好敵手が大切な人ってどうよ。
俺は自分に心底いってやりたいね、どうしようもないことだけど。

男と女の友情は紙一重のものだと姉貴が愚痴っていた。
けれどその紙はしばしば先の見えないほど分厚い紙にもなるのだとも。
姉貴の言うことが理解できなかった当時中学二年生だった俺は、その話を忘れかけたちょうど4年後にそれを理解した。
理解せざるをえなくなったのだ。

自分の目の前に突然現れたアイツは俺の中に土足で入りこみ俺の大切なものだけを鷲掴みにして挨拶もなく出て行った。
最初はただの憧れだった。
いつから憧れの眼差しでアイツを見れなくなったのか。
多分幸村部長がアイツの頬にキスをしたときじゃなかったか。
幸村部長はきっといつもの延長のようなつもりで、アイツもいつもされていることのつもりで。
二人にしてみればそれだけだったのかもしれない。
けれどその光景が確実に俺の中に波紋を投じた、小さな小さな波紋を。
それはいつしかとても大きなものになり。
いつしか友情という枠だけでは満足いかないものになっていた。

「赤也?ぼーっとしてどうかした?」

飛んでいた思考を元に戻しハッと我に返ると目の前にはアイツの顔。
突っ立ってた俺の顔を覗き込むように身体を折り曲げている。
以前の俺だったら何もない距離。
けれど今の俺には、身体のどこかが熱くなるようなそんな距離。
俺ってばまじ重症だ。

「なんもねぇよ。買うもん、決まったのか?」
「これなんかどう思う?アンティークの小箱、外も中も観月サン好みだし」
「俺はその観月さんって人がどんな趣味してるとかわかんねぇから何も言えねぇよ。でもが選んだってんなら喜ぶんじゃねぇの?」

俺だったらなんでも大歓迎だぜとは心の中だけで。
こうやって買い物に誘ってくれたりするのは嬉しい(たとえそれが男へのプレゼント選びだとしても、だ)
アイツの周りにはそれこそ別世界のような王子様たちがたくさんいるけれど、こればっかりは俺も負けられない。

「誕生日プレゼントだからしっかり選びたいんだけどなぁ。うん、でもコレ気に入ったからコレにする」

会計行ってくるから外で待ってて、と残しレジの方へ走っていく。
その後姿を横目で見ながら俺は東京でいつもアイツの周りにいる連中の顔を思い出す。
悔しいけれど今の俺じゃまだまだ勝てない人が何人もいる。
だけど俺はいつか必ずアイツの横に立ってみせる、アイツの横で同じ道を歩いてみせる。

「おまたせ〜!昼ごはん食べにいこーぜー、すんごいお腹すいちゃった!」

今の君は遥か彼方にいるけれど。
俺は君のところにまで辿り着いてみせる。






その時は、覚悟しろよな?