結婚詐欺師          乃南 アサ

幻冬社 ハードカバー

橋口雄一郎こと松川学43歳は、プロの結婚詐欺師である。
ブランド品に身を包み、高級な鬘と眼鏡、着こなしによって、若いすてきな男性に変身し、獲物に優しい言葉と優雅な身のこなしで近ずく。
しかも相手によってそのスタイルまで変える。
いつの間にか、相手に大金をださせ、それを湯水のごとく使って、享楽的生活を楽しみ、また別の獲物に近ずく。
最後は捨て、あるいは結婚という牢獄に閉じこめ、相手がぼろぼろになるまで利用する。
中には廃人同様になったり、自殺を図ったりするものもでる。
そこには良心のかけらもない。
被害にあった一人山崎元子からの訴えで、武蔵野署に捜査本部が設置され、阿久津がが配属される。
調査を進めるうち見覚えのある一人の女性にぶつかった。
江本美和子・・・彼が一度は婚約までした女性である。
橋口の魔手から逃れさせたい、しかし言えば情報が相手にもれ、捜査の妨げになるし、昔から彼女はあまのじゃく、やめろと言えばやる性格だった。
昇進試験準備も手に着かず、酒におぼれる日が続く。
この事件は、おとなしい犯罪の部類にはいるが、被害者の態度が定まらない事が特色だ。
「あの人が私に嘘をつくはずがない。だまされているのではない。」と最後まで主張し、訴えることに2の足を踏む。
証拠固めをがっちり終えて、当局は、ついに橋口を逮捕した。
しかし山崎は、新しい恋人ができたと訴えを取り下げる。
しかし江本が、阿久津の説得によって訴えることを決めると、同調者が現れ、ついに橋口は獄舎につながれる。
橋口が逮捕され、江本が昔の恋人阿久津に
「あなた、大学を卒業したとたんに、もうふけ始めていたわ。もう。守りの人生に入っていた。・・・」
「あの人は、いつも夢を見てたわ。あなた達は、それが、あの人の手口なんだって言うけど、少なくともあの人はその夢を私に信じさせるだけの、エネルギーがあった。」(415P)
が引っかかった女たちの言い分を代表しているように感じた。