ローマ人の物語 ]X「ローマ世界の終焉」 塩野七生

新潮社

皇帝テオドシウスは、半蛮族のステイリコを評価し、養女セレーナを与えて、一族に組み入れた。死に際して、息子二人の後見人に指名した。ステイリコは、2度にわたって西ゴート族を下すが、皇宮は、安全第一と西ゴート族の長アラリックを「軍司令官」に任命してしまう。北アフリカは、イタリアへの小麦の輸出をストップし、独立を狙う。ガリアも蛮族たちが独立して行った。ローマでは農民は土地を失い、農奴化する一方、キリスト教聖職者など生産者しない人々が増加する一方、人々の公共心は衰退して行った。
ステイリコは、東ゴート族の侵入をフィエゾレの戦いで退けたものの、408年、皇帝ホノリウスによって処刑される。410年、アラリック率いる西ゴート族がローマ市内に侵入。(ローマ劫掠)掠奪した皇帝の妹ガッラ・プラチデイアを息子のアタウルフと結婚させる。423年、皇帝ホノリウス死後、このガッラ・プラチデイアと将軍アエテイウスが支配するようになる。しかしカルタゴではヴァンダル族が独立、講和はなったものの帝国は完全に海外領土を失う。

「不幸のすべてはフン族がまいた。」・・・・多くの蛮族の動きは、フン族が動き出して玉突きのように動いたものであった。蛮族中の蛮族、フン族には目的なく、家を持つことに関心なく、法律なく、家族の守り神もなく、明日の食事すら確保する考えがない。彼らはアッテイラを得てますます戦闘的に成った。451年、アエテイウスは、西ゴート族と共闘してシャンパーニュの野「カンピカタラウニッチの戦い」でこれを下した。敗れたアッテイラは、その後北イタリアに入って各都市を荒らしまわったが、454年に他界、フン族は霧散してゆく。

同じ年、ローマを訪れたアエテイウスは、ヴァレンテイアヌス3世に殺される。455年ゲンセリック率いるヴァンダル族が、再びローマ城壁の前に姿を現した。レオ司教の仲介の元、族は比較的平和裏にローマに入ったが、金貨、宝飾品に限らずすべてを持ち去った。その後ラヴェンナの皇宮役人たちはアヴィトウス、マヨリネスなど皇帝を立てるが、いずれも蛮族の反対に会うなどするが長続きしない。
少年皇帝ロムルス・アウグストスを最後にローマ帝国は滅び、ローマには蛮族の一匹狼オドアケルが入城、ローマ帝国の対外戦略を「ローマ人を支配する道具」として利用して支配し始める。この間にローマ帝国の一部であったブリタニアは、ケルト系のブリタニア人が追い出され、ゲルマン系のサクソン族とアングロ族が支配するようになる。ガリアは、征服したフランク族は異教徒であったが、カトリックに改宗し、ガリア存在のローマ人と上手に共生するようになった。ヒスパニアは、アリウス派キリスト教徒の西ゴート族が居ついたが、共生していった。北アフリカだけは、例外でアリウス派のヴァンダル族に加え、虐げられていたドナートウス派のキリスト教徒が支配するようになったから、カトリック教徒が大量の難民となり、社会は機能しなくなり、生産性も大いに低下した。イタリアには、オドアケルによる「パクス・バルバリカ」(蛮族による平和)が訪れた。三分の一政策によって、蛮族は財産を与えられ、軍事を担当、既存階級はその勢力を温存した。

17年に及ぶオドアケルの支配の後、東ゴート族の長にして、東ローマ帝国で「貴族」にもなったテオドリックが取って代わった。その支配は493年に始まり、526年まで、実に33年にわたることに成る。カシオドロスという忠臣が、調整役を果たした。しかしテオドリックの死とともに、東ローマ帝国の陰が忍び寄る。
カトリック教徒のユステイニアヌス大帝は、ハギア・ソフイア寺院の建立、ローマ法大全の編纂、旧西ローマ帝国領の再復を行ったことで、後世に知られる。コンスタンテイノープルで、聖職者は、この彼に説くのである。「イタリアのカトリック教徒を異端(アタナシウス派・・・ここではイタリアを支配する東ゴート族)の支配から解き放つのは、あなたに課せられた使命です。」皇帝の命を受けて、533年、将軍ベリサリウスは、まず北アフリカヴァンダル王国打倒を目指して、15000の兵とともにコンスタンテイノープルを出航、100年にわたって続いた同国を滅ぼす。ただ北アフリカについて言えば、その後内政は、派遣されてきた宦官等に負かされたため、同地区の状況が変わったわけではなかった。
535年秋には、イタリア侵攻を命ぜられる。この戦いについてはプロコビウスの「ゴート戦記」に詳しい。536年にローマを無事征服したものの、東ゴートがあきらめず、反撃したため、その後将軍テテイラと長い戦いが始まる。最後に552年東ローマ帝国は、将軍ナルセスを派遣して勝利するが、その間にイタリアは荒れにあれてしまった。そしてさらに追い討ちをかけてナルセスによる圧政。これらは565年ユステイニアヌス大帝、568年のナルセスの死まで続く。そして次に押し寄せたのはナルセスが利用したロンゴバルト族であったが、もはやイタリアはイタリアでなくなっていた。

(091002)