98/12/2

私のパソコン修理体験談    阿笠 湖南

一月以上前の夜、父親が青い顔をしてやってきた。
「ウインドウズが立ち上がらなくなった。どうしよう。」
父の使っているパソコンは、私の物と同じ。A社製モデルX。
早速、母屋に出かけて行っていじってみるが、何ともならない。バイオスなどを見ているうちになんと「HDDがありません。」などと出てくる。
インフォメーションセンターに連絡を取ると
「それはどうしようもありません。修理工場に出して下さい。」
そこで苦労して梱包して送ると、十日くらいたって
「受け取りました。」
「HDDを交換しなければなりません。一切のデータが失われますがそれでよろしいでしょうか。」
そこで「データは大事なものだ。原因は何か。」と問い合わせたところ
「工場に問い合わせたが、分かりません。」
ここで私は第一の疑問にぶつかった。
ある日、突然ハードデイスクのデータが使えなくなる可能性があるとするなら、我々はどうしたら良いのか。フロッピーのデータもある期間過ぎるとなくなると言っているのだから、これはパソコンを二台持てと言うことなのだろうか。
次に送られてきたファックスには「修理交換した部品は、一切お返ししません。」とある。
「これはどうしてか。」と聞いたところ、「修理交換するのだから部品の値段を安く設定してある。お宅の場合、修理代は二万円強になっているが、返せと言うなら新品購入扱いになるから十一万円だ。それでも良いか。」
もちろん、そんな余分な金を払う気はないから、安い方でやってくれと言うのだけれど、これはまるで恫喝ではないか、という気がした。
洗濯機のモーターやステレオのコンデンサーを交換した場合、交換部品は確かおいて行くか、あるいは客が処置に困るであろうから持っていってくれる、という話ではなかったろうか。
それで「お返ししません。」の裏側を考えてみた。
まず悪く勘ぐると、壊れかかったHDDからデータを回収するのは難しいけれど、出来るんじゃないかと言う気がする。
なぜなら商売に使っているパソコンに、こんな現象がおきたらどうするのだろう。客先データがある日突然全部なくなって、データは回収できません、なんて言うつもりなのだろうか。
この説を延長すると、故障らしいものが見つかった、面倒くさいから交換してしまえ、修理部品を返すと、もしよその修理屋に持ち込まれてなおったとなると面倒なことになる、そんな風に考えたのだろうか。
あるいはまさかそんなことはないと思うけれど、回収した部品を手直しして東南アジアにでも売り込もうと言うのだろうか。
最後の疑問は、修理工場の言い方だ。
「著作権の問題があり、ソフトウエアのインストールは出来ません。フォーマットした状態でお返ししますから、お客様の方でインストールして下さい。」
これは制度上そうなるのかも知れないけれど、通常の商品の感覚から行くとおかしな話だ。
私が買った商品には、ウインドウズをはじめ沢山のソフトが入っていた。控えのCDは暮れたけれども、商品の最初の状態は、それらはインストール済みだった。普通商品の修理というのは、買ったときの状態、少しおちても使える状態にして返すのが常識だろう。
たとえば湯沸かし器があって、これが使えなくなる。工場で「ノズル等は新品と交換しました。ソフトウエアは入っていません。お客様で入れて下さい。」
こんなことを言ったら、ふんぱんもの間違い無しだ。
そんなごたごたがあって、一ヶ月たってようやくパソコンが返ってきた。もちろん、大正元年生まれの父親の機嫌がいいわけがない。
「もうパソコンなんか忘れちゃったよ。何?まだ、インストールしなきゃ、動かないって言うのか。」
今度はインフォメーションセンターとやりとり。
3.1インストールまでもいろいろあった。最初、私と父のパソコンが全く同じモデルだったために、私のメンテナンスデイスケットを使った。ところがこれが間違いの原因だったのだ。「同じモデルでも、メンテナンスデイスケットが違うことがある」
間違えた我々が悪いのかも知れないが、随分使いにくいパソコンだ、と思った。
さらに、それでも順序通りやってうまく行かなかった。
今度はFDISKをかけていないかも知らない、と言うのだ。それでやっとインストール出来たのだが、一体修理工場とインフォメーションセンターの連絡はどうなっているのだろうか。おかげで、土曜日の半日以上を取られてしまった。
日曜日に、やっと私は、父のパソコンに95を乗せた。これからプリンター接続、インターネット接続、デイジカメ接続、増設HDD接続、データのCからDへの移し替え・・・・。パソコンは素人でも使える、家電屋でもパソコンを売れ、なんてバカを言っているのはどこのどいつだ!

最後に、A社のメンテナンス体制の問題点を、少々きつく書いたかもしれない。私は、だからと言って、他のパソコンメーカーのそれより、A社が劣っているとは思わない。電話の受付体制などなかなかしっかりしていると思う。しかし、パソコンという商品の持つ特殊性とはいえ、通常のものと違いすぎるような気がする。