翔ぶが如く(6)          司馬 遼太郎

文春文庫

 浅草本願寺で第1回の地方間会議が開かれる。きたるべき三権分立制度への第一歩である。しかし鹿児島県令大山は馬鹿にしている。鹿児島は依然として独立国のようだ。不平士族たちの間に西郷の反乱を期待する向きが多い。大久保は薩摩に戻り、西郷と結託するおそれのある島津久光をどうにか呼び戻す。
 大警視川路は密偵制度を発足させ、不穏分子の動きを徹底的にマークする。不平士族の動きはほかにもあった。参議前原一誠は萩の田舎に戻った。彼には反乱を起こす能力などなかったが、まわりの志士たちの動きは危険だった。
川路のはなった密偵に、前原は反乱の意志があることを吹いてしまう。
 熊本では林桜園の影響を受けた神風蓮が、封建時代にもどせとばかり、太田黒伴雄を中心に農民兵主体の熊本鎮台をおそう。一時成功するが、飛び道具を持たなかったため簡単に鎮圧されてしまう。

・維新政府は、極端な復古的性格があったため、奈良朝大宝令なる官制を復活し、行政機関を「太政官」とし、最高位の大臣を太政大臣、それに継ぐ大臣を右大臣とし・・・左大臣は廃官になっていた。・・・島津久光を起用するに当たって・・・復活した。(44P)
・島津久光は、この明治初期国家では、よほど奇妙な存在と言っていい。・・・・国家から彼ほど優遇された人物はいなかった。・・・・途方もない危険人物であるか、とびきりの政治的愚物であった。(46P)
・この時代、廃藩置県このかたそうだが、旧藩主はすべて東京に住まわせられていた。・・・太政官の人質といった体であった。(112P)
・維新で物事が一変せざるを得なかったとき、太政官派の連中が悩んだのは、国家とは何かと言うことであった。(147P)
・ベルツ・・・日本はほんのこの間まで、ヨーロッパの中世騎士時代だったのが、「五百年たっぷりの期間を乗り越えて、十九世紀の全成果を即座に、しかも一時に我がものにしようとしている。」・・・「これは途方もなく大きい文化の「革命」です。」(208P)
・維新は士族だけでなく「庶人」と呼ばれる農商階級にも多くの不満をもたらしたが、その中でもっとも大きい不満は徴兵令であった。(298P)

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