一人ずつあたって話を聞いて来いといっても既に時計の針は6時前をさしていて、聞き込みは明日からということで落ち着いた。
ジロちゃんは明日学校を休めるといって一人で万歳三唱している。
私たちの事務所では仕事が入った際学校を休んでも公欠扱いになる。
それもこれもうちの事務所が政府公認であるからなんだそうだ(参照オールキャラ版『その噂真実につき』)
万歳三唱しているジロちゃんの横では赤也もニマニマと嬉しそうに笑っている。
が。

「赤也、アンタこの仕事に関しては勝手についてきただけなんだからアンタは学校よ」
えーーーーーーー!!そんなぁ!!

そうは問屋が卸さない。
横暴だ横暴だと叫んでいる赤也の横でジロちゃんが赤也を見て笑っている。
HRを終えてから即効で飛んできたがっくんは明日からの聞き込みに快く協力を申し出てくれ一緒に明日から行動することになった。

とジローは明日8時に事務所前集合だ。向日、お前とはここで合流する」

跡部のその一言でひとまず今日の調査は終了ということになった。








―――次の日。

珍しく時間を守って事務所前に来たジロちゃん(どうやら6時ごろから跡部のひっきりなしの電話で起こされたらしい)と跡部と合流し水谷第一高校へと向かう。
赤也に関しては少々不安だったため、幸村に電話を昨日の夜いれておき引きずってでも学校に連れて行くよう言っておいた。
朝入ってきたブン太からのメールによると案の定赤也は制服を着たまま東京行きの快速に乗ろうとしてそこで真田と柳に捕まったらしい。

「おっせーよ、おまえら!」

空き教室に入ると既にがっくんがいて、漫画を片手にぷぅっと頬を膨らませていた。

「ジロー、お前ちゃんと起きれたのか?」
「あとべーが6時からずっと携帯に電話してくんの。切って寝ようとしてまたかかってくるの
「そ、そうか。跡部、お前ジローのことよくわかってんな…」

引きつり気味にがっくんは跡部に笑いかける。

「フン。オラ、さっさと仕事始めるぞ。まずは目撃者からの聞き込み、それから失踪者の親友関係をあらう」
「あらうって容疑者じゃないんだからさー」
「うっせ、とにかくこいつらから事情をきかねぇと話がすすまねぇ」

跡部はそう言って自身の鞄からファイルを取り出しがっくんにそれを押し付けた。

「そのファイルに載っている生徒が全目撃者と全親友関係とかだ」
「これ、俺がどうすんの?」
「そいつら全員呼び出せ、いいな?校長には許可もらっている」

有無を言わせぬ跡部の物言いにがっくんは「おう」と答える。

「こいつらから聞きたいことは一つ」



「失踪者との会話だ」










えーと、授業中に失礼します。今から名前を呼ぶ生徒は至急二階視聴覚室横の空き教室に集まってください。
まずはー、えーと、1年2組の荻原雄介くん、同じく1年2組の近藤啓太くん……』




「こ、これで良かった?」
「うん、いいんじゃないかな。ありがとうね、がっくん。跡部のせいでさ〜」

ものすごく緊張しながら放送マイクに向かって生徒の名前を呼んでくれたがっくんに一言跡部のことを謝っておく。
跡部の(いつもの)我が侭のせいでがっくんの時間を取ってしまっている。

「ん、俺が手伝うって言ったからいいんだ!が気にすることじゃないからな?」

笑ってそう返してくれるがっくんにありがとうと伝える。
がっくんだっていなくなった滝っていう人を連れ戻したいんだものね。

「じゃあ空き教室、もどろっか。跡部が待ってるしね」
「おう!」


「お前ら遅かったじゃねーの、アーン?

私とがっくんが空き教室入るなりこの一言。
こんな些細なことで跡部に怒ってたら堪忍袋がいくつあっても足りなくなってしまうので、ここはサラ〜とスルーしておく。
教室の中は先ほどの放送で呼ばれた生徒が続々と集まってきていて、最初四人だけだった静かな部屋がガヤガヤと五月蝿くなってくる。
ジロちゃんはやっぱり朝早くから起きてたからか教室の隅っこで机を並べてベッドのようにし、その上でスヤスヤと眠っている。

「授業中に呼び出して悪いな、この件は校長に許可を貰ってやっている。集まったお前らには聞きたいことがあるから俺たちに少しの間協力してもらう」

跡部が声を発すると五月蝿かった教室も静かになり、集まった生徒の視線が私や跡部、がっくんに集まる。

「一体何の用件でここに呼び出されたのかとか、アンタたちは一体誰なのかとかの説明はないのかよ」

一番前の列に立っていた眼鏡をかけた少年が跡部に言う。
まぁそりゃ授業中に呼び出されたんだ、イライラする奴もいるよな。

「フン、俺たちはここの校長に呼ばれてこの学校の失踪事件を調べるためにやってきた人間だ。腕は確かだから安心しろよ、アーン?」
「失踪事件と聞いてピンと来た人もいるかも知れないけれど、ここに集まってもらったのはその目撃者であったり当事者たちの関係者だったりします」
「聞き込みってわけじゃねぇが、聞きたいことがお前ら全員に少々ある。悪いがお前らの時間はこの俺様が預かった

いやいやいや!
跡部のあほんだら、仕事できてんのになにあんたの一人パフォーマンスショーになってんの!
なーにが俺様が預かった、だ。恥ずかしいつうの!
こんなの氷帝の生徒以外受け入れられるわけないでしょ、みんなポカーンとしてんじゃないの。

「ま、まぁ、いいんじゃね?」
「授業サボれるしさ」
「アノ人かっこいいねーあの制服氷帝だよ〜」
「本当にアイツがかえってくるならしょうがねぇよな」



受け入れすぎーーーーーーーーーーーーーー!!



「フッ。なら話は早ぇ。一年生はこの向日に続いて隣の視聴覚準備室、二年生はこの横の女、に続いてさらにその隣の視聴覚室、三年のやつらはこのままこの教室に残れ。なるべく詳しく話せよ、自分の覚えてること知ってること全てだ。いいな」

そういってパチーンと指をならした跡部は満足げに自分の前髪をかきあげていました。
幸せなやつめ。
つか、ここの生徒も生徒で指パッチンで素直に解散してんじゃないわよ!