「四大行は極めました、と思います。思いたいです、多分」
「・・・・あほか?」
子育て傍ら念の修行をはじめて早○日、自分でもふざけてると思いつつ本気でミツヒデさんに伝えてみた。
案の定ミツヒデさんは盛大に顔をひきつらせそれはもう私を馬鹿にしてるのかって感じで見つめてきた。
「いえ、まじかと思われます。ていうかもういいんじゃない?」
「・・・飽きたんだろ?」
個人的に非常に自分は頑張った。
一日一日テスト前の必死さで頑張った、人間の集中力はせいぜいもって40分、恐らく私の集中力もその頑張ったと言い張る一日の中じゃあほんの少しに違いない。
それでもだ、今までから考えられないほど頑張ったのだ。
自分にブラボーハラショーと言ってやりたい。
しかしながら一緒に暮らし始めて早○日(念の修行日数と一緒だ)ミツヒデさんはとうの昔に私という人間がどういう人間かを見抜いていたらしい。
「エスパー?それともそれがミツヒデさんの念能力ですか!?」
「あほか!正直に言ってみろ、念の修行に飽きたんだろ?え?」
「・・・・エヘ」
可愛くキラリンと笑ってみせたけれどミツヒデさんには通用しなかった、ヤツはどっちかっていうとムチムチボインが好きらしい。
私みたいな清純派はお気に召さないのだろう、ということにしておこう。
「お前ナァ、自分から教えてくれって言っておきながらもう飽きたのか!」
「だってつまんない、面倒くさい!私ね、自慢じゃないけど熱しやすく冷めやすい性格なの!!」
「本当に自慢にならねぇな、この野郎!」
ゴツンとミツヒデさんのげんこつが頭におちる。
げんこつだなんて元の世界でされたこともなけりゃしたこともない、だって今の世の中人様の子供に拳骨を食らわせる雷親父とやらはいなくなってしまったのだ。
かといって自分の親にもげんこつはない、されたことがあるのは平手と蹴りと物干し竿でぶったたかれたことくらいだ。
ちなみに物干し竿はなかなかに痛い、背中に青あざが今も残っている。
メモリーズ5年間、5年も青あざを残すとは物干し竿(ただしその事件により半分に折れた)もなかなか侮れない。
おっと、話がそれた。
「だってね!集中しろとか言われてもキキョウちゃんが気になって気になって気になって」
「ダァ!」
「あはん、キキョウちゃーん。ママよぉ、相変わらずプリティねー!君なら世界アイドル大会とかあったら優勝よぉ」
「んなもんねぇ、ついでにキキョウのせいにするな。集中力云々じゃなくて修行するのが面倒なんだろ?」
「そんなことないよー」
やだなぁミツヒデさん。
そういってアハハと笑ってみせる。
「ふっ、意地を張るのはやめろよ。面倒なんだろ?つまんねぇんだろ?」
「まあそうともいうかもしれない」
「そうとしか言いようがねえんだよ!!どうするんだよ、お前この先キキョウ抱えて二人でフラフラ生きてくつもりか!?言葉もまだ日本語しか喋れねえだろうが!」
ミツヒデさんの中ではミツヒデさんの家に私たちが『永遠に住み込む』という選択肢をとうの昔に削除してしまっているらしい。
ちなみに私の中ではその選択肢、まだまだ有効だ。
「ん、もうねいいの。とりあえず四大行はのんびりボチボチいくことにしたの、いっきにドーンと発でもかましてしまえりゃそれでいいと思うの」
「普通はできねえんだよ、お前の脳みそはカランカランか!?何回説明すりゃわかるんだ、基礎の基礎ができてねえ人間に発みたいな応用技がどーんとかませるか!」
ミツヒデさんのいう事はもっともだ。
確か原作でもゴンたちが発を習得したのはかなーり後半だった気がする。
あわよくばこのまま四大行とやらの基礎修行を抜け出してさっさと応用の修行にはいっちまえという私の思惑はミツヒデさんにより粉々に砕けようとしている。
「意外とどーんとできるかもしれないじゃない!ようは自分の不足分を念で補ってしまえればいいのよ、どうせ私なんてイレギュラーな存在なんだもの!なんか異様に体が頑丈通り越してダイアモンドみたいになってるのだってきっと神様のプレゼントにちがいないのよ」
「元の世界からこっちの世界に捨てられたのにか?」
「・・・・・・・なんて理不尽な世界なんだろう・・・・」
私はがっくりと項垂れた。
「お前ね、基礎ができてねえ人間がいきなり応用なんてやってみろ。自爆だぞ、自爆。それでもよけりゃオレは教えねえから誰かに聞いてでも一人でやれ、ただしいいか!?お前が死んだらキキョウは教会に預けるからな!?」
「なして!?もうキキョウはあなたの子供よ!?」
「気色悪い言葉遣いでその台詞を言うな!みろ、鳥肌がたっちまっただろ!?キキョウを拾ったのはお前だ、そしてオレはそのお前を拾ったんじゃなくて預かってるだけだ。預かりモンの持ち物まで面倒みるいわれなんぞねえ」
