「ちぃーっす」
「ちわーっす」
「うぃーっす」
上から順番に私、赤也、越前少年。
すんごいやる気のない挨拶に聞こえる、いや実際私はほとんどないんだけど。
どうせ私が挨拶してもここの連中なんか返事一つ返しやしないのよ、なってないわよね!
「に、越前くん?」
「キヨちゃん、はよっす。少年には下でバッタリ会ったのよ」
「そかそか。越前君、聞いたかもしんないけどこっち。こう見えてうちの事務所ん中の強者。も越前君のこと宜しくしてあげてね」
なんだかんだでサボり魔のキヨもちゃんと後輩の面倒は見てるみたい。
「後ろの彼は?見たことないけど?」
私の後ろに立っている赤也に首をかしげるキヨ。
他の連中も挨拶をろくに返しやしない癖に見ない顔だと興味津々って感じでこっちに視線をよこしてくる。
いや、違う。絶対そんな理由じゃない。
だって連中の目は
「なになになにー!!の彼氏ぃ!?」
「ギャー!明日は雪だ雪!」
「雪どころか槍がふるぞー!」
「つかありえへんやろ!?やで!?ちょっとは考えてみぃや」
「に先越された……すっげぇ屈辱だ!」
単に面白がってるだけだし。
今発言したやつ、あとできざむ!!
―――不二がね。
「どーも!の彼氏の切原赤也でーっす!」
「って、お前も調子にのるな!!」
私がそう怒鳴ると突然執務室の中に静寂がおとずれる。
物音一つない。
全員なぜかものすごく哀れな目をしていたり驚愕した表情で私ではなくてその斜め後ろにいる赤也の方を向いている。
一体なんだってんだ。
「お、お、お、おまえ…」
ガクガクと震えながら私たちの前に出てきたのは吸血鬼ヤロー神尾アキラ。
なんでそんななにか恐ろしいものを見たみたいな顔してんだか。
「正気か!?だけはやめとけ?な?人生棒にふりたくないだろ?人生長いんだぜ?もっと良い女見つかるからさ、まぁそれ以前にほとんどの女は以上なんだけゴフゥァッ」
「滅殺!!」
私の拳が蝙蝠野郎の腹に見事に決まり奴はお腹を押さえたままその場に倒れこんだ。
周りの連中もここぞとばかりに私と目を合わせないようにしている。
そうかそうか、全員神尾と同じことを思ってたんだな。
その中に裕太や南君もはいってることがさん悲しいよ。
「アンタは事務所に来て早々何やってんだい!?」
突然の殺気とともに私の頭にとんでもない痛みが走る、ついでにゴチーンなんていう素敵な音も。
あまりの痛さに声もだせずに私の素敵な頭を殴った奴を睨み付けようとして逆に睨み返されてしおしおと塩をふりかけられた菜っ葉のように崩れ落ちた。
「いつもいつも!後輩苛めはやめなって言ってるだろうが!!」
「スミレちゃん!それ誤解!寧ろ私の方こそ苛められ」
「お黙り!!」
我らがボス、竜崎スミレ女史はそう一喝すると私の制服の襟首をガシっと持つ。
まるで猫のよう。
「が猫なわけないじゃん、せいぜい罠にかかったネズミだよネズミ」
深司、あとで覚えてろ!!
でも今はスミレちゃんに引きずられていて手も足も出ない。
スミレちゃんはそのまま私を引きずって所長室へと入っていく。
な・ん・で!?
「たく、この子はいつまでたってもどうしようもないね!仕事だよ、仕事!しゃきっとしな!」
どうして私だけこんな扱いなのかしら。
ほら、初対面だっていうのに越前少年が呆れた顔してこっち見てるよ。
「のやつ、また新しい仕事か?」
「あ、宍戸さん。そうみたいですよ」
「にしても今回の話、かなり前振り長かったな。前振りに3話だぜ?3話!」
「――宍戸さん、誰に向かって話してるんです?」