ゼノとようやく顔を付き合わせたとき、あいつが私の顔を見て言った言葉は




「3日も部屋に閉じこもって仲睦まじいな、若い若い」




へぇへぇへぇへぇへぇ・・・・私はどうやら3日もシルバにヒィヒィ言わされていたらしいことが判明した。
風呂に入るかといってピー(放送禁止)服を着替えようとしてピー(放送禁止)食事といったらピー(放送禁止)なにをするにしてもピーピーピーピー、効果音が非常にうるさい。

「ふざけるなよ、ゼノ・・・ゲホッ、若いってお前と私はそうたいして歳が変わらないだろうが!!ゲホゲホッ・・・」
「おぉおぉ、声がガラガラじゃねえか。ま、これでゾルディック家も安泰だろ」
「安心しろよ親父、コイツなら丈夫だしガキもボコボコ産めるぞ。それに相性もばっち」
死にさらせぇこの絶倫未成年野郎がぁぁぁ!!!

シルバの肩に担ぎ上げられたままの状態でゴンッと思い切り頭突きを食らわしてやる、自慢じゃないけれど石頭っぷりは誰にも負けない。
なにせビル20階から落ちても無傷な女だ、寧ろシルバの脳みそにこそ被害はあらわれる。

「・・・っく!なにをする!お前が動けんというからわざわざこうして運んでやってるんだぞ」
「誰のせいで動けないと思ってんのさ、信じられない本当に信じられない!ゼノ、あんた自分の息子に今まで何教えてきたってのよ!」
「殺し方と家の継ぎ方だけだが?子作りの方法はオレは教えてないからな」
「んなもの教えててたまるか!もうちょっと常識と節度と限度ってのを教えなさいよ、まじで死ぬかと思った、今でもあそこと腰と気分が死にそうなほどヤバイのに・・・・」
「ふーん、そんなにシルバは良かったか?」
「ああ、勿論だ」
お前がさも当然とばかりに答えるな、この絶倫野郎ッ!!

これが他人を交えた親子の会話というものだろうか、やはりこの家に常識っていうのは存在しないらしい。
だいたい息子が父親とそう歳の変わらない女を部屋に連れ込んで3日も出てこなかったんだぞ、少しは女を心配して様子でも見に来いってんだ。

「それで、孫はいつだ?」
「ガキはとりあえず家を継いでからだ、まずはこいつの人民登録を作って籍をいれる」

おいおいおい、そこで勝手に話を進めるんじゃないよ、まだ嫁になるとか言ってないっての。
孫とかありえないんですけど、なにそれ、私が産むこと前提ですか。
原作どおりいくと猫とオタクと猫っぽいのとわけわからないのとショートカット貞子が私の腹から産まれるんですけど。
それともなんですか、遺伝子が変わるから原作とはかすりもしないゾルディック五兄弟が産まれるんですか。

「丁重にお断りします」
「式はあげんのか?結婚式は女の夢だとかかみさんも言っておったぞ?」
「こいつに女の夢云々があると思うか?」
「ないな、オレが間違えていた。なら籍だけ早々にいれんとな、人民登録の方はオレに任せておけ。ゲット祝いだ」
「綺麗に無視してくれてどうもありがとう、そして勝手にゲットさせないでください。なにこの親子なにこの親子!ムクロォォォ!!!いい加減パトロールから帰ってこんかぁぁぁい!!」

シルバの肩の上からようやく降ろされたと思えばシルバの膝の上だ。
そんな私たちを見てゼノがひょひょひょと笑い出してそれが私のイライラを増長させる、なんだその顔は、なんだそのザマァミロみたいな顔は!!
シルバも自分の父親の目の前で恥ずかしがることもしないで私を抱きこんだまま勝手に人の嫁入り話を進めていく。

「ああ、ムクロから伝言だ。『よくやった、!これで晴れてキキョウはオレと飛影のものだ、安心して嫁に行けよ』だとよ。なんだ、お前の娘はムクロのとこに行ったのか。つまりなんだ、オレは自分とさして歳の変わらないやつをガキにせずには済んだってわけか」
「おお、シルバ!一気に問題解決じゃ!の娘に何と呼んでもらうか、お前の積年の悩みだったものな」
「ああ、9歳からの悩みだった」
ばっかじゃないんですか、お前ら。だいたいムクロさん、うちのキキョウをどうやって連れ去ったんだ!!あの子は私の大事な娘だっつの!!」
「ムクロから手紙も預かっているぞ、お前の娘とやらからのだそうだ。受け取れ」

