このお話は拍手ログ(3/10〜4/10)のその後にあたります。
「お前たち、随分楽しそうね」
「あ、フェイ。ようやく終わったの?うわー、腕思い切りやられたねーあははは」
なにが楽しいのかわからないがシャルナークは見た目ボロボロになって自分達のもとに現れたフェイタンを見てほとんど表情を変えることなく笑い声をあげた。
他のメンバーもフェイタンに向かって何も言いやしなかったものの内心思ってることはシャルナークとたいして変わらない筈だ。
結局お前が楽しんじまったのかよ、と。
「お、シャル。今送っておいたからな」
「えー本当!?どれどれ・・・」
自身の携帯を触っていたフィンクスの声にシャルナークはあっさりフェイタンから顔を背けると自分のネコ型(!)携帯を取り出しそわそわとメールが受信されるのを待った。
少ししてメールを受信した音が鳴り響くとシズクやボノレノフがシャルナーク同様どこかソワソワしながら彼の携帯を覗き込んだ。
パチパチとボタンを操作してすぐに
「アハハハハハ!!!なにこれ!母さんまじでおかしいんじゃないのぉ!?」
「うわー、本当だ。草が動いてる」
「さすがお前らの母親だな」
三人そろって大爆笑。
シャルナークにいたっては送られてきたムービーに腹をかかえて笑い転げてしまっている。
そんな様子を少し離れたところで見ていたフェイタンはボノレノフの言葉に一瞬眉をひそめ、三人が何をしているのかフィンクスに視線を投げかけて問うた。
フェイタンがキメラアントの自称女王と遊んでいる間に交わしていた話の内容をフィンクスが伝えるとフェイタンは小馬鹿にしたように鼻でハッと笑う。
「ま、お前がおふくろのこと心配するわきゃないんだけどな」
「当たり前ね、アイツのこと心配する必要なんてこれぽちもないね。まあでもフィンクスが気になて仕方ないて言うならどうにかしてやることはできるよ」
「なに!?!?」
最後の方はそれはもう小さな声で呟くようにして言ったフェイタンの言葉にフィンクスはそれはもう大袈裟に反応をすると、彼に飛び掛るようにして「今すぐやれ!」と連呼した。
やぱりお前もマザコンね、と思い切り馬鹿にしながらフェイタンは面倒くさそうに自分の携帯を取り出した。
「なんだ、お前もおふくろの携帯にかけるつもりか?ムリムリ、全然繋がらないぜ?俺、3日前からずっとかけてるけどまったくもって繋がらねえからな」
「胸はて言うことじゃないね、マザコン野郎」
「なんだと!?」
「ちょとだまてるね、アイツの電話になんかかけないよ。かけるのはムクロね」
ようやく笑いが収まったのか、シャルナークたち3人が顔を寄せ合ってコソコソなにかしている二人のもとへやってき何をしているのかと尋ねるが二人ともそっちのけで答えなんてかえってきやしない。
仕方なく傍にいたカルトに尋ねてみるもののカルトもさぁとばかりに肩をすくめるだけ。
「お前ナァ、ムクロだっておふくろと一緒にいるんだから繋がるわけねーだろ。だいたいなんでおふくろの念のムクロが携帯なんて持ってるんだよ、おかしいだろうが」
「前にムクロに携帯をあげたね、それを自分の部下に改造させたとかで特別製になてるよ。特別製だからどこにいても必ず繋がるよ、ワタシ限定で」
なんでお前限定なんだ。
フェイタン以外全員が思ったが誰も口にはしなかった。
「ていうかフェイの携帯には母さんのアドレスは入ってないんじゃないの」
「一応はいてるよ、実験体のアドレスも。今まで一度もつかたことないだけね」
うわー意味なーい。
シズクの棒読みの声が瓦礫となりつつある元キメラアント女王の城のなかで響き渡った。
そんんでもってその頃の魔界といえば・・・
ジリリリリジリリリリジリリリリ
突然どこからともなくけたたましく鳴り出した機械音にその場にいたものは何人かを除いてビクビクと体を強張らせた。
といっても魔界の、しいては人間界の猛者たち、一瞬のことだったけれど。
