「お前の話、そして他の奴らの話からでてきた共通点は一つだけだ」

跡部はそういうと自分の霊力を指にこめ、その指でなにもない空間に文字を書いた。

イナクナッテシマエ

キエテシマエ

ドッカイッチャエ


なにもないところで光り輝くその文字は少し時間がたつとすぅっと消えていってしまう。
あ…とがっくんの口から漏れた声が静かな教室に響く。

「お前も滝って奴に言ったんだよな?」
「あ、あ…俺、でも」
「ちょっと、跡部。がっくんをいじめないでよね」

顔を真っ青にして跡部の顔を凝視しているがっくんの肩にそっと手を置く。
いじめてねぇよ、バーカと小さく言って跡部は後ろにある椅子に腰をおろし偉そうに足を組む。
なんでこいつはいつもいつも偉そうなんだろう(実際偉いのかもしんないけどさ)

「八人が消える前に必ず誰かがそいつらに言っている言葉、それがどこからかかかってきている力によってこの高校敷地内では言霊としての力を持ってしまった」
「口に出してはいけない言葉、全てはその自殺してしまった子のさりげない呪いの言葉発端になってしまってんだわ」

本人に悪意はなくてもその言葉自体には言葉の力がある。
悪意なくいった言葉も言葉自身が悪意のある言葉である限り、その言葉は口に出してはいけないものなのだ。
この高校の敷地内だけが特別なわけじゃない。
どこにいっても、言霊というのは付きまとう。


お願い事をするときも。
愛を囁くときも。
悲しみの言葉を呟くときも。


言葉の力はつきまとう。
ほとんどの人間はそれに気づかない、言葉の魔力に気付かない。

「がっくん、言葉ってのはすごい大きな力を持ってんの」
「――うん」
「滝くんに本心から言った言葉じゃなかったんだよね。つい、出てしまった言葉なんだよね」
「うん」
「だったらさ、滝君が帰ってきたらまずは謝ろう?きっと赦してくれるよ。それも、言葉の持つ力の一つなんだから」

近くにあった椅子にがっくを座らせ濃いピンク色の頭を撫でていると、ジーンズのポケットにつっこんでいた携帯がブルブルと震えだした。
取り出してディスプレイを見てみると『事務所』とある。

「あいよー、こちら可愛い可愛いちゃんでーっす」
ゲロゲロ〜

出た途端そんな言葉がはかれる。
即座に電話をピッと切る。

「誰からだ?」
「アンタんところのオタク眼鏡」

忍足か、と頭をかかえて跡部はため息をつく。
再び震えだした携帯に腹が立つなぁとブツブツ言いながらも出てやる。
跡部とジロちゃんとがっくんは三人で違う空間に飛ばされてしまった生徒たちをどうやって取り戻すかの話にはいっている。
といってもがっくんには何の知識もないので跡部とジロちゃんの話をボーっと聞いているだけって感じだけども。

「あいよ、様よ。なんか用?」
『勝手に電話切るなや〜』
うっさい、オタク!!

携帯を耳から話して口元にもってきて思い切り怒鳴ってやる。
跡部は空間能力に関しては神奈川の奴らに頼んだ方が確実だ云々を頭に?マークを浮かべているジロちゃんとがっくんに力説している。
相談する相手を間違えてるわよ。いくらジロちゃんしかいないからって。

『――おーい、聞いとる?』
「んあぁ、まったくこれっぽっちも聞いてなかった。用事はなに?」
冷たいやん、。ま、ええわ。跡部もも大事なもん忘れていっとるで』
「忘れもん?」

私は別にいつものあのグローブをしっかり持ってきてるから忘れ物なんてないんだけど。
跡部かなと思い、忍足からの伝言を伝えてやる。
一瞬眉をひそめた跡部は、別に俺は忘れ物なんてしてねぇと返す。

「忍足?跡部も私も忘れ物なんてしてないんだけど?」
『まったまた〜。自分ら頭大丈夫なん?もうボケはじまってんの?』
なんでお前にそこまで言われなきゃいけないのかしら、アーン?

後ろで跡部が人の台詞を取るなと騒いでるけど無視、アーンごときで騒いでんじゃないわよ。

『と、とにかくやな!お前ら忘れもんしてんの!』
「してないっつの!」
『ちょっと待っとれよ〜ほんまにかわいそうやろ、かれこれ3時間も外で待ちぼうけくらっててんで!』
「は?誰が誰に3時間も待ちぼうけくらってたのよ?」

電話越しに忍足の「あ〜かわいそうかわいそう」が何回か聞こえてくるが、生憎私も跡部もなんのことだかさっぱりわからない。
跡部も跡部で「忍足がまた馬鹿なこと言ってんのか?」である。

『よう言うわ、自分らちゃんと約束しとったんやろ。ちょっと遅刻したからって置いてくことあらへんやん』
「ちょ、ちょっと待って!話が、本気でよくわかんないんだけど!」

焦ったように私が携帯に向かって言うと、忍足は心底馬鹿にしたように「はぁ?」と呟き、すぐに向こう側からおーいと忍足が誰かを呼ぶ声が聞こえてくる。
今代わるからな、と忍足が言って。
それから。





っち!?あとべーも!!俺置いてくなんてひどいC!うわーん、泣いてやるC!!』






何故かジロちゃんの声が私の耳に入ってきた。