クレオパトラ(上、下) 宮尾 登美子

朝日新聞社

今まで、クレオパトラの伝記といえる書物は、数え切れないほどたくさん出版されている。
これは女性の立場から、現代の女性の生き方のにも通じる女王の姿を、小説として描こうとしたものだ、ということである。
小説とはいいながら、世界の通説に従っている。
エジプトは、プトレマイオス12世の死後、女性のクリノンことクレオパトラ7世と弟のマグスの共同統治という形を取ったが、やがて内紛に発展し、クレオパトラはシリアに逃げる。
いったんシーザーの仲介で、和議はなったものの、再度分裂、マグスを倒し、エジプトを支配することとなる。
やがて女王とシーザーが愛し合うようになり、一子をもうける。
しかし、シーザーはローマでブルータスの凶刃に倒れ、女王は、エジプトに戻る。
フィリップ高原で暗殺に関わったブルータス、キャシアス連合軍がアントニー、オクタヴィアヌス連合軍に倒され、ローマはこの2者とレピドウスの支配するところとなる。
そして歴史的なアントニーとクレオパトラのタルソスでの面談。
アントニーはクレオパトラの魅力の虜となり、エジプトで暮らすようになる。
ローマではアントニーに対する非難が高まる。
そしてエピルスでのアントニー・クレオパトラ連合軍とアントニーが留守の間に力をつけたオクタヴィアヌス軍の戦いは、海戦に得意な後者の勝利に終わった。
クレオパトラはエジプトに戻るが、オクタヴィアヌス軍に捕らえられ、王位は保証されれるものの、シーザーとの子、アントニーとの子をすべて奪われ、失意の内に毒蛇に自らをかませて死ぬ。行年39歳。

歴史の考証と言う点からは、少し甘く感じられる。
いろいろ詳しく書かれているが、古代ローマないしエジプトに読者がいる、という感触がどうも弱いような気がする。
しかし日本人が外国の古代について、主として日本語で書かれている資料を元に書く、ということは大変な事であったと思う。
同時にやればできるのだという感じも持たせてくれた。

・このころのローマ人口は、市民権を持つものでおよそ千二百万人、奴隷人口は四百万を占めていたといわれるが、ローマしないだけでいえばおよそ百二十万人ほどではなかったろうか。(上331p)
・毒について(下111p)
・世の常の女性のごときあさはかな結婚願望など抱いてはならぬ。結婚など一瞬の陶酔にすぎないのだ、女王は泡沫のような夢を追うよりも、常に国民全体のことを考えねばならぬ・・・・・(下245p)