新潮文庫
羅生門
情景描写の素晴らしい作品と思った。羅生門の下で雨宿りをしていた下人が、人のいる筈のない楼にのぼると、老婆が死んだ娘の髪の毛を抜いていた。「餓死をするから仕方がない。」という老婆の理論におれも同じ事と、下人は老婆の衣服を盗む。
鼻
長い鼻がいやで仕方がない禅智内供は秘術により、鼻を短くすることに成功するが、今度は昔が良かったように思える。
芋粥
芋粥を腹一杯食うことを夢にしていた五位はある人の計らいで思い切り喰う機会をえた。しかし実際その場に立つと急に喰う気力が減退して・・・・。
袈裟と盛遠
昔征服できなかった女を単に欲望だけで征服した男、自分の魅力の衰えを覚られまいと意地だけで関係した女、女は男に亭主を殺してくれと頼む。そして亭主になりすまして寝屋に向かう。
・しかしそう云える程、己は袈裟を愛しているのだろうか。・・・・・己の袈裟に対する相成るものも、実はこの欲望を美しくした、感傷的な心持ちにすぎなかった。(73P)
邪宗門
都に突如として表れた魔力を使う魔利信之法師の力と恐怖を描く。未完。
好色
好色では負けぬと絶対に自信を持つ平中。しかし侍従だけはなんとしてもなびかぬ。あきらめようとその糞を入れたらしい箱を盗み出すが・・・・。
俊寛
俊寛が実際鬼界が島でどんなであったかを後に訪ねて行ったと言われる有王の独白という形で記述する。
・何よりもまず笑うことを学べ。(190P)
・天下の役人は役人がいぬと、天下が滅ぶように思っているが、それは役人のうぬぼれだけじゃ。(192P)
・康頼は何でも願さえかければ、天神地神諸仏菩薩、悉くあの男の言うなり次第に、利益をたれると思うておる。・・・・神仏も商人(195p)
・自土即浄土と観じさえすれば、大歓喜の笑い声も、火山から炎の迸るように、自然と湧いてこなければならぬ。(204P)