文春文庫
薩摩に戻った西郷は「やがて天下は自分を必要とするだろう。それまで気長に待つ。しかし天下が大久保を必要として自分を必要としなければこのままくちるのみ。」とのんびりした生活を送り始める。
江藤新平が暴発した。薩摩が同時にたつことを期待して、佐賀藩士たちの騒ぎにのってたったのである。薩摩士族がつられて立ち上がることをおそれた大久保は、廟議で統帥権を取り付け、諸道より兵をすすめ、粉砕する。
江藤は脱出し、西郷にも会うが、結局四国で捕らえられ、佐賀できょうしゅに処されてしまった。国事犯に対して、新法典にもないこの刑を課したのは、異常であったが、同時に明治政権を強いものにした。
薩摩では私学校が開設されたが、それは薩摩王国の行政機関のようでもあった。ところでこれに先だって台湾で、日本人船員が数十人殺されると言う事件が起きた。廈門米国総領事リ・ゼンドル、米国公使デ・ロング等は、功名心にはやったのか、副島に対し日本が台湾を占領することを勧める。
最初はばかばかしいと見捨てられていた意見だったが、不平士卒慰撫(皆、喧嘩したがっているのだ。外征デエネルギーを衰えさせるのがいい)の目的で、大久保・西郷従道の間で簡単に決められてしまった。兵卒を運ぶ船まで、アメリカから借りなければならない状況での出兵だったが、一応成功。しかし英国、中国、いいだしもとながら、公使が変わった米国からまで非難をあびせ、政府は苦境にたった。
・旅券の発行(69p)
・歴史は衆の沸騰によって揺らぐ。衆の沸騰と言うことについては、これを煽動する立場もあり、これに担がれて共に暴走して行く立場もある。(95p)
・デ・ロングの陳弁・・・我が合衆国の成り立ちとして、他国の領土を欲しない。しかし我が国と親善関係にある國が、他国の土地を所有したり、その所有地を増やしたりすることを我が国は好むのです。(221p)
・兄が征韓をすると騒いだかと思うと弟が征台をするという。国家を玩具のように思っているようだ。(陸軍少将鳥尾小矢弥太 240p)
・元々権力というのは、権力の維持のために、国家の名を借りて行う私的行為が多い。(247p)
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