イタリア遺聞         塩野 七生

新潮社 ハードカバー

 この夏休み、ヴェニスとミラノに行く予定。それで読むことにした。なまじの観光ガイドよりずっと役に立つ。イタリア人医師と結婚し、フィレンツエに住み、中世特にヴェニスやトルコについての著述の多い著者のエッセイ集。それぞれにお面白く、他の著作とも関連しているが、私的な話しも多く、それを通して強気でちょっと見栄っ張りな作者の個性があらわれているところも興味を引く。一言コメント・・・

3 ヴェネツイアのホテル
共和国の崩壊とともに、運河沿いの館が売りに出され、高級ホテルになった物が多いそうだ。ジョルジュサンドの泊まったダニエリが最高級とか。
4 ある遺言書
案外動産が多いことと、ヴェネツイアでは国家の観念が13世紀にできていたという話にびっくり。「ヴェニスの商人」の例でで財産家は全財産を一つの船に投資するようなリスクは侵さなかったはずだよいう記述も興味深い。
6 ハレムのフランス女
最後にキリスト教徒として死んだというところが面白い。
9 大使とコーヒー
16世紀にトルコから伝わったコーヒーはたちまち人気商品になり、1683年初めてのコーヒー店が出現。1759年には206もあったという。「フロリアン」「クワドリ」などは今でも残る有名な店らしい。
10 法の外の話
羊を飼うことと同じにされては、誘拐もはやるわけだ。
11 葡萄酒の国
昔はイタリアが唯一の葡萄酒の国であったこと、もっと濃くオンザロックや水割りが行けるという話が興味深かった。
12 宝石と宝飾
その違いとともに、作者の宝石に対する考え方が興味を引く。
13 ある出版人の話
1450年前後グーテンベルヒの印刷術発明を半世紀の後、出版という商売に結び付けアルド社をおこしたアルド・アヌッツイオの話。商売がうまかったらしい。
18 聖地巡礼
イエルサレムが破壊されたあと、4世紀コンスタンテイヌス帝の時に復活され、聖地として整備された話が面白い。旧教も新教もごちゃ混ぜにした巡礼の話が面白い。
20 シャイロックの同胞たち
ゲットーがヴェネツイアに最初にでき、ユダヤ人がやがてスペイン、イタリア、トルコの間に挟まって嫌われるようになってゆく様子が興味深い。
23 奴隷から皇后になった話
例のスレイマン大帝の生涯の友イブラヒムを倒し、トルコ史上初めて皇帝と結婚したロシア女ロッセリーニの話。「聖マルコ殺人事件」にくわしい。
24 一枚の金貨
ヴェネツイアのドユカートは本物の金を使っていた。
25 ベンジャミン・フランクリンの手紙
18世紀末にアメリカとヴェニスが国交を結ぼうとしていた・・・。
26 国破れて・・・
ヴェネツイアは1797年ナポレオンによって破れ、滅亡した。多くの美術品が持ち去られ、1815年に大半が返還されたが「カナの饗宴」などはいまなおルーブル美術館にある。
30 レオナルド・我が愛
作者の伝記に対する考え方「その人物をモノにするために書く」という視点からすると、非常に知識のはばの広いレオポルドは無理だとしている。