「おっせーよ、」
「あー!ごめんね、がっくん!すんごい待たせちゃった?」
久しぶりに休みが取れそうだ、と彼に空いた時間に電話をかけると彼はとても嬉しそうな弾んだ声で、なら遊園地に行こうぜと提案してきた。
断る理由も見つからないしなにより私自身彼に会いたかったから、即効でイエスの返事を返した。
詳しくはまたメール送るよと言われ、ちょうど私もスミレちゃんに呼ばれたのでそこで電話を切った。
詳細メールが送られてきたのは報告書に追われていた深夜のことだった。
頑張れよ、と一言添えて。
「本当にごめん!コウガちゃんに叩き起こされなかったらもっと遅くなってた!本当にごめんなさい!」
「いいって、気にすんな!待ってたっても俺だって時間少し遅れてきたからそんなに待ってねぇんだよ」
「でもゴメン!」
「いいって!昨日も遅かったんだろ?」
待ち合わせの時間に20分も遅れてやってきた私をがっくんは笑って許してくれる。
折角の、それこそ一ヶ月ぶりのお休みだっていうのに、ダッシュで駆け込んできた私の手を取りそのまま歩き出したがっくんは許してくれる。
彼は怒らない。
普段とても子供っぽい人だから最初こそ癇癪起こすんだろうと思っていた。
その期待は裏切られ彼が私に対して怒ったのは、唯一つ、風邪をひいていたのに仕事にでてぶっ倒れた時だけだ。
がっくんの学校の事件を解決する際、私が彼の目の前から消えてしまったことで彼はいかに私たちの仕事が危険でそれでいて大変なものなのかを理解したらしい。
もしかしたらジロちゃんからも聞いてるのかもしれない。
普通の高校生の恋人同士と違ってまるで社会人の恋人同士のように、もしかしたらそれよりもひどいのかもしれないけど、二人一緒にいる時間は皆無に近い。
仕事に追われる私の姿ははたから見れば恋人をないがしろにする女に見えるのかもしれない。
いつだったかがっくんが私にごめんなと謝ってきたことがあった。
謝られることなんてないよ、寧ろ私の方が謝りたいことたくさんあるのにと返せば、俺ってばの傍にいるしかできないと沈んだ声で彼は返してきた。
力がないから守ってやれない、手伝ってやれないと。
そんなことないのに、と心のそこから思った。
「寧ろがっくんの方こそ嫌じゃない?仕事ばっかで、私なんか一緒にいることがあんまりできないのに」
「そんなことないぜ!俺、お前が頑張ってる姿知ってるし!仕事のことは、ちゃんとわかってるんだ」
「でも、たまには怒ってくれたりしてもいいのに!がっくんに私こそ負担かけてるんだから!」
そう言った私にあのとき、がっくんはそれだけはできないと私の顔を見つめながら言ってくれた。
「お前がちゃんといてくれればそれだけでいい、それだけで嬉しくなれる」
私が目の前からいなくなってしまうのを一度目の前で見てしまったからこそ、感じれる幸せなんだと言う。
鼻の奥がツーンとなった。
「ジロちゃんの報告書書きの手伝いしてたら終電間近になっててさ」
「ジロー、本当どうしようもねぇなぁ。今度会ったら言っとくかぁ?」
「聞くかなぁ」
「―――きかねぇだろうな、アイツ」
俺はお前やジローみたいに強くないからさ、いざって時守ってやれねぇのが悔しい
「そういえば滝君、元気にしてる?」
「おう、元気元気!この間なんかさ、陰険な数学教師に向かって嫌味連発しまくってんだぜアイツ」
そんなことないよ。貴方の方がよっぽど強くて、そして大きい人。
私なんか足元にも及ばないの。
今、私の手を握ってくれてる貴方がいい。
どうかこれから先も傍にいて。