馬鹿みたいに100階のビルをのぼりきった私はあろうことに足が筋肉痛で(でもその日のうちに筋肉痛になったってことは若いって証拠よね!)パンパンになり、その上幸村に「泊まってって〜」攻撃をしつこくだされ、まぁいっかとそのまま立海旅館にお世話になることにした。
一応温泉もあるし食事もそれなりにおいしいしと、ただで旅館に泊まれるんだし役得だよなと単純な私はよっぽど疲れていたのか次の日のお昼まで爆酔してしまった。
眩しいなとは思っていたけれどまさかお昼近くにまでなっているとは思わず、急いで着替えて皆がいるだろう階下に下りていった。
階段を下りていると、階下がかなり騒々しいのに気づく。

「イヤッスイヤッスイヤッスーーーーーーーーーーーーー!!!」

どうやらあの赤也少年が真田に向かって駄々をこねているらしい。

「お?おそよーさん、
「おそよー、ブン太。アイツ、真田に何やってんの?」

首をブンブンと横に振っている赤也を尻目に扉近くで傍観していたブン太に声をかける。

「赤也が駄々こねてる」
「見りゃあわかるわい!でもまたなんで?」
「真田も気の毒にな〜」

答えになってないぞとブン太の頭をはたいてやろうと手をあげた瞬間

「真田先輩なんかじゃイヤッスーーー!!!!」

赤也の声が部屋に響き渡った。
イヤといわれた真田はというと、赤也に否定されたことがそんなにショックだったのか目をカッと開いて固まってしまっている。
ショックを受けたんだろうけどそうやって目を見開いてると怖いとしか言いようがない。

「赤也、そんな言い方はないだろう」

そう言って真田の横から現れた真田大好きっ子柳は赤也をたしなめるように頭に手を置いた。

「せめて『なんか』っていうのは外してやってくれ」

なんか違う、って思うのは私だけかな。
つか何気にひどいよね、柳って。

「あー!!おはよう!よく眠れた?ぐっすり?」

そんな声が聞こえてくると同時に右腕にあの重みがずしっとのっかかってくる。
こんなことをするのはただ一人しかいないので私もされるがままだけれど、私より身長高いやつにしがみつかれるとすんごく重くて疲れる。

「おはよ、幸村。でさ、朝から重いからちょっと外れてくんないかなぁ」
「あああーーーーーーーーー!!!!」

幸村に顔を向けるとそんな叫び声が聞こえてきて今度は左腕になにかがしがみついてきた。
なんだなんだと左の方に顔をむけると

「幸村ぶちょばっかズルイ!俺も俺も!!」

なーんて、さっきまで真田に駄々こねていた赤也少年が。

な・ぜ!?

「ズルくなんかないよ!の腕は俺のものだからね!」
「フン!師匠!!おはよーございまっす!!」
「は?師匠?」
「あー赤也のくせに俺を無視したな!」

一体何が起きているのだろう。
まだ私ってば夢の中?なんで赤也のやつまで私の腕にしがみついてんの?
ブン太、ヘルプミー!!

「俺には無理」

早っ!!つかなんとかしようって思ってもくれてないだろ、畜生!!
いやいや、本当一体何をやったらこういう状況になるのかしら。誰か教えてちょうだいよ、私ってば昨日まですんごい赤也に嫌われてたじゃん!

「赤也、精市も。とりあえずが大変そうだから離れないか」

柳がそう言って赤也と幸村を私の腕から外してくれる。
一体何がどうなってんだかちゃんと説明してもらいましょうか!その目の前でほうけちゃってる真田のこともね!

「いや、弦一郎が赤也に直接師事することになったのだが」
「イヤッス!俺は真田先輩より師匠がいいっす!!」

そう言って赤也は再び私の腕にしがみついてきた。
あぁ、やめてちょうだいよ。そんなことしたらまた幸村もしがみついてくるんだからさ…あぁホラね。

「――つか師匠ってなによ」
「師匠は師匠っす!俺、教えてもらうなら師匠がいいっす!師匠の技に惚れました!!」
「師匠って私なの?」
「ハイ!!師匠、今面倒みてる研修生いないでしょ?だったら俺の面倒見てください!!

昨日までのあの態度はどこへいった、赤也。
確かに面倒みてるやつはいないけど、かといってコイツの面倒をみるのは―――ちょっとどころかかなり気が引ける。
反対側の幸村の視線も痛い。
つかアンタがここのボスなんだからちゃんと言いなさいよ、赤也に。

「赤也の見る目だけは褒めてあげるよ」

ちがうでしょーーーーーーーーーーー!!!

「あのねぇ、面倒みるったって、私は東京本社の人間で君は神奈川支部の人間なの。違う支部の人間の面倒までは見てられないよ」

諦めてもらおうと根本的な部分を説明してやると、あろうことか赤也は

「じゃあ、俺東京に移ります!東京の人間になるっす!!」

とのたまわってくれた。ものすごい笑顔つきで。
しかし。
その瞬間真田が復活したらしく、鬼をも視線だけで殺せるんじゃないかしらってくらいでギロっと私の方を睨み付けてきた。
冗談じゃない!今しかもちょうど右腕に真田の大好きな幸村もしがみついてるんだよぅ!

覚悟をきめろ、。今日こそは許さん

なんの覚悟だってんだ、畜生!!!!