そういってスッと脇から白い封筒を渡される。
なにかものすごく嫌な予感がこの封筒からプンプンする。












愛するお母様へ


お母様とお別れしてから2週間近く経ちましたがご機嫌いかが?
ムクロからお聞きしました、私がお母様のもとを去ってから男といちゃいちゃうふんしていたそうで。
しかもその男と結婚なさるそうですね、キキョウには相手の方を今まで一度も紹介してくれたことはないというのに。
聞くところによると相手の方とは10年も前からのお付き合いだとか、なのに一度も教えてもくれなかったのですね。
キキョウは自分がお母様の娘だと思っておりましたのに、お母様にとってはそうではなかったのでしょうか。
とっても腹が煮えくりかえって仕方ありません。
お母様のご結婚を一緒に喜びおめでとうと一言いってさしあげたいのですが、今お母様にお会いすると目ん玉ほじくりかえしてはりつけにしてブスブス釘やらなにやらで刺しまくって最後に首をチョンとしてしまいそうなのでお会いすることができません。
キキョウのお父様となる方にもお会いしたかったのですが、やはりそうなると必然的にお母様をぎちょんぎちょんのメタメタにしてしまいそうですので我慢いたします。
どうかキキョウの気持ちが落ち着いた頃に、キキョウのことをまだ娘だと思って下さっているのならお父様となった方との家に呼んでくださいませ。
それまでキキョウは王子様探しの旅(どこかで鬱憤をはらす旅とも申します)にムクロと出かけることにいたします。
ムクロにとっても素敵な殿方を紹介していただいたのです、彼こそキキョウの王子様だと信じてやみませんわ!!
その方はムクロのいる世界にいるそうなのでキキョウもしばらくムクロのところにご厄介になることにします。
勿論携帯電話もなにも通じませんので、ホームコードにうんざりするほどアクセスするのはおやめになってくださいね。
キキョウの王子様の写真を同封しておきます、ご覧になって。
それではお母様、ごきげんよう。
いつかほとぼりが冷めた頃、お会いしましょうね。

あなたの娘   キキョウ












NOォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!

ムクロさん、キキョウに嘘しか教えてねぇ!!
シルバと10年前からお付き合いしてるって10年前つったらコイツ9歳だよ、私まじで犯罪者だよ、ロリコンもショタもいいとこだよ!
だいたい付き合ってないっつの、ストーカーされて困ってたんだっつの!

「全部声にでとるぞ、
「ダメだ親父、こいつ全く聞いてない。しかし失礼なやつだ、オレがストーカーだと?純粋に追い掛け回していただけだぞ」

シルバといちゃいちゃうふんだぁ!?違うわい、『ヒィヒィ死ぬぅ〜ギャー』ばっかりじゃコノヤロー!

「最初のうちだけな、最後は結局アンアン言ってオレに足を絡めてたくらいだぞ。聞いて驚け親父、こいつ実は処女だったぞ」
「は?この歳でか?」
「あれだけホスト通いもしていたのにセックスはしたことなかったみたいだ。それであれだけの感度か、やっぱりこいつで正解だったな」

したくて『いちゃいちゃうふん』も『ヒィヒィ死ぬぅ』もやってたわけじゃない、目が覚めたらシルバの部屋だったんだ。
不可抗力もいいところだ、だいたいそれだってムクロさんがよりにもよってシルバに助けなんて求めるからであって黒幕は完全にムクロさんじゃんか。
しかもなんかムクロさん、さりげなくキキョウに私がさぞやワルモノのように説明してないか?
この手紙からなんかとてつもない恨みつらみを感じるんですけど気のせいですか!?
しかも誰だ、キキョウの王子様って!シルバじゃないのか!?シルバだろ!?なんで魔界にシルバがいるんだよ!!

「ん?おい、。なにか落ちたぞ・・・・って写真か、これ」
「キキョウの王子様!!どこのどいつじゃこんちくしょうが!ぶっつぶす!ぶっ殺す!まだまだ嫁には行かせませーん!!」

ヒラヒラと封筒からおちた一枚の写真をシルバがうまくキャッチして私の前にかざした。
どうやらそれが手紙にあったキキョウの王子様らしいが、一体どこのどいつだというのだ。
シルバのやつも興味津々とばかりに写真をのぞきこんでいる、それはいいけれど人の肩に顎を乗せるな顎を。
シルバの低くてサイコーな声が耳元から聞こえてきて(しかも吐息つき)まじで腰にくる。
ゼノの野郎もどれどれとか言いながら向こうのソファから立ちあがってひょっこりと写真をのぞきこんでいる。

「こいつはまた・・・なかなか強烈な・・・・」
「ほうほうほぉー・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ムクロォォォォォ!!死んだ人間、いや、妖怪を生きてる人間に紹介するんじゃなーーーーいッ!!」

写真にうつっている男は私の記憶が確かならば確実にあの世の人間だ。
そう、確かにキキョウの好みにばっちり当てはまるといえば当てはまるけれどあの世の人間だ。
額に大きなバンダナ、大きくて長い耳、薄い金色に輝く長い髪。
俗称を『闘神』、元魔界三大妖怪の一人。

「キキョーーーーーーーーーーーーーーーーウ!!正気にかえれーお前は騙されているぅ!お前の王子様雷禅はとっくの昔に餓死しとるわぁぁぁ!!













キキョウちゃん、カムバァーーーーーーーーーック!!!












ククルーマウンテンの頂上から麓の町にまで聞こえてくるどことなく悲壮感漂う絶叫がその日は響き渡っていた。