「ここかぁ、水谷第一高校」
「――小せぇな」
「あんたたちの馬鹿でかい学校と一緒にしてんじゃないわよ」

ほら行くわよと率先してこの高校の門をくぐる。
門をくぐりこの高校の敷地内に足を踏み入れた一瞬、首の後ろにチリっと痛みを感じる。
手を後ろにやり確かめてみたが何もない。

「あん?、どうかしたか?」
「―あ、いや。なーんか一瞬。ん、いや、なんでもない」

それほど心配するようなことではないと判断した私は校舎を目指して歩き始めた。
あとで、少しでもここで"疑っておけば良かったと後悔するはめになるのだけど。




「越前幽限事務所の皆さんですね、ようこそ。どうぞお座りになってください」

そう言って出迎えてくれたこの高校の校長は多少やつれた顔で私たちにソファを勧めてきた。
当たり前のように一人がけのソファに跡部が座り、当たり前のように私を挟んで赤也とジロちゃんが座る。
あの赤也もジロちゃんも少し引っ付きすぎじゃないかな。
私少々苦しいのよ。

「この度はわざわざお越しいただいて有難うございます、校長の楠木と申します。後ろにいますのが」
「教頭の太田です」
「依頼承りました跡部です。で、こっちの三人が下僕の芥川、、切原です」

ちょっとマテー!?
今サラリと下僕宣言しやがったな!しかも強調して!
つかこの依頼は私のモンだっつの、跡部のじゃないわコンチキショー!
どこまでも自分が一番じゃないとダメなやつめ!

「は、はぁ。下僕でいらっしゃいますか」

素直に受け止めないでよね、校長!!

「所長の竜崎から簡単な話は聞いております。確認したい事等ありますので詳しい話をお聞かせ願いますか?」
「はい、勿論です」
「その間、残りの三人には学校を調べさせます。構いませんか?」
「はい。あぁだったら案内役の生徒をつけましょう」

なんだか私たち三人を放っておいて話が進む進む。
スミレちゃん、跡部相方にするくらいなら私いらないと思うよ。

「なぁ先生!その案内、俺にやらせてくれよ!」

まさに盗み聞きしてましたーっていう感じで校長室の扉を開け入ってくる少年が一人。
なんというか非常に面白い髪型で、元気あふれてます〜って感じ。
まぁ私の周りにもたくさん面白い髪型のやつはいるから、そのへん免疫できていて噴き出さなかったのが幸い。

「コラ、向日!今授業中だろう!それに案内役は生徒会長にやらせる、お前には任せられん!」
「なんでだよー!第一高3てばもう授業ないんだぜ!自習時間ばっかじゃん!」
「ダメなものはダメだ。さっさと自分の教室にもどれ」

不思議髪型少年は教頭の太田って人につかまりそのまま校長室を追い出されようとしたのだが。

「あっれーー!!がっくんじゃーん!」

というジロちゃんの言葉により無事校長室への滞在が許可され、(校長教頭ともどもすごく嫌な顔をしたが)この不思議髪型少年が無事私たち三人の学校案内役に決まったのであった。
調査を長引かせるつもりはないのだが校長室を拠点にするのもお互いに嫌だろうからと、今現在使われていない空き教室を私たちには宛がわれそこを拠点に私たちは行動を開始することになった。




「へぇ、じゃあジロちゃんのお隣さんなの!」
「そうだぜ!俺すっごい驚いたんだからな、屋上でたまたま下覗いてみたらジローの奴がいるんだから」

この案内役の不思議髪型少年は向日岳人といってジロちゃんのお隣さん兼跡部&宍戸とはまた違ったジロちゃんの幼馴染さんなのだそうだ。
私と目線が同じくらいでしかもちょっと言動が幼い感じがしていたのでてっきり年上だと最初は思ったのだが、跡部と同じ年齢なんだそう。
まぁジロちゃんみたいなのもいるしな、不思議には思うまい。

「しかもそのまま校長室入っていくからすっげぇびびっちゃったじゃん!」
「俺も俺も!がっくん、いきなり部屋に飛び込んできたからチョー驚いちゃった!!」
「ちょっとカッコよかっただろ!?」
「うん、かっちょよかったよー!」

私と赤也の前をジロちゃんとピンクの妖精がっくんが楽しそうに喋りながら歩いている。
二人揃って小さいのもあるからすんごい可愛い光景ではあるんだけど。

「まるで俺らより年上って感じがしねぇ」
「――それを言っちゃおしまいよ、赤也くん」