつけられる。その夜、彼は八犬伝を利害でも、愛憎でも、毀誉でもなく、不可思議な喜びだけで書きつづる。
開花の殺人
その医者は子供の頃から甘露寺明子が好きだったが、彼女は本多子爵が好きだった。自分が洋行からもどると、彼女は満村の謀略により、彼と結婚していた。しかし満村は女狂いの上、彼女につらく当たった。医者はついに風邪薬と称し、毒薬を満村に与えて殺す。死後、明子は本多と結婚することに・・・・。悲観した医者は真相を本多に書き送り、自殺する。
枯野抄
俳人松尾芭蕉は大阪花屋で最後の時を迎えていた。居並ぶ弟子達は次々と師匠の唇を潤すが、その思いは決して師匠を傷む気持ちだけではなかった。
開花の良人
「僕は愛(アムール)のない結婚はしたくない。」と結婚した勝美夫人は大変な食わせ物だった。従兄弟と称する怪しげな恋人がいたり、昔の悪いうわさが暴露されたり・・・・。
舞踏会
令嬢明子が鹿鳴館で相手をした仏蘭西の海軍将校とは・・・・。彼は花火をじっと眺めていた。生のような花火を・・・・。
お富の貞操
彰義隊を官軍が襲うと周囲の住民は皆非難した。乞食の新三郎はある商家に忍び込んだが、そこに忘れた猫を探しにその家の若妻お富が戻ってくる。猫を助けたい一心で、お富は新三郎に身体を投げ出すが去ってしまう。それから20年、一新で新三郎は出世した。
一塊の土
夫に死に別れたお住はやがて倅の仁太郎にも死に別れる。 嫁のお民は働き者でお住はいつまでも楽が出来ない。
その上婿を取ろうとしない。苦しい生活をのろうがそのお民がころっとしんでしまった。