パラサイト・イヴ

パラサイト・イヴ    瀬名 秀明

角川書店ハードカバー

永島利明は大学の薬学部に勤務する生化学者で、ミトコンドリアの研究で実績をあげていた。
ある日妻の聖美が不可解な交通事故をおこし、なくなってしまったが、腎バンクに届けてあったため、彼女の腎臓は安斉麻利子という14歳の少女に移植された。
一方、利明は妻の突然の死を受け入れることができずひそかに肝細胞を取り出し培養することとした。
ところがEVE1と名づけられたその細胞は次第に特異な性質をあらわしていった。
本来は核物質に制御され、エネルギーを作り出すだけの役割しかなさないはずのミトコンドリアが異常に発達しだした。
一方腎を移植された麻利子は毎夜悪夢に魘されるようになる。
ミトコンドリアは、長い核によって抑圧された歴史から開放されて、支配する立場に立とうと行動しはじめたのだ。
培養室から抜け出したミトコンドリアのおばけが、麻利子の病棟をめざす。
麻利子の体に移植された腎は、それを嬉々として待っている。
そして結合。
ミトコンドリアは、自身の開放をつげ、新しい人類の創世を歌い上げる。
もう手がつけられない。
しかしミトコンドリア内部で雄の要素と雌の要素の激しい戦いが始まった・・・・。

ふんだんに技術用語が用いられており、一見理解しがたく見えるが、読み続けると、迫力と恐怖に我を忘れ、止まらないといった感じの作品。
作者が現役の学者であるだけに、腎摘出および移植場面、肝細胞の培養場面などには非常に迫力がある。
また人間創世の話に戻るという点からは、夢野久作の「ドグラ・マグラ」を思わせるすごさがある。