第59号 2004年11月 骨粗鬆症 病名
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の「粗」は「あらい」という意味、「鬆」は「す」とも読みます。骨粗鬆症とは、骨の組織が粗くなり、すが入ったようにスカスカになった状態です。 ちなみに、英語では骨粗鬆症のことをosteoporosisといいます。これはosteo「骨」とporous「多孔性(あなの多い)」という言葉の合成語です。 骨がスカスカになり骨の密度が低下すれば、弱く折れやすくなる、つまり骨折しやすくなります。2002年の全国調査によれば、大腿骨頚部骨折の推定発生数は117,900人で、5年前の92,400人を大きく上回っています。しかも骨全体が弱くなって折れてしまうのですから、折れてしまった骨がくっつき元に戻るには時間もかかるようになってしまいます。この骨折が原因で寝たきりになってしまうこともあるのです。 原因 骨は体を支える硬いものというイメージがあり、成長期を過ぎると変化しないように思えますが、一部では吸収(骨吸収)、一部ではカルシウムが沈着(骨形成)して、年をとっても常に新しく作り変えられています。また骨はカルシウムの貯蔵庫でもあり、血液中のカルシウム濃度を一定に保っています。そのため血液中のカルシウム濃度が低下すると、骨からカルシウムが溶け出していきます。 男女ともに高齢になると、腸管からのカルシウム吸収が低下するため、骨粗鬆症になる人の割合が高くなりますが、女性の場合は閉経後に急増します。これは閉経によって女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が激減するからです。エストロゲンには、骨が溶け出すのを防ぎ、カルシウムを骨に蓄える作用を促進する働きがあるのです。女性の患者数は、男性の約3倍に達するといわれています。 しかし、これまでは閉経後の女性特有の病気と思われていましたが、インスタント食品やスナック菓子の摂り過ぎなどの偏食、過激なダイエットなどで、骨に蓄えられたカルシウム量の減少傾向が見られるため、若い女性にも増えています。また、多量の飲酒や喫煙、運動不足などによって、中高年男性にも増えつつあるそうです。 骨がこけたら歯もこける 骨粗鬆症が進行すると、骨折しやすい部位としては、背骨や股関節、手首がありますが、おくちの中にも影響が出ます。歯もカルシウムからできていますが骨よりも硬く、一度出来上がった歯はカルシウムが溶け出さないためボロボロになることはありません。しかし、その歯を支えているのは歯槽骨(しそうこつ)という骨なので、歯槽骨がスカスカになっていれば、歯周炎(歯槽膿漏)が進行しやすいということになります。足の骨の骨密度の低下と、歯周炎の重症度には関係があり、骨粗鬆症の人はそうでない人の1,8倍、歯周炎を発症する率が高いといわれるデータも報告されています。 予防対策 カルシウムをたくさん摂る
まず基本は、カルシウムを含む食品をたっぷり摂ることが大切です。具体的には、牛乳・ヨーグルト・チーズなどの乳製品、豆腐・納豆などの大豆食品、いわし丸干し・ししゃもなどの小魚、小松菜・切り干し大根・干しひじきなどの野菜類などを積極的に摂りましょう。 さらに、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを摂取することも重要で、生さけ・にしん・かれいなどの魚類、干ししいたけ・黒きくらげなどのきのこ類に多く含まれています。 過激なダイエットや、多量の飲酒や喫煙などはもってのほかです。 適度に日光を浴びる 食物に含まれるビタミンDはそのままでは活躍してくれません。日光を浴びて活性型ビタミンDとなって、初めてカルシウムの吸収を助けてくれるのです。 適度に運動する 骨に負荷をかけることで、骨の中の血流がよくなり、骨を作る細胞の働きが活発になります。また、骨に弱いマイナスの電気が発生し、カルシウムを呼び寄せるのです。適度な運動は、筋肉を鍛えるだけではなく、骨量の増加にもつながるのです。 |
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