『DEAD US FUCK'N FRIEND CHICK'N BUSTER!!』
の口から出てくる言葉はえげつなくて、こんなの日本語に訳してなんかられない。
その上、この物騒な建物のど真ん中であの口の悪い女は、お前が悪役か!とばかりの笑みを浮かべて拳銃をぶっ放しまわっている。
俺はというと。
カウンター手前から動く事なんてできなくて(そんな勇気も度胸も今の俺にはない)まだ無事な四本足のしっかりしたテーブルの下に頭を抱えてしゃがみこんでいる。
意気地なし?
言いたかったら好きなだけ言ってよ!
俺ってば平和大好きな日本からやってきたただの商社マンなんだから。
――ガキュンッ
音がしたと思ったら何かが上から俺の顔の横を過ぎていく。
まさか、とばかりに過ぎていったものを確かめるべく床を見ようとばかりに顔をさげようとしたのだけれど。
――ドドドドドドッ!!
上から銃弾が降ってくる。
頭を両腕で急いで咄嗟の事に抱え込んだけど、後々考えるとそんなことで銃弾を防げるはずはない。
テーブルをつきぬける銃弾とその木屑がボロボロと零れ落ちてくる。
「うわぁぁァァ!!!」
「キヨ!!」
俺の叫びに気付いてくれたのかキッペーが咄嗟に彼の銃で俺(の潜んでいるテーブル)を撃っている侵入者を撃ち落してくれる。
ドンっドサッっと重いものが落ちてくる音が響き、つーっと視線を横にやれば目が開ききった男の体。
はっきりとは見えないが胸の辺りが赤く染まっている。
恐らく既に息はしていない、その男からすぐにでも目を離さなければ。
ただただ、それだけを思った。
「悪いな、手順がくるったようだ。これじゃあアレだ、引渡しはチャラだな」
いつのまにか俺と同じテーブルの下にもぐりこんでいたキッペーが右手に銃を構え顔だけ俺に向けて口を開く。
ただ、悪いと本人は先ほど口にしたけれど、ちっとも悪いように見えないのは俺の感覚が今最高潮に麻痺してるからだろうか。
「ちょっと待ってよ!俺は?俺はどうなるわけ!?」
「もともと予定にない話し出しな。ここで解散ってのはどう……」
「冗談は顔だけにしてよ!死んじゃうじゃんか!俺を連れてってよ!!」
表情かえることなく淡々と提案してきたキッペーの案を即効で却下する。
冗談じゃない、こんなところに置いてけぼりだけは勘弁だ。
俺の手元には何もない、あるとしたら今着ているスーツ一式くらいだ。
まぁそれも大分埃やらで薄汚れてしまっているけど。
要は、だ。
こんなところに置いていかれても俺はその先どうしようもないのだ。
第一このままここにいたら俺は確実に仏様になる。
涙目になっている俺にキッペーはハァっと一つため息をつくと、しょうがない、とこぼす。
「足だけは引っ張るんじゃないぞ、キヨ」
「が、頑張る…」
「あぁ、せいぜい頑張ってくれ」
そういうやキッペーはテーブルの下で充填を済ませ、中央で悪女のような立ち振る舞いをしているに向かって声を張り上げた。
「!路を開けッ!!!」
「YO-RIGH!! COME'ON DANCE!!」
彼女のある意味暢気な、それでいてどこか興奮したような声が聞こえてくる。
身近に転がっていた既に息をしていない侵入者の体を掴むとはその男の体を両手でわきの下から支えるようにして立たせ、そのまま唯一の出入り口へと突き進んでいく。
彼女の前に立ちふさがる侵入者たちはもちろんの餌食だ。
男の肩越しに顔をのぞかせ前に佇む侵入者たちを次々と排除していくの後を俺とキッペーも回りに気をつけながら走っていく。
飛びかっている銃弾の嵐の中とキッペーの間で必死になって出口へと向かう。
いつのまに外に出て行ったのかはわからなかったけれど、ユーシが一台の車を俺たち三人が出てきたところに乗り付ける。
「出すからはよ乗りや!!」
ユーシの声が聞こえてきたときには既に俺は後ろの席の扉をあけて中に転がり込むようにして飛び込んだ。
その後をいまだに店の中に向かってぶっ放していたが、助手席にはキッペーが乗り込む。
―――ギキュキュキュキュ
どこぞの車アニメみたいな音が車のタイヤから聞こえてくる。
ユーシが思い切りハンドルを切り車は思い切り回転して店に後ろをみせるような格好になる。
「!?何してる!?おい!!」
なんかスースーすると思ったらの座っている席の窓が思い切りあいている。
しかもあろうことかその窓枠に足をひっかけは体を思い切り外にさらしているのだ。
「あの戦争屋共に、イースターエッグをくれてやる」
そういうやいなや彼女はどこから取り出したのか丸い物体の上についていた金属性の栓を口でカシャンと外すと。
二つ思い切り店の中にむかって放り込んだ。
そして、俺は確か少し前にも聞いたような大爆発音を再び聞くことになった。
「キッペー」
バックミラーには燃え上がっている元イエローフラッグらしき建物がうっすらと映っている。
恐らく周りにも燃え広がっているのだろう、遠めでもすごくわかりやすいほどに赤々と燃え上がっている。
「バオの野郎、スチーム・ポッドみたく怒ってたぜ。弁償しなけりゃ店にも入れねえし、尻の穴も溶接するってよ」
「尻の穴はおっかないな、泣きそうだ。ケイゴに言ってはずんでもらうことにするさ」
行儀悪く足をユーシの座っている席のショルダーの部分に乗っけているにユーシもキッペーも何も言うことはなく。
ただ淡々と車は進んでいく。
―――ブラック・ラグーンへ。
「大尉、全チーム中十六名死亡、八名重症!」
サングラスをかけベレー帽のようなものを被った男が敬礼をしたまま口を開く。
話す言葉は英語ではあるがただどうやら母国語ではないらしい。
ところどころ訛りのある英語を話す彼は姿勢をくずすことなくそのまま口を開く。
「申し訳ありません、チンピラと思い油断したのが裏目に出ました」
笑みを浮かべたまま店だったものを見ている大尉と呼ばれた男は、シュトルム、と名前を呼ぶとそっと自分のサングラスを顔から外す。
サングラスで隠れていた部分には左目のよこから口の横辺りまで波打ったような傷跡がある。
それも普通の傷跡ではない、よれによれた自前の縫い跡だ。
「あいつらただのチンピラじゃァねえよ。まともな殺し合いができる連中だ」
きゅっきゅっとどこからかとりだした布でグラスを拭く。
「前の仕事(
は最悪だった。ぶち込む相手はジジイかクソガキしかいなかった。あいつらはノロくていけねえ、張りがねえ。だが―…」
そういうと男は顔をあげ、シュトルムのほうにむける。
浮かべるものは笑みか。
「今回の連中は張り(
がある」
悪魔の笑みか。
「俺は、こういうのを待ってたんだ」
戦争屋の、狂った男の狂った笑みか。