子供たちも大きくなって(大きくなりすぎて仰げば遠としみたいなやつもいるけれど、そのまた逆でおかんみたいな存在である私に身長ですら勝てなかった奴もいるけど)
ついでに孫まで大きくなって(なんであんな個性的な人間が自分の孫なのか今でもわからないけれど)

私もこのハンターハンターの世界におとされて、早いもので40年ちょいだ。

40年ちょい。










え?もうなんかおかしくない?なんか私もう嫌なんですけど。
なんでこんな殺伐とした世界に40年も普通に生きてきたのか本当にわかんないんですけど。
誰に文句言えばいいのかわからなくて結局ミッチーに延々と40年愚痴り続けて生きてきたけど、そのミッチーももう70過ぎたジジイもいいところで最近は昼寝の時間も以前に比べて格段に長くなってきた
流星街にあるミッチーが経営していた裏の仕事斡旋所と情報屋は信頼のおける人間に任せてあるからいいとしても、そのうち昼寝の最中にぽっくり逝ってしまうんじゃないかと少々不安だ。

念を習得した効果なのかそれとも私が本来の世界とは違う人間だからか、既に60歳手前のはずの私の姿はこの世界に捨てられたときとほとんど変わらない。
まぁビスケのような年齢詐欺なのもいればネテロみたいな人間詐欺みたいなのもいることだし(それにこの歳になってもお婆さんと呼ばれないのは幸せなことだ)まぁ私だって大丈夫でしょと勝手に自分に言い聞かせ生活している。
ああでも、キキョウに言わせれば自分の方が娘なのに母親よりも老けて見えるだなんて最悪だとかなんとか、あのキンキン鼓膜に響くソプラノ声で言ってったけか。
ただ、我が娘よ、一つ言わせてくれ。
いつも包帯でぐるぐる顔から体から全身巻いちゃってるから老けてる顔なんて誰も見えやしないよ、って。

話がそれた。

まぁ近況報告なんてどうせ聞く人なんていないからどうでもいいのだけど、この私のまあ言ってみれば伝記みたいな『バキメモ』もとうとうある意味終盤にかかってきたっていう話がしたかったのだ。
なんせ来年は1999年、原作スタートの年だ。
いやまぁ既に1998年の12月の終盤にさしかかってるのでばっちり原作は、いや主人公ゴンの話はスタートしているはずだ。
かくいう私は今まで40年一度もハンター試験を受けた事がなかったのだけれど、まあ原作だし傍観者になってエヘエヘするのもいいかなとはじめてハンター試験なるものに申し込んでみた。
40年の間に原作の内容を忘れちゃいかんと思って、今までコツコツと思い出したことを書き溜めてきたノートが今こそ役に立つときがやってきたのだ(その名もまんま『原作』。芸術みたいなタイトルでしょ?)
試験内容はばっちり、プレートナンバーまではほとんど覚えていないけれどそのへんは適当に試験の節目節目に確認していけばいいかなぁと楽観的だ。
なんせ1999年のハンター試験は初孫のハンターデビューで、その次の年は3番目の孫のハンターデビューだ。
傍で見ないでなんとする!って感じだよねと一人納得。
ムクロさんにでもちょちょいっと身体に乗り移ってもらえば見た目も思い切りかわることだし、孫達にばれることなく傍観できる。

ちなみにムクロさんっていうのは私の念能力の一つで、ビスケの魔法美容師のクッキィちゃんと同じ人間タイプの具現化された念だ。
いうまでもなく幽遊白書のムクロさんだ、焼け爛れた右半身が元に戻ればかなりの美少女だと思われるあのムクロさんだ。
断じてパイナップルのムクロじゃあない
まぁ彼女のお話はきっと『バキメモ』のどこかにあると思うから今回は割愛。

また話がそれた。

ミッチーっていう家族は天国に召される一歩手前だし、キキョウだけじゃなくて他の子供達もみんなひとり立ちしてしまったので暇になった私はここ何年もブラリ世界旅行をしている。
たまにパドキアのキキョウのおうちにお邪魔して、孫を愛でたり孫を愛でたり孫を愛でたりたまにキキョウも愛でたりしする(子供はいくつになっても可愛いものだ)
さらに時々ビスケと秘宝というか二人の目にかなったキラキラの宝石ちゃん探しをしたり(二人揃ってヒカリモノに目がない、それだけに獲物が一つだったときは地獄だ)それなりに楽しんで過ごしている。


そんな私の(どんな私だと一人つっこみ)携帯電話に、一本電話がかかってきた。
ディスプレイにうつる発信者は『公衆電話』、一体誰やねんと不思議に思いながらこの番号を知っているのはほんの限られた人間だけ(しかもその全てが特殊な人間ばかり)なので不安になることなく通話ボタンを押す。

