ジャッカル先輩は俺とあの女が似ているって言ったけど、ぶっちゃけ俺はそう思えない。
確かに俺と同じ自分の身体を使うスタイルとか性格とかは似ているかもしんないけど。
俺はまだ―――
「いつまで隠れてるつもりなのかはしんないけど!次で絶対本体引きずり出してやるからね!!」
そういってアイツは自ら自分に向かって突き出てきた角に身体を反転させ、ちょうど真正面にその角がくるように身構えた。
ところどころ床や壁にあいている穴を見ると、あの角の衝撃はかなりのもんだ。
それをわざわざあの女は自分からその角が自分に向かってくるように構えやがった。
冗談じゃない。ふざけるのもほどほどにしろ。
アンタのその細い身体でどうしようってんだ!
「おっしゃ、こーい!」
アンタはジャッカル先輩みたいに身体が丈夫じゃないだろ!
アンタは真田先輩みたいに身体が鋼鉄っぽくないだろ!いやまぁ真田先輩も鋼鉄だとはかぎらねぇんだけど。
アンタの身体なんか一発で穴どころか粉々になっちうぞ!!
頭のなかはいろんなことがぐちゃぐちゃと巡っていて、横にいるジャッカル先輩に目をむけても助けにいこうっていう素振りが見えなくて。
「バ、バカかっ!アンタ!!」
思わず手に汗を握り締めて叫んでしまった俺にアイツはニヤって笑ってみせて。
容赦なく突き出てきた角に貫かれていった。
「――あ、あ…」
自分の口からそんな言葉しかでてこない。
信じられない。
信じられない。
あの女―――
「ふぃ〜なかなかスピードあったわねぇ」
両腕使って軽く受け止めやがった……
あのとんでもない穴を開けてきたあの角を。
ギリギリあの尖った先はあの女の腹のあたりで止まっていたけれどそれでもアイツはあれを受け止めやがった。
なんて女だ!!
「捕まえたわよ。本体ごと引きずり出してやるから…っねっ!!!」
そう言ってアイツはその角を両手でしっかり掴んだまま思い切り自分の方に引っ張りあげた。
恐らく正体不明の角の本体の方も引っ張り出されないようにかなりの力で戻ろうと力をこめているに違いない。
違いないだろうし、その筈なんだろうけど。
ズズズっと地を這うような音をたてて壁の中から身体を徐々にあらわし始める敵。
あの女、どれだけ怪力なんだ――!?
少ししてさっきまでは角みたいな部分しか見えなかったのに、壁の中から本体と思えるモノの姿があらわし始める。
「アンタが本体ってわけね!どういう了見でここに忍び込んだってのかしらっ!!!」
あの女はそう言うと同時に思い切り力をこめてその角(本体がでてきてハッキリしたのだけれど角だ角だと思ってたあの尖ったのは実は腕みたいだった)を思い切り引きこんた。
バランスを崩すようにしてまるで顔は牛のような、それでいて胴体は毛むくじゃらの気持ち悪いソイツはの力に逆らえずに身体を少し浮かせてアイツに向かって飛んでいく。
飛んでくるソイツは隙だらけで。
そんなチャンスをあの鋼鉄怪力女が見逃すはずがない。
「成敗!!」
どこの時代劇だよ、その台詞……恥ずかしい!!
とにかく本人は満足げなそんな台詞をはいてアイツは飛んできた牛みたいな顔のど真ん中に思い切り右の拳を打ち込んだ。
今まで喧嘩やら色々やってきたけど、殴ったときにマジでドゴォォなんていう音がなったことはなかった。
それを考えると、とんでもない力と衝撃だったってことになる。
案の定殴られた牛モジャ野郎はビクっと一度痙攣するとすぐにおとなしく床にドーンと音を立てて崩れ落ち静かになった。
「うっし!圧勝!!」
いやいや、どんだけこの女怪力なんだよ。
つか、さっきも思ったけど普通じゃない。
「な?すごいだろ、アイツは。勉強になっただろ?」
ジャッカル先輩、確かにアイツが俺に色々似てるのはわかりました。
勉強にも―――かろうじてなるとは思います。
けど、けどよ。
俺、あそこまで人間離れしてねぇんだよ!!