響き渡る爆音と煙、そして木屑やガラスの破片。
全ての衝撃に耳が一瞬おかしくなったような感覚に陥る。

「野郎共!!パーティ・タイムだ!!逃げる奴にゃ尻の穴をも一つこさえてやれ!!」

最初の大きな衝撃2発の直後だというのに、銃弾の音がとまらない。
それも一つや二つからではない。
撒きあがった埃や木屑(恐らく元はテーブルやら椅子だったモノだ)それから棚に並べられていた様々なアルコールのボトルの破片が降り注ぐ。

「この酒場にゃ死人しかいねえ!!」

ガガガガガガガ―――

止まる事ない銃撃音。
そのうち一人の男が俺たちの座っているカウンターにむかってライフルをぶっ放し始める。
最初の衝撃で丸椅子から転がり落ちていた俺は頭を抱え込むようにしてカウンター前でガチガチに凍り付いていた。
俺は手ぶらだぞ。
俺は無関係だぞ。
そんなもの、この地獄には関係ない。
あるのはミンチになるかならないか、それだけだ。

「わぁっ!!!」

パリンパリンパリンと上からボトルの破片と雨のように酒が降ってくる。
隣ではも同じようにカウンター手前で床に座り込んでいたけれど、こっちは余裕綽々でさっきまで飲んでいたグラスを手放すことなく襲撃が収まらないこの中でいまだかたむけている。
ちょうど俺との間のカウンターはそこだけ破壊されていて、向こうの通路が筒抜けになってしまっている。

手前( てめえ ) のダチだろ!なんとかしてくれ!!」
「知らねえよ」

顔をだすことなくその大きな隙間から先ほどまでグラスをふいていたバーテンがいまだ酒を飲んでいるに向かって声を張り上げる。
ただ、その手には布巾とグラスではなくライフル銃。
ちょび髭をはやした東南アジア系のバーテンはの即効の答えにヒクヒクと頬を痙攣させた。

「クソッ!来るのが早いッ!!!!!無事か!?」

公衆電話があったこの酒場の端っこからキッペーの張りあげた声が聞こえてくる。
煙で見えないけれど(俺だってもうガチガチになってたしで)そんだけ大きな声が出せるんだからキッペーは無事なんだろう。

「生きてるよー」
「ユーシ!?」
「不思議と生きてんで」

相変わらず酒のグラスを暢気に構えているにいつのまにかカウンター奥に逃げ込んだらしいユーシから無事の声が漏れる。
カウンター越しにさっきのバーテンがちょうど俺の真上でライフルをぶっ放している。
耳がホワンホワンしていて、時々カウンターに銃弾があたって砕けていく。
キヨは?というキッペーの声が聞こえてきた時にはもう俺はイッパイイッパイで。

「もう嫌だァ!もうたくさん!せっかく珍しく勉強頑張って国立でていいとこ就職したのにこれじゃあんまりでしょッ!!!」

耳に両指つっこんで精一杯の声を張り上げた。
張り上げたとも!!
でもそんなのでこの五月蝿い空間から逃れるわけでもないし、危険な銃撃戦がやむわけでもない。

「喚くなバカ。人生はたのしまなきゃな…損だぜ、日本人」

ふと場違いな鼻歌が隣から聞こえてくる。
足の間にまだ少し酒の入ったグラスを置き、両肩のホルダーにしまってあった拳銃をとりだして充填している。

――ジャカッ、シャッ、ジャカッ、シャッ

流れるように素早いその動き。
手馴れているのがありありとわかる、まぁこの酒場にいる連中はみな手馴れているのだろう。
それは客だけじゃなくて、店の連中も。

ッ!!二挺拳銃( トゥーハンド ) の名は伊達じゃないってところ―――見せてやれっ!!!」

どこからか聞こえてくるキッペーの声。
それに

「OH YEAH!!!」

両手に銃を構え、ニヒルな笑みを浮かべて答えたは同時にカウンター前から横に向かって飛び出した。

―――ダンッダンッダンッダンッ!!!!

彼女の飛び出した体が床につくまでに、あの二つの拳銃から一体何発の銃弾が飛び出して、一体何人の侵入者を撃ち抜いたのか。
俺にはそんなのわからない。
わかってたまるか。
床に着地すると同時に近くにあったテーブルの上で構えていた侵入者がダダダダダとに向かってライフルをぶっ放す。
それを転がりながら避け、しかもそれと同時に手元の銃をぶっ放しソイツを打ち抜く。
倒れる侵入者の体が他の机を巻き添えにして床に倒れ伏す。
その隙にはカウンターに右手を置いて、よっと一つ掛け声を残して飛び越える。
飛び越える間も、がカウンターの裏に隠れても、侵入者からの銃撃は止まらない。

「出てけ!迷惑だ!何回店がぶっ壊れたと思ってやがる!?」
「んー、三回目か?」
「全部弁償しろよ、わかってんのか?」
「知らない。キッペーに聞いてよ」

そんな会話をしている間には素早く充填しなおす。
既に一応腰をおろしている床も元ボトルだったものや元飲み物だったものでぐちゃぐちゃだ。

「とにかく銭作ってもってこい!!」

そう叫ぶとバーテンはカウンターを越えてこようとした奴に向かって振り向きざまに手元のライフルをぶっ放す。
見事打ち抜かれた侵入者はカウンターの上に音を立てて倒れるが、相変わらずその奥からの銃撃はおさまらない。
再び腰をおろしたバーテンは心底顔を歪めてに顔を向ける。

「でなきゃこの店にゃもう入れねえ!来やがったら尻の穴を溶接して頭に代わりの尻の穴を開けてやる!!」

声を張り上げたバオには顔もくれずに。

「あいよ」

充填終わった二挺を構え、不適な笑みを浮かべた。
再びカウンターを飛び越えると、一発もはずすことなく全て侵入者たちにぶっ放していく。
背中にカウンターという壁があるとはいえ、まわり180度全て敵だ。
次から次から湧いてでてくる、ライフルをぶっ放しながら。
それでも



「あ………あの女………」



は自分が的になる事はなく、侵入者だけが的になるべくしてなるように



「笑ってやがるっ………!!」



髑髏マークの入った彼女の得物は火を噴く。