「はいもし〜?どなたですかー?」
『・・・・・・・・・』
「だんまりかい!イタ電なら切るよー。あ、切る前に誰からこの番号手に入れ方吐け、誰でも知っていい番号じゃないんだからねー」
『・・・・・・ば、ばあちゃん?俺、キルア』

うわお、私の三番目の孫!え?ていうかハンター試験受けに行くんじゃないの?もうキキョウとミルキぶっ刺しちゃったあと?
聞きたいこと満載なんだけれども一応知らないことになってるし、ゾルディックの方からも連絡ははいってないから普通に、至って普通に話を促す。

「キルア?どうしちゃったの、公衆電話からなんて電話かけてきちゃって。いつもみたいに家の電話じゃないのね?」
『ばあちゃん・・・あの、その、おふくろか兄貴か、とにかく家のほうから何か聞いてる?』
「キキョウ?半年前にあのキンキン声を聴いたっきり聞いてないけど?おかげで鼓膜の調子が良くてね〜いやぁあの声と私も20年程付き合ってきたけどシルバってばそれ以上一緒にいるんだもんね、本当に感動しちゃうよ自分の娘の事ながらアッハッハ」
それ本当に感動してるの?

孫の冷たい声が受話器越しに耳にはいってくる。
でも本当にシルバには感動通り越して尊敬してるよ、キキョウのキンキン声だけならまだしも最近はヒスに磨きがかかってるらしいからさ(ゴトー談)
にしてもどうやら家のことを気にしているってことはもうキキョウとミルキに思い切りぶっ刺してきたってあとかとどんどんと原作の波に乗っていってることに変に感動する。
というかオドオドしたキルアは可愛い、電話越しでも可愛い、声だけでも可愛い。
ハンター試験会長では『家族を突き出す』って堂々とゴンに宣言してたけど、やっぱり怖いものは怖いのかねぇ。
というか突き出される家族の中に私もはいってたらそれはもうショックなんですけど

「お前の親父は本当に偉大だよ、私が保証する」
『別にしなくていいし。それにばあちゃんの方が(色んな意味で)偉大だよ』

お お お お !
孫に褒めてもらった!!なんか生き返るってこういうこと?みたいな?

「それでどうしたの、突然公衆電話から。(一応理由は知ってるけど)何かあったわけ?仕事でも失敗した?シルバにお仕置きでもされかけ?」
『・・・・・・聞いて驚かない?わめかない?騒がない?』
「あんた私のことなんだと思ってるわけ?」
『・・・・・・おふくろ達に連絡しないでくれる?そしたら理由言うし』

なんでテレビ電話つうもんがこの世界では普及していないんでしょ!
きっと今頃電話の向こうのキルアはすっごい可愛いこと間違いなし!なのに。

「うん、まあ(知ってるから言わないけど)キキョウたちに黙ってればいいのね?」
『約束してくれる?』
「いいよ、約束。破ったら一週間ゾルディックの家でメイドさんやってもいいよ」
それは遠慮しとく、多分喜ぶのおふくろだけだし。えーと、その・・・・』
「なんだなんだ、青少年!私今ロッククライミングの真っ最中だから早く用件言っておくれ。岩山のど真ん中で片手だけで自分の身体をプランプランさせてるのはちょっと正直辛いっていうか、なんか後ろでギャーギャー怪鳥も騒いでることだしさ」
ほんっとうにばあちゃん、どこで何してるわけ!?

何って、この岩山のてっぺんに幻のビッグジュエルがあるって噂をビスケから聞いたもんでハンター試験までまだまだ時間もあることだしとロッククライミング中ですが何か?

『まぁいいや。ばあちゃんが突拍子も無いってのはみんな知ってるし』
「失礼な孫だね、キルア。どうでもいいけど、ほら、さっさと用件言いな」
『・・・・・・家出してきたからちょっとの間匿って欲しかったんだけど・・・なんか変なところにいそうだからいいや。どっか適当にプラプラして』
「そうかそうか、家出か。ちょっと待ってて、1時間ほどで迎えに行ってあげる。適当に喫茶店にでも入ってデザートでも食ってな」

キルアの『匿ってプリーズ』に早々に返事も聞かず電話をきった私は後ろから襲い掛かってくる怪鳥とバトルしながらとりあえずてっぺんにあるという宝石だけは先に確保せねばと、ロッククライミングじゃなくもう岩山を登る勢いで(ただし明らかに90度の岩壁だ)走りぬけていく。




目指すはキルア、どう贔屓目に見ても私似の可愛い可愛い孫のところだ。