今日は四月馬鹿の日だっけか。
そう思わずにはいられない、そんなとある日の放課後。
今日はこのまま事務所に行ってすぐさま昨日から受け持ってる依頼の現場に行って、と一端のサラリーマン(営業部門)のようなことをあれやこれやと考えながら教科書やらノートやらをカバンにぶち込んでいた私は廊下から聞こえてくるドタドタと騒がしい音に顔をあげた。
あぁこの騒々しさはあの三人娘だなと予測をつけると、すぐ顔をおとしてカバンを肩にかける。
クラスのみんなが教室の扉に注目していると案の定ガラっと乱暴な音とともに扉が勢いよく開けられ
「先輩!!大変!!」
「先輩!!聞いて!!」
「先輩!!信じてたのに!!」
三人娘の登場である。
つか、ちょっと最後の台詞気になるんですけど?
はぁとため息を一つこぼし、どうした?と尋ねれば三人は私の腕を掴んで窓側へと引っ張っていく。
なんだなんだと他のクラスメートも窓際へ向かうと、そこから見える光景に唖然とする。
「な、なにあれ?」
「校門の前、すっごい人だかりできてるんですけど…」
「今までで一番ひどくない?」
クラスメートの囁きあう声に私の頭は一瞬真っ白になり。
どういうこと?と三人娘に声を震わせながら尋ねる。
「あれも先輩のこと待ってる男でしょ!?」
「先輩、今日校門で待ってるの四人だよ!四人!わかってる!?」
「しかも顔見てきたけど今まで来た人たちとはまた違う顔だよ!?」
キーキーと目を吊り上げて私に詰め寄ってくる三人娘と聞き捨てならんとばかりに詰め寄ってくるクラスメート。
なんというかみんな目が据わりきっている。
とりあえず、理由もわからず「ごめんなさい!!」と謝るとカール・ルイスも真っ青な勢いで教室を飛び出て校門へと向かう。
あのまま校門にいる連中を無視して裏門から帰っても良かったのだが、あの集団の中にいる連中いかんによっては逃げ出すと後が怖い人物もいるかもしれない(某魔王とか某魔王とか)
つうか一体誰だ、私の快適学園ライフをことごとく壊して行ってるのは!!
「あ、出てきた」
「遅かったな、」
「俺様を待たせるとはいい度胸じゃねぇか、あーん?」
「あ、」
なんだこのメンバー!!!!
「リョーマに手塚パパに裕太…なんでここにいるのぉ!?」
「おい、こら。テメェ、今俺様をぬかしやがったな」
「俺は先輩と一緒に帰ろうと思って」
「おい!だから俺様を」
「俺は仕事のことで。どうせだから一緒に行こうかなと思って」
「聞いてるのか!?」
「俺は昨日帰ってきたばかりだからな。久しぶりにお前の顔を見ようと思って」
「で。偶然校門前で鉢合わせちゃったってわけ?」
「だーーー!!俺様を無視するなぁ!!!」
「あーもう、うるさいから跡部はちょっと黙ってて!!!」
ゴンという音が校門一帯に響き渡る、私が跡部の頭を右手で殴った音だ。
一瞬静かになるがコロンと校門前に転がしておくと、我が学校の飢えたハイエナども(深司命名)が跡部に群がっていく。
喜べ、跡部!ハーレムだ!!
「ちょっと、俺が一番にここに来たんだから先輩達はダメだよ」
「え?リョーマさん?」
女に囲まれている跡部をヘヘヘと笑っていると残りの三人の雰囲気がいつのまにか悪化。
しかもなんつうか、私が目玉商品みたいになってません?