ミツヒデさんのその台詞に私は盛大にショックを受けると、なんてひどい人なんだミツヒデ緑○光ボイスのくせしてなんて非道キャラなんだああそもそも声と顔があってない声にあわすならせいぜいキャルルンボーイだろ私のヒイロ=ユイよどこへいった・・・とりあえず思いついたことを口からゲロゲロゲロゲロと吐き出しながら彼に背中を向け私はとぼとぼと外へ歩き出した。
、愛娘ヲ人質ニトラレ(?)ミツヒデニ惨敗ス。
その一週間後、私はミツヒデさんの前にもう一度姿を現した。
「今度こそ極めました(ということにしました)」
「今なにか含んだだろ?」
「なんのことでしょう?ていうかね、聞いて驚け!オーラがすんごい量です、ワオ!私サイコー!」
ゴツンとミツヒデさんのげんこつがまたもやふりおろされた。
「なぜにそんなにゴツゴツ叩くわけ!?私のシナプスだかなんだかが破壊されていくじゃない!」
「お前が一週間姿をくらましていたお陰でオレがキキョウの面倒見てたんだぞ!?まずはありがとうくらい言え!」
「ありがとう」
「おっそいんだよこの馬鹿女!しかもなんだそのありえねえオーラの量は、一週間どこで何をしてきたんだ!!」
なんだか涙目になっているミツヒデさんの腕の中で一週間ぶりにみたキキョウは輝かんばかりの笑顔を私に向け必死に手を伸ばしている。
なんだかんだでいいパパやってるじゃないか、ミッチー。
心の中でぐっと親指をつきたててから、私はこの一週間ひたすら妄想、いや瞑想に励んでいたらなんだかいつのまにかオーラがひっきりなしにあふれ出てきてしまった事を説明した。
「馬鹿!オーラってのは生命エネルギーだぞ、垂れ流しのままにしてたらいつか底をついて死んじまうんだぞ?お前今ダーダーに垂れ流してるだろ、さっさと止めちまえ!」
「いやそれがね、止める事もできるんだけどどうやら底なしっぽくてさァ。止めてたらこうなんつうかムズムズするの、なんつうのほらかゆいのを我慢してるとだんだんと体がぷるぷるしてくる感じ?」
「全然わからん!」
絶の状態になれと言われたらなれる、自信をもって絶の状態にすることができる。
けれど体の中にどんどんと水かなにかが溜まっていくような感じがして気持ち悪くなりすぐに纏か練の状態になってしまうのだ。
ようは不必要なほどオーラがあふれ出てきてしまっている、らしい。
「どうしましょこれ、とっても気持ち悪いのーうわーん!」
「・・・・どうしましょうってお前・・・ったく、お前自分が何系統なのかはわかってるのか?」
「具現化系でーす、水の中からひょっこりとニンテン○ーDSが現れました。でも最初から水につかってるから全然遊べないの、つまんない」
「・・・ちょっとまて、お前何を使って水見式をやったんだ?」
ミツヒデさんは眉を思い切りひそめ眉間を自分の指でぐりぐりと押さえながら私にたずねた。
もはや私の顔を見る気にもならないらしい、なかなかにひどい男だ。
「落ちてたドラム缶」
「流星街じゃドラム缶は必須アイテムだから落ちてたって言わねえ、そりゃ他人のを勝手に拝借したんだ」
「とりあえずもう水もはってあったからさ、使っていいかナァって。水っていうかお湯に近かったけど」
「そりゃ他所様の風呂だろうが!!」
いちいち細かいことうるさいんだミツヒデという男は。
ドラム缶で水見式をやろうがコップで水見式をやろうが滝にむかって水見式をやろうが一緒だろうが。
ようはドバーと水があふれでるか水が水じゃなくなるか色が変わったりしちゃうだとかそんなもんだ、私の場合たまたまニン○ンドーDSがひょこっり現れたってだけだ。
「もういい、そのにんてんどうほにゃららっていうのがなにかはわからんがどうせくだらないものなんだろう聞くまでもねえ。とりあえずだ、お前の系統がなにかわかってるんだったら話は早い」
「ん?」
「お前、その有り余ってる見るからに鬱陶しいオーラを発にもっていっちまえ。自分のオーラを使って何かを具現化するもよし、どうせ変化系よりなんだろうから少し変化系にちなんだ発を考えるもよし」
そういってミツヒデさんはびしっと私の鼻先に指先をつきつけた。
この野郎、人に指をつきつけるとはなんて行儀が悪いんだ。
「具現化したモノが更にお前のその爆発的なオーラを使えるものでもいいかもしれねえな、もしくはそのオーラの量に見合ったなにかを具現化してしまうかだ」
「ふーん、なるほど。・・・・ちなみにさぁ、なにがいいかな?」
直後自分のもんは自分で考えろこのアホ女!と盛大に怒鳴られた。
しかもげんこつ付きで。
百足の女王が私の前に現れるまであと数日。