そんな中一人優雅に自分のベッドに横になっていたムクロさんは枕元においていたらしい携帯を手を伸ばし取りディスプレイを見るやいなや嬉しそうに私に顔を向けてきた。
誰か知らんが早くでてやれよ、この女王様め。
「、フェイタンからだ」
「ヒィ!!なにあの子、なにあの子、ホンモノの母親差し置いてムクロさん優先!?」
私に向かってニヤリと笑いながら自身の携帯を見せつけているムクロさんにものすごーく、ものすごーく腹が立ったけれど、何かしようものなら倍返し、いやいや100倍返しだ。
女王様には手を出すな、私がムクロさんと出会ってから学んだ最初の教訓だ。
もう一つ、平和の為ならヒエイさんを有効活用しまくれという教訓もあるけれどそれはまた今度ということで。
「よしよし、一度も息子から電話もメールももらったことのないお前のためにオレがお前にも聞こえるように外部スピーカー使ってやる。せいぜいそこで悔しがれ」
「フェイもフェイだけどムクロさんもムクロさんじゃー!このサド!女王様!フェイタンは私の息子なんだからぁぁぁぁ!!」
カサカサと床をGのようにはいつくばってムクロさんが横になっているベッドに近づいて彼女の手の中の携帯に手を伸ばそうとするも、無残に足でゲシゲシと蹴られるわもう片方の手で頭を右から左へさらに右へと往復ビンタ頭バージョンのようにはたかれまくられる。
「うわっ、躯のやつ容赦ないんだけどよ・・・あれ、マジで平気なわけ!?」
「なかなかバイオレンスですな二人ですね、ものすごく仲が良さそうで飛影ってば嫉妬したりしないんですか?」
「しない。あの二人があの状態でいてくれる時が一番平穏なんだ・・・・
部屋の片隅から幽助くんや蔵馬サマとどことなく悲壮感漂うヒエイさんの会話が聞こえてくるけれど、彼らの会話よりもフェイタンからの電話のほうが大事なのだ。
うおおおおと気合をいれて腕を一生懸命のばすも指先ですら携帯に触れることはなく。
『ムクロ?電話に出るのちょと遅いネ』
「ああ、悪い。お前の母親がオレの電話を盗もうとしてくるものだからちょっとお仕置きをしていてな」
部屋の中に愛する息子、えーとその5だか6だかフェイタンの声が響いた。
「どうした?お前からの電話は二ヶ月ぶりだが?」
「ギャヒィ!ムクロさんちょっとあなた贅沢よ!?私かれこれ20年近く電話なんて貰ったことないさね!!」
『そこに解剖実験体いるね?ちょと実験体の声が五月蝿いよ、だまてるといいよ。用らしい用はないけどマザコンフィンクスと『誰がマザコンだー!つかお袋いたのか!?』フィンクス五月蝿い!!シズク、こいつ黙らせておいてほしいよドゴォッ!!そうそう、それでムクロ、実験体はどこにいるね?マザコンフィンクスが実験体に電話をかけても繋がらないてうるさいよ』
「心配するな、はオレの部屋で預かってる。まあそっちには当分帰れない可能性がかなり高いが、そのほうが世界のためにもいいだろう?」
『死ぬまでそちであずかてほしいね、私は。まあでもノブナガとフィンクスとシャルが五月蝿いだろうから30年後くらいを目処に連れてきてやてほしいよ』
なんかあっさり息子に捨てられたような気がするんですけど。
ああ、フィンクス。
お前だけだよ、私のことを心配してくれるのは(旅団の中でほぼ底辺なくらい立場は弱いけどな)
ああ、でもフェイタンフェイタン。
ああ、フェイタン。
「それでもフェイを愛してるわぁぁぁぁぁ」
『すごくイラとする騒音が聞こえてくる、もう電話きていいか?』
「フェーーーイ!母さんは頑張って君たちのもとに戻ってみせるよぅ、30年といわずすぐにでも!」
『かえてこなくていいよ』
「そんなフェイタンも愛してる!!!!」
そして電話は私の愛の叫びまっただなかで無常にもブチっと切られた。
残ったのは相変わらずゲシゲシと蹴りつけてくるムクロさんと、どことなく可哀相な子って視線で私をみつめてくる浦飯くんたち、そしてツーツーツーという機械音だけだった。