半七捕物帳(1)    岡本 綺堂

光文社文庫

半七捕物帖は推理やトリックという面から捕らえると、時代のせいもあろうが、今一歩と言う感じがした。また顎十郎捕物帖のように、あっと言わせる場面もそれほどではない。しかし、江戸末期の世態・風俗を的確に描き出している点は素晴らしい。第1巻は岡っ引き上がりの半七老人が、若い記者相手に昔話を語るというスタイルを決め、19歳の時、石灯籠事件で初手柄をあげたなど、半七自身の話も織り交ぜている。

お文の魂
旗本小幡伊織に縁付いた松村の妹お道が、幼い娘のお春をつれて戻ってきた。「小幡の家には毎晩髪をぐっしょり濡らした幽霊が出る、娘も「ふみが来た、ふみが来た」とうなされる、あの家には戻れない。」と言う。ふみの正体はなんであろうか。半七が調べてみると、草紙の絵が恐ろしかったことも原因らしいが、それだけではなさそう、下谷浄円寺の破戒和尚がお道と何か事情がありそう・・・・。ここで作者は「半七は江戸時代のシャアロック・ホームズであった。」とのべている。

石燈籠
小間物問屋菊村のお菊が清次郎と出かけたが途中でお菊が消えてしまう。2、3日してお菊が戻ったのを見たものがいた。そしてお菊の母のお寅が密室に近い空間の中であいくちで刺されて死ぬ。石燈籠についた女の足跡から半七は女軽業師の犯行と断定、小柳を捕らえる。

勘平の死
和泉屋の若旦那角太郎は素人芝居で勘平演じ切腹してみせるが刀が本物、死んでしまう。角太郎は和泉屋に預けられたもので、継母の犯行!と実母は叫ぶが、角太郎の恋人お冬に惚れた和吉の犯行。半七が店への悪影響を恐れ、酔って暴れてみせるところが人情があふれている。

湯屋の2階
昼から湯屋に通い続ける侍風の二人。預けていた手箱の中には人間と動物の首のみいらとおかしな様子。そのうち伊勢谷に二人組の強盗、湯屋では一方が下女のお吉と逐電。さぞかし怪しいと半七が残った一人を捕らえて問いただすと、実は敵討ちの助っ人、それがさぼっての湯屋通い。とんだ失敗だった。

お化け師匠
義理の娘をいじめ殺した強欲な踊りの師匠、歌女寿が蚊帳の中で死んでいたが首には黒い小さな蛇が・・・。さては娘のたたりかと騒いだが・・・。実は池鯉鮒様のお府だ売りから、道具を盗み出した男が金をねらっての犯行。池鯉鮒様は蛇よけのお札を売っており、そのため、飼い慣らされた蛇を飼っており、それを盗み出したものだった。

半鐘の怪
突然夜中になる半鐘の音、駆けつけるがなにもない。そのほか物干しの赤い着物が動き出すなどおかしなことばかり。いたずら小僧の犯行かと思ったが、実は猿芝居の猿の犯行。猿は八百屋お七があたり役。猿の刑罰は遠島!!

奥女中
きりょうよしのお蝶が突然消えるが数日後には戻ってくる。「縛られ、猿ぐつわをはめられ、どこか知らぬお屋敷につれて行かれたが、そこでは大切にあつかわれた。」との話。しかもそれが2度3度。最後には奥女中風が現れ、200両だすからしばらく預けて欲しい。結局、ある大名の娘が亡くなり、母親が狂乱、是非似ている娘を見たいとの希望だった。

帯取りの池
帯取りの池に浮かぶ真新しい帯。市ヶ谷合羽坂下の長屋におみよの死体。しかしおみよはある侍とできていたが、千次郎との仲が露見したため、後難を恐れて自殺したものだった。死体の処理と帯の投げ捨ては千次郎。千次郎は別の恋人お登久がかくまっていたが発見。

春の雪解
辰伊勢の花魁、誰袖は主人の倅の永太郎に恋し、永太郎が惚れた辻占いのおきんを折檻し、殺してしまう。これを仲働きのお時が知り、情夫でおきんの兄の寅松に相談、榮太郎から金をまきあげる。しかし半七が榮太郎と誰袖の連絡役をやっていた按摩の徳寿に目をつけたことから、寅松が捕まり、誰袖と榮太郎は自殺する。

広重と河うそ
東京になってから減ったものが狐狸に河うそ。弘化2年の頃仲の郷の川ばたで隠居の十右衛門が何者かに追いかけられ、顔に傷を受け、50両とられた。 一時は十右衛門が通った女、お元と結婚する予定だった政吉が疑われるが結局河うその仕業。 源森橋の川下に小判の袋を首に巻いた大きな河うそが死んでいた。

朝顔屋敷
江戸時代、お茶の水の聖堂では旗本御家人の12、3歳の子弟を対象に四書五経の素読吟味が行われた。しかしその中にも大身の子供たちと小身の子供たちの対立があった。 大身の子の杉野大三郎も受験に付き人二人を従えて朝早く出かけたが途中で突然消えてしまう。さては神隠しと大騒ぎになったが、奥方が息子がこの機会に小身の子たちにいじめられるのを恐れて隠したものだった。

猫騒動
芝神明宮近くに住む猫をたくさん飼っていたおまきは七の助という息子と二人暮らし。七の助は魚を売っていたがいつも残して帰ってはおまきばあさんにやっていたようだ。 しかし、猫は長屋の連中がうるさく捨てることに、それでも戻ってくるとなるとついに殺してしまった。そんな折り、おまきが頓死。七の助が殺したものとわかった。しかし殺したときおまきの顔は猫そのものだったとか。

弁天娘
弁天娘のあだ名の、婚期が遅れた山城屋の娘、お此がいた。彼女は奉公に来ていた徳次郎と良い仲だったが、口を腫れさせて「お此さんに殺された。」と言いながら死んでしまった。通夜の夜、兄の徳蔵夫婦が来て山城屋から100両の金を受け取った。その徳蔵が殺されてしまった。徳蔵の妻のお留が犯人で、徳蔵をたきつけて山城屋からせしめた金を、自分で横取りしようとしたもの。徳次郎の死因はお此が縫い物をしている針で障子越しについた為の事故。

山祝いの夜
若侍小森市之助と道楽者の七蔵は三島の宿で喜三郎という商人風の男の関所ぬけを助けるが、 小田原で山祝いを楽しんだ後、彼は裏二階の客二人を刺し殺して逃げてしまう。 市之助は七蔵を手打ちにし、腹を切ると叫ぶが、半七に止められる。