「せんぱ〜い!」
かったるいHRも終わりさっさと事務所へ行こうとしていた私は自分の教室をでたところで一つ下の後輩達に声をかけられた。
部活に入ってもいない私だけれど友達づたいに後輩やら先輩やら紹介され、なんだかんだでそれなりに楽しい高校生活を送っている。
今日待ち伏せしてまで声をかけてきた後輩達はバスケ部の子達で3人とも部活の先輩でもない私によく懐いている。
「おー、どしたよ?」
「今日部活なくなったんです!良かったら駅まで一緒に帰りませんか?」
可愛い後輩達の申し出に快く返事をして四人並んで集中下駄箱へ向かう。
3人は今日あった面白い話やテレビの話、それから恋の話を楽しそうに喋っている。
恋だってさ!K・O・I!!
いいよな、高校生っぽい!!青春だよ青春!
どうせ私なんて
「休み?冗談じゃないよ、この忙しい時期に。ホレホレ、仕事に戻りな!」
「クス、は僕との仕事嫌なんだ?そう、じゃあアノ話を皆に言うしかないかな」
「怪力馬鹿女!さっさと報告書書けよな、アーン?」
「幸村だけならまだしも、赤也まで!!、許すまじ!!」
私も青春したーい(棒読み)
青春は勿論恋なんてしてる余裕も時間もないからね、ないというよりかは意図的に与えてもらえないんだけど。
ほら、男からライバル宣言されちゃったりさー…。
勘弁してよね、真田。
「あれ?校門のとこ、人だかりできてる」
「ほんとだ。なんかあったのかなぁ?先輩も行ってみよ?」
そう言って私の返事を聞く前に三人に腕を引っ張られてグイグイと校門の方へと連れて行かれる。
なんだかすごく嫌な予感がする。
行っちゃダメだと女の勘がビシビシ言ってる。
でも、三人の力強いんだもの、引き返せないほどの力でグイグイと前進あるのみ!状態。
「あっらー、待ち伏せの男の子か〜そりゃみんな集まるよね。先輩、ちょっとジッとしてて」
「あれどこの制服?この辺じゃ見かけないよね。もう先輩!暴れないでよ」
「あーあー。あの男好きの桜田先輩に捕まってるよ、あの人。って先輩!どこに行こうとしてんの!?」
三人娘の手から一生懸命逃れようとしているのだけれど、逃げようとしては叱咤され逃げようとしては叱咤され。
どっちが先輩なのかわかりゃしない。
諦めてせめておとなしーーーくして通り過ぎてやろうと三人の影にはいった私だけども、つい好奇心にまかせて群がってる女の子たちの隙間からその少年を覗いてみた。
一番に目に入ったのはいつでもどこでもぶりっ子の桜田、そしてその影にはどこぞで見たようなモジャ頭。
ゲと思った瞬間そのモジャ頭と目がばっちりあってしまう。
こんなに周りにたくさん人がいるのにどうしてこそこそしてる私と目が合うのよ!!と、逃げるために私はダッシュしようと足に力をいれたのだが。
「みーけった師匠!」
と思い切り私を指差して大声を張り上げた馬鹿がいた。
もちろん指差し大声で校門にいた女の子たちの視線が一斉に私に集まる。
なんだかどこかで似たような体験をしたような気がするの、私。
「師匠師匠!やっと会えた〜。一緒に帰りましょー!」
そう言ってモジャ頭、正式名称切原赤也は笑顔で目の前の桜田を押しのけてこっちへやってくる。
不二と違って悪気がないというか、わざとやってるわけではないからタチが悪い。
「ししょう?先輩、知り合い?」
「ハッ!ま、まさか先輩、か、彼氏!?」
三人娘がじぃっとこっちをみつめてくる。
その目を見てるとなんだかいたたまれなくて(不二の時、信じてたのに!というメールを送ってきたのはこのうちの一人だ)思わず赤也の手を取り走り出してしまった。
「あー!先輩!!」
「私たちと帰るって約束してたのに!!」
すまん、三人娘たちよ!
説明すると長いし、なによりまだ処刑台に立ちたくないのだ!!
I LOVE 自分!!
なんだか前にもいったような気がする、この台詞。
「で。なぜ君がここにいるのかな?ん?」
結局駅までしたくもないランニングをし、乗り込んだ電車の中で息を整えてからこれっぽっちも息をきらしていない赤也に問いかける。
すると赤也は嬉しそうに私に会いに来たと答えた。
「だって俺師匠の下で修行するんスもん」
するんすもん、って決定事項なわけ!?
しかも「もん」ってちょっとドキっとしちゃったでしょ!
いやいや、こんな事態になってたら黙ってない馬鹿が一人いるでしょうが!
「ちょっと、今日東京に来てること幸村達に言ってきたんでしょうね?」
「だいじょーぶッス!ちゃーんと言ってきました!」
「ジャッカル先輩に」
頑張れ、ジャッカル。
真田に葬られてくれ。