竜馬が行く(8)          司馬 遼太郎

文芸春秋

 結局、土佐は藩主容堂の動きがつかめぬため、竜馬は中岡慎太郎を中心として陸援隊を作らせる。薩摩では大久保と西郷が軍を京に登らせる準備をする。長州は桂を中心に軍備を増強し、京に登る体制を整える。
 英国公使バークスから海援隊員が長崎で英国人を斬った、との抗議。この処理のために大政奉還は2ヶ月おくれることになった。
 竜馬は、後藤象二郎と幕府方重臣永井尚志に大政奉還を働きかける、一方、西郷等の武力行動を控えさせる。後藤は、あわせて新鮮組隊長近藤勇とも対談。幕府方としての対応が永井、板倉を中心に進められる。
 慶応3年10月13日、京二条城で大広間で、15代将軍徳川慶喜は大政を奉還することを表明した。ここに幕府三百年の幕をとじるが、時勢はこのあと坂道をころがるように、戊辰戦争などの混乱を経て次第に明治に移行してゆく。
 竜馬は、三条実美を中心とする明治政体の原案をしめす。竜馬の名はなく、薩摩、長州が中心であった。参議に松平春獄のもとに幽閉されていた三岡八郎を担ぎ出すが、彼が明治政府財務の基礎を築くことになる。しかし竜馬は、成功の果実を楽しむことなく、中岡慎太郎と共に、近江路で刺客の手にかかって一生を終える。

 最期に「竜馬がゆく」全体の感想と言われても、書きようもないが、明治政府成立史を初心者が理解するために、非常に役に立つ書物と思う。時に竜馬の活躍が鞍馬天狗のようにすら感じられる書きぶりが、一部「英雄主義」との批判を浴びるのかも知れない。しかし、精細な事実調査に基づき、しかも個人史としても面白く書かれている点は素晴らしく、読者をあきさせない。

・ひとつの概念をしゃべるとき、その内容か表現に独創性がなければ男子は沈黙しているべきだと竜馬は思っている(46p)
・14代将軍家茂にいたって・・・・上方に常駐同然のかたちとなり、ついに大阪城で病死した。(133p)
・我死するときは命を天に返し、高き官にのぼると思い定めて死をおそるるなかれ。・・・世に生をうるは、事をなすにあり。(345p)
・藩使には、監察が同行する。・・・・監察同行は三百年の幕藩体制のしきたりといっていい。(350p)
・三岡八郎・・・兌換紙幣
返還を約束したご用金調達、太政官札・・・・東征軍資金(358p)

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