「ジロちゃーん」
「ん〜…なぁにぃ?」
お仕事がなくて机の上に頭を乗っけてお昼寝をしていたらがペチペチと俺の頭を叩く。
せっかく気持ちよく寝てたのに、と多分起こしたのが他の人だったら怒ってたけどだったから怒らない。
頑張って眠くて眠くて重いまぶたをおしあげて、横に立ってるのほうに顔を向けると
――ピロリーン
なんて音が聞こえてきた。
俺の目の前に突き出されているのはの新しい携帯。
さっきの音はどうやら俺の写真を撮った音みたい。
「へへーん、ジロちゃんの写真ゲットー」
「っち、急に何なのー?俺絶対今のすんごい変な顔してた!撮りなおして!!」
だって口もポカンって微妙にあいてたし、目も絶対にしょぼしょぼしてたんだ。
なのにってばヤダとか言って携帯を体の後ろに隠してしまう。
「なんだよー!俺の許可なく写真撮ったくせに!」
「だめだめだめー!何撮ろうがいいでしょー欲しいのはジロちゃんの写真なんだから」
「えー…だって俺ってば左斜め上30度が一番かっこかわいいんだよ!?もう一回!ね!?」
「やー。これでいいんです〜」
そういうとはヒラヒラと手を振ってそのままスキップしそうな勢いで乾くんの名前を呼びながら向こうに行ってしまう。
なんだよなんだよってぶーっと頬を膨らませてみるけど、はこっちを振り返ることなくそのまま乾と執務室を出て行ってしまった。
納得いかないのは俺だ!
いきなり写真は撮られるわ、しかもその写真は俺的にチョーぶさいく!
が新しく写真を撮ってくれないならココは一つ、あのデータを消すのみ!
そう決意した俺は真夜中真っ只中の今、夢魔の体にうつりかわってふよふよとの家に向かって夜のお散歩中。
色んな人の家の上を飛んでいると、色んな人の夢が俺の目に入ってくる。
すんごく楽しそうな夢、嬉しそうな夢、幸せそうな夢、なんだか追い込まれてる夢、悲しそうな夢。
人の数だけ夢もたくさんある。
いつもならマイナスの夢を見てる人のところにいって、幸せな夢に変えてあげたり夢魔のお仕事をするんだけど今日はちょっとだけお休み。
まずはの部屋一直線!
もう少しでの家ってところで、の部屋の近くに白いもやもやとしたものが浮かんでるのが目に入ってくる。
あれはの夢。
んできっとその近くにある白いもやもやは榊せんせーの夢。
夢だってプライベートだもの、滅多な事がない限り俺は人の夢の中をのぞかない。
ましてやとかせんせーとか知ってる人の夢は絶対に。
だからそのの白いもやもやの横をすーっと通り抜けての部屋の中にお邪魔しようとした瞬間、俺の腕をぎゅっと掴んできたものがいたのに本当に驚いた。
なになになに!?と軽くドキドキしながら振り向けば、真っ白いもやもやの中にいるはずの
「っち?」
「えへへ、ジロちゃんだ」
の姿。
の夢の中覗いてないのに何で!?と頭の上にクエスチョンマークを浮かべているとはそのまま俺の腕をぐいぐい引っ張って自分の夢の、白いもやもやの中に俺を連れて行こうとする。
うおー俺はあの携帯のデータを消すっていう使命があるんだーって頑張っての腕をはがそうとしたんだけど、のあの馬鹿力に誰が勝てるんだって話だよね。
夢の中でも怪力なんだからさ。
「っちってばごーいん〜」
「何が強引なの?これは夢だもん、なんでもありだよー」
そういうと本当にぐいっと俺の腕を引っ張って俺はボスンなんて音をたてての夢の世界へ。
「たまには忍足の言う事聞いてみるもんだな〜本当になっちゃった!」
「おったり?、忍足に何言われたの?」
本当になったって何のことだろうって思ってなんだか嬉しそうなに尋ねると
「忍足がね、枕の下に見たい人の写真をいれるとその人の夢が見れるんだよって言ってたの。忍足のいうことだから信用してなかったんだけど、手塚パパが確かにそんな呪術が昔あったななんて言うから試してみたの」
「試した?」
「そう!昼間に携帯でジロちゃんの写真撮ったでしょ?あれ、乾さんに頼んで写真打ち出してもらったの」
そういって俺に向かってピースサインしてくる。
つまり
「俺の写真、枕の下にいれてんの?」
そういうこと?
やられた!!!