「何を言う、越前。俺もに会うのはかれこれ2週間ぶりなんだ」
「俺だってこの後と一緒の仕事が入ってるんだからな」
「あのー、手塚さん?裕太さん??」
三人がバチバチとまるで火花が出そうな勢いで睨み合っている。
手塚パパはほとんど表情変わっていないし、裕太も(海堂ほどじゃないけど)結構目つき悪いからそのまんまだし。
しかも肝心の私を迎えに来たっていうわりにはさっきから無視しっぱなしだし。
「ねー、先輩。結局先輩の知り合い?」
「これで六人だよ、先輩のこと迎えに来たの」
「先輩、そろそろ他の生徒達の目つきがヤバイかもよ??」
いつの間にやら横に現れた三人娘が言い争っている三人と女に群がられている跡部を見つめながら呟いた。
私もそう思う。
かれこれこれで、不二、赤也に今日の四人。
しかも(私はなんとも思わないが)世間一般にはカッコイイと称される男ばかり。
ぶっちゃけ私はこの学校でどういう女だと思われているのだろうか。
男ひっかえとっかえの最低女?
男に貢がせまくってる最低女?
男と遊びまくりの最低女?
「ギャー!!私は決してそんな最低女じゃなーーーい!!」
突然叫びだした私に三人娘達がビクっとする。
だけど実際のとこ、そういう風にしかとられない気がする。
バイト先の人間だって説明してもこんなに6人もわざわざ学校まで迎えに来るかっていわれたらおしまいだし。
かといって彼氏云々ではないし。
「え?ようは私何をどういっても最低女っていうレッテル貼られっぱなしってこと?」
「さっきから何言ってるの、先輩」
ブツブツと頭を抱え込んで校門の隅っこに座り込んだ私に三人娘が顔をのぞくようにして尋ねてくる。
きっと三人娘達は私のこと最低女だとは思ってないと思うけど、クラスメートたちは他の学年の人たちはそうはいかない。
あぁ私絶対いつか神尾の言ってた処刑台に立ちそうな気がする。
「先輩と帰るのは俺なの!!」
「まだ言うか、越前。今日は俺がと帰る!」
「だから、俺と一緒に仕事なんですってば!!」
「ねぇねぇ、倒れてるけど大丈夫ぅ?」
「ちょっと、この制服!あの金持ち学校の氷帝のだよ!」
「うっわ!狙い目じゃん!!ねーねー起きてぇ!!」
「私ってば最低女のレッテル貼られてるんだよ!?どうしよう、三人娘たちよ!!」
「それはないから大丈夫!みんな、なんで先輩が?とは思ってるみたいだけど」
「先輩だからそういうのじゃないってみんなわかってるよ!!」
「おこぼれにあずかろうとそっち方面でみんな先輩のこと狙ってはいるけどさ!」
ん?
なんかそれはそれで私みんなにけなされてない?
え?けなされてる訳じゃない?これも愛?あ、そう。
「ねぇ!!先輩も俺と帰りたいよね!?」
「!!昔からのよしみだ、俺と一緒に帰ろう」
「!この後仕事押してるんだぜ?さっさと事務所行こうぜ!」
三人娘によしよしとばかりに慰められていると全ての元凶である三人がずずずいっばかりに私の前に立ちはだかる。
跡部はいまだ復活していないようだ。
「俺だよね!?」
「いや、俺だろう?」
「俺だよな??」
「だから俺なんだってば!」
「いい加減にしろ、越前、不二!」
「手塚さんこそ職権乱用だ!」
「あーーーーーーもーーーーーーいい加減にしてぇーーーーーー!!!!」
「いい加減にするのはアナタですよ、」
ガツンととても素敵な音とともに私の頭に痛みが走る。
なに?敵襲?とどこか勘違いしながら頭をあげると目の前には
「あれ?観月サン?」
「よーく、寝てましたね。もう日付変わる直前ですよ?」
そう言って自分の腕時計を差し出してくれた観月さんの時計を食い入るように見てみると確かに針は23時45分あたりをさしている。
「あれ?私学校から帰る途中だったんだけど…?」
「何を言ってるんです?」
「あれあれ?手塚パパとか裕太とかリョーマとか、あとなんか一匹いたような」
「本当に起きてますか?手塚君も裕太君も越前君も今日はお休みですよ、日曜日ですからね」
つまり。
全部夢だったってこと?
そういや、前にジロちゃんがなんか言ってたっけ?
『っち、知ってる?夢って大半がその人の願望なんだよ〜』