仕事を除いてあまり人付き合いのよろしくない私にも友人くらいはいる。
アレを友人といってもいいのか、私にはかなーり判断がつけにくくて仕方ないが人から見れば充分に『友人』の枠にはいる、らしい。
まぁミツヒデさんに言わせてみればただの『類友』だ。

アレとは切っても切れない糸で結びついてるんじゃないかとイライラさせてくれるほど高確率で出会う。
例えばデパートの展示場、例えば博物館、例えば・・・・ジャポンにある裏高級ホストクラブ
特にジャポンのホストクラブでは非常に会う確立が高い、とにかく高い。
デパートや博物館でも珍しい宝石やらが展示されるという話が流れると必ず展示期間中にアレと遭遇する。

かくいうアレとの出会いも偏狭の国の博物館だったのだから。












キキョウと流星街を旅立って1年ほどしたころだったか、アイジエン大陸にある小さな国の博物館でその国秘蔵のビッグジュエルが半日だけ展示されるという話をミッチーから聞き、その国から太平洋も真っ青なほどかけ離れた場所にいた私は移動を嫌がるキキョウをなんとか説き伏せ噂のビッグジュエルをひとめこの目で見てやろうと意気込んでいた。
どんなに小さな国といえども、国所有の秘蔵ジュエル、きっとよだれモノに違いない。
公開されるのは300年ぶりだというのだから見に行かずしてどうする!?って話じゃないか。
キキョウに誕生日プレゼントに盗ってこようか?と尋ねられたけれど、後味が悪くなるのは嫌だしなんだか面倒なことになりそうな予感がしたので丁重にお断りしておいた。
まああの時キキョウにうんと頷いていたら、私の類友らしいアレはビッグジュエルが見れなかったといって地獄の果てまで追いかけて来たに違いないのだから断って正解だ。
たいしたデパートもなくショッピングらしいショッピングができないと怒っていたキキョウ(でもまだ11歳)をとりあえずその国一番のホテルのスイートに押し込んで、私はウキウキとそのビッグジュエルが展示されているという博物館に足を進めた。
誰も見たことがない、タイに眠っていると噂のザ・ゴールデン・ジュビリーみたいな超ビッグダイアモンドかしら〜とか、まぁ別にイギリスのコ・イ・ヌールくらいのサイズでも構わないし〜とか、なにもダイアモンドじゃなくてもデ・ロング・スタールビーみたいな超級のルビーでもかまわないわ〜とか、延々と一人楽しく妄想を頭の上で繰り広げながら博物館へと向かう足取りは非常に軽かった。
半日だけしか展示されないというからかなりの人が見物に来てるだろうと踏んでいたのに博物館を訪れている人は少なく、なんで?と頭の上にクエスチョンマークを浮かべつつも好都合好都合とばかりに展示されているというコーナーまで早足で向かう。
さすがに博物館の中にそれほど人がいないとはいえ、そのコーナーにはそれでも結構な人数が集まっており、それをかきわけかきわけ、やっとこさビッグジュエルが飾られているケースに辿りつくと私はひと目視界にいれるなり胸がきゅんと高鳴った。
目の前でキラキラと光り輝いているのはオレンジとピンクのちょうど間のような不思議な色合いをもったパパラチャ。
あの大きさとカット数からみて日本円で億はくだらないなと頭の中でパチパチとそろばんをはじきながら(ちなみにそろばんを触った事はあるけれど理解した事はない)思わずもっと見たいとばかりにケースにベタリとへばりついた。
不思議な色合いの唯一固有名詞をもつサファイア、パパラチャを目の前でみることができるとは、しかも超ド級サイズで、現実世界にいたら絶対にありえないことだ。
思わず笑いが腹の底からこみ上げてくるが、必死で我慢。
おかげで他の人から見たら頬がピクピクと持ち上がったりさがったり持ち上がったりさがったりとかなり奇妙な人間に私はみえたことだろう。

「「あー・・・私(あたし)にピッタリなのに・・・」」

思わずため息とともについてでた言葉に誰かの言葉がぴったり重なった事に気付き顔をあげる。
向こうも同じ言葉をこれまた絶妙なタイミングで言われるとは思わなかったらしく、顔をあげる気配がする。

「「あ」」

お互いにまさかべったりと展示ケースに張り付いているとは思わず、ビッグジュエルが燦々と輝くケースを挟んで類友のアレと私は出会った。


ビスケット=クルーガー、通称ビスケ、自称ビスケちゃま。


私同様、ヒカリモノと若くて体つきのいい男が大好きな(こいつの場合、男が好きなのか身体が好きなのか非常に判断が難しいところだ)年齢詐欺女だ(ついでに外見詐欺)








あの時は、二人揃って同じ言葉を発して顔を見合わせただけで終わった。
たいして交わす言葉もなく、私自身も「あのビスケだ」と気付いていながらもビスケ<パパラチャと思い切り天秤が傾いていたので、言葉を交わす必要性が感じられなかったのだ。
けれど、奴とは必ず何か大きな宝石に展示が発表される度にデパートだの博物館だので遭遇し(それがどんなに辺鄙な場所だろうが見物するだけでも大金がかかろうがだ)狙ったようにいつも

「「私(あたし)にピッタリなのに」」

と言葉を重ねるのだ。
何回目の遭遇かは覚えてないけれど、ある日とうとう私たちは言葉を交わした。

「ちょいと、そこの子連れババア!平凡な顔してるくせになにいっちょまえに手ぇ出してんのさ!あたしのほうが似合ってるに決まってるわさ!!」
「ハァ!?詐欺するのは年齢だけにしておきなさいよ、この体格詐欺!ついでにぺったんこ!私の方が似合うに決まってるでしょーが!」

言うまでもなくその直後お互いの本気の拳が唸ったのは言うまでもない。
お互いに半端じゃないことはよくわかってるだけに、よくあの時無事に生きてたもんだと今じゃあ笑い話のたねになっている。
まあ、この話をお互い酒がはいってるときにすれば再び拳が唸るんだけど(ついでに半径500メートルほどで環境破壊だ)













言い忘れていたけれど、そのときの獲物はビッグジュエルじゃあなくジャポンの裏高級ホストクラブのナンバー2ホストだ。
驚いたことにお互いナンバー1には興味がまったくなく、ナンバー2ホストの常連さんだったってんだから私たちはまぁ確かに『類友』と言われてしまえば『類友』なのかもしれない。