高野聖・眉かくしの霊
高野聖・眉かくしの霊 泉 鏡花
岩波文庫
高野聖
泉鏡花の代表作。
北陸敦賀の旅の夜、道連れの高野の僧が、かたってくれた経験談という形を取っている。
若かりし日、僧は、飛騨の深山幽谷の山道を抜けようとしていた。
里で「この道は行くべきではない。前にも遭難した人がいる。」と聞いたが、峠の茶屋でみかけた富山の薬売りが、こちらに向かったと聞き、追いかけるようにしてやってきた。
やがて山中にぽつんと一件家、疲れた僧は、一夜の宿を求める。
そこには美しい女とあほのように見える小人、それに老人。
女は、僧を裏山の滝ちかくの河原に案内し、自分も裸になり、体を洗わせてくれる。
若い旅の僧は、それこそおかしな気になりかける。
しかし仏に仕える身、煩悩を打ち払って戻ると、夜半、羊、牛、馬などが寝所を取り囲む風。
後から考えると彼らは何か訴えているようだった。
翌日、女のとめるのも聞かず、山を降りはじめると、おいついた老人が真実を語ってくれた。
あの女があきた男に、白い息を吹きかけると、人はたちまち牛や馬に変わってしまうのだそうだ。
夕べ寝所に押しかけたのはかえられてしまった連中。
富山の薬売りもその中。
連中はここでこき使われるか、里で売られて夕げの鯉に変わるのがおち・・・・。」
幻想的な雰囲気の中に、強烈な怪異ロマンが感じられる作品になっており、明治中期の作品ながら、今もって魅力が失われていない。巻末の解説に鏡花が中国の怪異話にある「三娘子」話、上田秋成の「青頭巾」などが下敷きになっているとある。
眉かくしの霊
高野聖は、鏡花が若いときの作品であるが、これは晩年の作品。
やはり飛騨の山奥の宿に泊まったとき、夜の湯殿にあらわれた人妻の、近くの桔梗ヶ池に住むらしい幽霊の話。