1 清水の舞台から飛び降りる
「パソコンは購入すれば誰でも今すぐ使えます。」という様な広告を見かけるけれど大嘘だ。テレビや電子レンジやトースターみたいには絶対に行かない。素人は指導してくれる人が必要である。私は、大昔シャープMZというパソコンを買って以来、家庭や職場で時代と共に用途を換え、機種をかえ、パソコン楽しんでいるけれども、その都度指導してくれる人を捜してきた。今は同じ会社にいる先輩のHさんである。そのHさんが「パソコンを作るときはいつでもお手伝いしますよ。」と言ってくれている。友人のS君などが「パソコンを自分で作った!」などと自慢げに話している。
現在のパソコンは、3年くらい前に買った富士通のデスクパワー。CPUはAMD100MHZ、HDDは560MB、RAMが8MBだった。インターネットを始めるととてもこれでは足りないからHDDは外付けの2GBを用意し、RAMも24MBにした。しかしいかんせんCPUが遅い。従来のソフトで使うなら問題ないが、最近のWINDOWS98やEXPLORER4.0以上を使うとなるともういけない。
私は後2年ほどで会社を定年になるし、Hさんも何時職場を変わるか分からない。パソコンを製作なら、今取り組まないと一生やるチャンスはない、と考え、だんだんその気になってきた。
まず様子が分からないから市販本を買ってくる。インプレスという会社の「できる自作パソコン」という本で、製作過程が一々写真入りで説明してある。本に紹介してある秋葉原のパソコンショップのホームページを開いてみる。パーツ単位でも売っているが、どうやらキットでも売っているらしい。
ゴールデンウイークあけに秋葉原に行き、ショップを捜すと、中央通り東京三菱銀行近くにDOS/Vパラダイスというのがあった。1階はパーツ単位。マザーボードだけでもこんなに沢山あるのかとびっくり。2階に上がると、3台ばかり組上がったタワーが並んでいる。随分安いな、と思いながらカタログだけもらってかえる。
Hさんに相談すると「この一番安い奴でいいですよ。KM6で300MBでしょ。私が使っているのとほぼ同じですよ。このほかにDISPLAYがいりますね。あれは三菱電機かイイヤマの物がいいですよ。大きさは17インチは無いとね。SCSIボードも必要なら買う必要がありますね。」
再度DOS/Vパラダイスに行く。「これ、欲しいんですけど、自分で組み立てられますかねえ。」「ええ、でも私どもは組み立ててお売りしてます。」「でもキットで買えば安いんでしょう。」「いいえ、同じです。組立はサービスですから。」なんと製作意欲を消失させる言葉!サービスですから、だって。
でも、まあ、遊ばせてもらうと思えばいいか。「物好きな・・・。」という顔のお兄さんに「キットで下さい。組み立てて見たいんです。」。Hさんの薦めていた一番安いキットとWINDOWS98とイイヤマの17インチデイスプレイを預金を下ろしてきて、えいやっと買ってしまった。
2 自作するなんて馬鹿みたい
顛末を女友達に話したら「完成品もキットも値段は同じなんでしょう。キットを買うなんて馬鹿みたい。そんな無駄な労働はしないものよ。」うーん、出来てもともと、出来なきゃ馬鹿みたいか、と苦笑。1週間くらい経って、注文したものが届いた。部品はそろっているか、どうかを確認。しかし随分部品点数というのは、少ないんだな。
マザーボードをおそるおそる取り出す。まずジャンパーピン。カタログは300MHZになっているが、実際には350MHZが入っている。調べて見ると、そのせいで1本だけ変更しなければならない。「ピンは手で取り外せばいいんですよ。」とHさんは言っていたけど随分小さいなあ。楊枝をつかってはじき出し、やっと変更した。人間の指は使いにくい物だ、アイアイという猿ににた動物は片方の手の爪がごーんとのびていて、それで木の中にいる虫をはじき出して食うそうだが、うらやましい。
次はCPUのセッテイング。K2はSocket7タイプである。「角が欠けていますからね。それにそってさせばいいんですよ。力、いれちゃいけませんよ。ピンはおれやすく、おれたらパーですよ。」とHさんから脅かされているから、どうしたって緊張する。慎重にやったところ、ファンの重みで押すまでもなくすとんとはまってしまった。
メモリーは64MBの一本もの。これは、今のパソコンで増設した経験があるから分かっている。上方下位でぐいと押し込むとピッタリはまった。(Hな表現だなあ!)左右の留め金もばっちり。
金属疲労を使ってバックパネルをマザーボードにあう物に交換。ケースに六角ねじをセットして、その上にボードをそっとのせる。インチねじらしい物を選んで、次々に絞め込んで行くのだけれど、6つのうち2つが穴があわない。Hさんは「やすりで削って穴を広げてあわせばいい。」と言っていたけれど、まあ、固定されているから良いとするか。
本体を横にし、電源を、マザーボードに上下方向に注意しながら押し込む。困ったのはファンの電源。調べてみるとケースの電源部分から3組コードの束が出ていた。受け口はみな同じ格好をしている。どれだっていいんだろう、と適当な1本とつなげる。
パネルのスイッチ類接続。SLEEP、HDDLEDと書いた物の行き先がない!ま、信号類だから、大勢に影響はないか、とタカをくくる。
ビデオカード取り付け。これがなきゃ、絵が映らないと言うんだから大変。デイスプレイコネクタがどこに来るか、考えて背面パネルをはずし、切りかきを確認しながらAGPスロットに押し込む。「できる自作パソコン」ではここまでが前半。お茶を一杯!
