平和の失速(1)          児島 襄

文春文庫

 私の意識の中で、明治と昭和ははっきりした像を持っているけれど、大正時代はなんとなくぼやけている。そこでこの時代を少し勉強してみようとこの本を選んだ。
 明治天皇が崩御し、乃木大将が殉死して一つの時代が終わった。落ち着いてみると不景気であり、元老支配による薩長閥の古い政治形態が目立った。
 世は新しいものの時代である。鉄道が普及し出し、自動車もぼつぼつ出始め、海の向こうの様子も分かるようになってきた。こんな時、我が日本はこのままで良いのか・・・・との思いが第一次大正維新となり、ついに桂内閣を倒した。妥協の結果、政党内閣の衣だけを着た山本内閣ができあがった。
 しかも米国での反日運動を許し、「排日法案」を楽々と通過させ、同胞を見殺しにしてしまった。おさまらぬ日本。おりから中国では辛亥革命で清朝がほろび、その後をえん世凱と孫文が争ったが、前者が勝利を収めた。
 しかしその過程でおきた張勳問題で、世論は政府の軟弱外交をなじった。結局、日本は「対支三条件」を突きつけて強行突破した。

・世間には、内閣の瓦解前から、反元老、反藩閥、反軍部を基調とする「大正維新」「大正新政」を叫ぶ声が、日増しに高まりと広まりを示している。(91p)
・当時の政党はすべて大日本帝国憲法の枠内の存在であり、「民」は「臣民」の民であり、政党変革までめざす「人民」は含まない・・・・。(182p)
・「有権者」すなわち投票資格者は・・・(190p)
・大日本帝国憲法は「欽定憲法」、すなわち天皇が下賜された憲法である。他国に見られる制度議会による産物ではない。・・・憲法を守りその条項に従って「権能を全う」するのが、議員のつとめであり「忠君愛国」の道であるとする。(244p)
・新しい・・・という形容が大正初期を彩っていたように思われる。(368p)
・陸海軍が大臣を出さない限りは内閣は成立せず、成立しても、陸海軍大臣は政党人にはなり得ないから、「政党内閣」は決して実現しないことになるのである。(377p)
・だが、「奴隷の一種」である中国人労働者は「解放」の対象にはならず、移民し始めた日本人も、「米国民」たりうる帰化権からは除外された。(394p)
・えん世凱政権(439p)と13カ国による承認(526p)
・「北清事変」「日露戦争」を通じて得た駐兵権にもとづき・・・・(447p)

r990928