いよいよDISPLAYを取り出す。おや、画面がフラットだ。我が家のテレビと違うなあ、などと考えながら、パソコン本体とつなげ、双方に電源を入れる。パソコン本体側の電源は三口だったから、変換アダプターを300円足らずで買ってきて、それを介して電源と接続した。セット完了。
おそるおそる電源をつなぐ。煙はでないか、冷却ファンは回っているか、異常はないか、とチェック。うん、ビープ音も出たし、それらしい表示もあらわれた、煙も出ていないと一安心。
次に、ドライブベイのカバーをはずして、フロッピードライブを取り付ける。とにかくやってみたら上下逆だったり、出過ぎていたりで二度三度くり返した。ケーブル接続はひねってある方をフロッピーデイスクに、反対側をマザーボードにつける。
6.2GBのハードデイスクドライブとCDROMドライブの取り付けは、フロッピーデイスク以上に神経を使う。IDEケーブルが1本物で、下手な付け方をすると、これらふたつと、マザーボードを物理的につなげることが出来なくなってしまうのだ。ただ、ここは2本ケーブルを使っても良いのだそうだ。またCDROMドライブのジャンパーピンがSLAVEになっていることを確認する必要がある。それぞれに電源を接続。
サウンドカードも、ビデオカードと同じ要領で取り付けた。接続先の分からなかったいくつかのピンも、Hさんに教えてもらって接続。どうやら形らしくなってきた。キーボード、マウスも接続し、もう一度電源を入れる。画面が一度ぶるぶるっとふるえて心配させたが、期待通りマシンの仕様を映し出している。
WINDOWS98のインストール。起動デイスクを別のパソコンでDISKCOPY。複製を使ってスタート。やがて指示に従ってCDROMを入れ、インストール開始。30分近くかかったが問題はなかった。続いてWORD,EXCELなどいくつかのプログラムがあっけないくらい早くインストールされていった。
ところが、どうもDISPLAYがおかしい。スクリーンセーバーの3Dフラワーボックスの模様が随分荒い。コントロールパネルにある画面をチェックしてみると16色モードに成っている。挙げ句の果てが
「デイスプレイ設定に問題があります。アダプタの種類が正しくないか、または現在の設定はこのハードウエアでは動作しません」
ひょっとしてDISPLAYが不良品だったか、とまで悩んだが、DOS/Vパラダイスにもってゆくとあっさり解決した。「マザーボードに付属しているCD-ROMがあるでしょう。それに入っているIntel740
2xAGP for Win9xなるプログラムをインストールしなければ、パソコンは動かないんですよ。」そんなことはマニュアルには書いて無いじゃないか、と怒っても仕方ない。インストールしてやっと3Dフラワーボックスをきれいにすることが出来た。
3 パソコンお宅の非能率的悦楽
いつの間にか梅雨。雨が多いようだ。水不足は解消されようが憂鬱な日がつづく。新聞には10万円パソコンの広告。完成品購入の方がずっと安い?
いよいよ古いパソコンをはずして、新しいパソコンをセットし、インターネット接続。これでうまく行くと思ったら、苦難の始まりだった。
私はプロバイダーにべっこうあめを使っており、INS回線を使って64000kbsでつないでいる。ターミナルはサン電子のSUNTACTS128JX2/DZを用いている。従来の富士通デスクパワーには、RS232CケーブルでCOM2ポートに、モジュラーケーブルでLINE側につないでいた。ところがこれにはES230という変換器がついている。うたい文句によると、ターミナルと変換器をモジュラーケーブルで結び、その後RS232Cケーブルでパソコンと結べば電話とパソコンが離れていても便利、とあった。そこで従来のケーブルをつなぎ替えてCOMポートに接続したところ、おかしくなった。
ターミナルからの信号が入らないし、WINDOWS98の画面が出た後、文字化け画面がでてハングしてしまう。あわてて電源を切って入れ直す操作を2、3回くり返すうちに説明の文字は黄色くなりSAFEMODEになってしまった。あわててSUNTACに電話するとCOMポートを付け替えて見て下さい、などいろいろやらされた。やっているうちに、文字化けのあとENTERキーを3度くらいおすと正常画面が出ることは分かった。しかし、相変わらずインターネット接続は出来ない。
電話口の係の女性は「COMポートが壊れているのかも知れません。いづれにしろ今までお使いいただいていたのですから、こちらの責任ではありません。パソコンショップに持っていって相談したら・・・。」とつれない。
COMポートが壊れていたりしたら大変だ。ショップに持ち込んでもどのくらい時間がかかるか想像がつかない。メールなどは毎日入ってくるため、パソコンは使えません、は困る。いったんセットしたパソコンをはずし、古いパソコンをもう一度セット。
さて、トラブル対策。Hさんに相談するが決め手が見つからない。ところが2度目に相談に行ったかえり、ふとHさんが言った。「ターミナルからパソコンへの接続どうなっていますか?」説明すると「ESPターミナルと言うのが良く分かりませんね。モジュラーケーブルはどんな奴です。あ、そりゃ、アナログデータしか送れないんです。デイジタル信号がESPターミナルに行かないんですよ。」あわててSUNTACのマニュアルを見ると「モジュラーケーブルは6極4芯のものを使うこと。6極2芯のものは使えません。」さらにHさんの説明で、デスクパワーの場合、RS232Cケーブルでデイジタルデータ、モジュラーケーブルでアナログデータを転送していたと得心。
しかし文字化け画面は解消せず、何度も妙な時にいりきりしたおかげで最後に以下の様な表示が出るようになってしまった。
「次のダイナミックライブラリを読み込めません。msnp32.dll 指定されたファイルが見つかりません。次のうちいくつかまたはすべての機能を利用できません。Microsoft Network」
Hさんの助言でconfig.sysやautoexec.batをいじるがうまく行かない。scandisk、scanreg、システムファイルチェッカーなどを動作させるがそれでも解消しない。そこでとうとうWINDOWS98を再インストールする事にした。再インストールした場合、作成したファイルは消滅するものの、WINDOWS98、アプリケーションソフトは購入直後の状態になるだけだから問題ない。
もう一度古いパソコンをはずして新しいパソコンをセットする。今度はターミナルからのRS232Cケーブルを直接COMポートにぶちこんだ。エクスプローラーのセットは会社でべっこうあめのマニュアルをダウンロードしておいたからそれに従ってやった。今度は割に簡単にインターネットに接続することが出来た。
ところがまだ終わらない。古いパソコンのデータをどう新しいパソコンに取り込むかという問題だ。
(1)データ類=古いパソコンのデータは大体外づけHDDに蓄えられていたから、新しくつけたSCSIを介して取り出した。
(2)アウトルック・エクスプレスのアドレス帳が「Address Book」フォルダーの中におかれているので、古いものと差し替える。
(3)アウトルック・エクスプレスの送信・受信トレイは「Outlook Express」フォルダー内にあるので、古いものと差し替える。
(4)お気に入りは「C:\WINDOWS\Favorites」にあるので、古いものと差し替える。
(5)年賀状作成に筆王を使っていた。筆王は再インストールしたが、住所録の載っているファイル は古いものと差し替える。
この辺は結構うるさいが、あせらずに少しづつ完成させて行った。
暑い、外気温は34度。もう7月末である。どうにか動くようになった。楽しみながらパソコンを組み立てた事は事実だ。部品が揃っているかどうか確認するのに1日、マザーボードのパッケージを取り出し、透明な袋の上からあのジャンパーピンを差し替えれば良いのだ、と確認するのに1日、ピン交換に一日という具合。高いお金をかけたんだからじっくり楽しもうと言う寸法だった。しかし、3ヶ月だぜ。ドライバー1本で3時間なんて誰が言っているんだ。
でも完成すれば強気!「パソコンを自分で作った!」などと言っているが、部品をつないだだけじゃないか、道理で「組立はサービスですから!」なんて言うわけだ、ベンチャービジネスが自分で部品を買い集めてきて作る訳だ、大メーカーと言っても、やっていることはこうやって部品を寄せ集めて作るだけなの?
そして私は、涼しい顔して、人に言うかも知れない。「パソコンを組み立てました。訳はないですよ。あなたもどうです?」
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