世の中の中学三年生っていうのは高校受験にむけてやれ受験だのと忙しない日々を送っているんだと思う。
夏休み終了直後のこの季節、とくにそうなんじゃないだろうか。
そのてん、あたしはまだ幸せなんだろう。
中学受験なんてものを親に言われるままこなし(純粋な小学生だったあたしは疑問にすら思わずお受験を頑張ったものだ)中高一貫のいわゆる進学校に通っているため高校受験というものが必要ではないのだから。
進学校といってもたいして公立とかわりやしない。
友達と騒ぎに騒いで、漫画も読めばカラオケでワイワイ、勉強なんてテスト一週間前からあわてだしてなんぼのもんだ。
あたしの場合、周りの友達と違い二年になってから中学部の生徒会にはいり三年生の今は生徒会長なんてもんをやっている。
ただ高等部の生徒会が学校を代表しているので中等部の生徒会にはたいして権限もなけりゃ仕事も少ない。
中学校代表としての仕事とかがない限り、本当楽な仕事だと思う。
いつものように先生に頼まれた仕事をこなしながら他の生徒会メンバーと生徒会室で騒ぐだけ騒いだあたしたちは先生に怒られ帰路についた。
みんな住んでいるところが結構ばらばらで、すぐに駅の中でバイバイを言う羽目になる。
あたしの家もバラバラのうちの一人で駅に置いてある自転車に飛び乗ると髪の毛がバッサバサになるのも構わずスピードを思い切りだしながら漕ぎだす。
途中本屋さんで週刊少年ジャンプを買うのを忘れずに。
「ただいまー」
家の中に誰もいないとわかってて挨拶をするのももう慣れたものだ。
勘違いしないでほしいのはあたしの両親はしっかり健在でただ二人とも共働きだってこと。
母親の方は比較的早くに帰ってくるけれど、父親の方は日付が変わる頃に帰ってくることが多い。
それでも家族仲は良くて、あんた本当お父さん好きねぇと友達にも言われるほどだ。
カバンを部屋の中に放り投げ制服のボタンを外しながらキッチンに向かっていると、カウンターに置いてある電話の留守番ボタンがちかちかと点滅しているのが目に入る。
再生ボタンを押しそのまま冷蔵庫の扉をあけ中からお茶のはいったボトルを取り出しグラスに注ぐ。
ピーという電子音のあとお母さんの声が多少のノイズと一緒に聞こえてくる。
車の音が聞こえてきてるので恐らく外から携帯でかけてきてるのだろう。
『もしもーし?ちゃーん?お母さんだけどー。突然なんだけどあなたのイトコ二人預かることになったの。六時半ごろお母さんと一緒に帰るからそれまでに家の中適当に片付けといてくれるー?よろしくねー。キャー信号青になっちゃっブチッツーツー』
9月13日、15時28分 一件デス
今のは一体何だったんだろう。
あたしの記憶が正しければイトコが二人来る、だったと思うのだけれど、あと掃除しといてだったかな。
別に掃除くらいは構いやしないのだけど、なんでまたこんな中途半端な時期に二人も預かることになったのか、ただただ疑問だ。
イトコたちはお母さんの弟の子供で、確か二人とも小学生だったと思う。
最後に会ったのが去年のお正月直前で二人揃ってお姉ちゃんお姉ちゃんと構い倒され非常に疲れたのを覚えている。
なんだか面倒くさいことになりそうだなとばかりにため息を一つこぼし、掃除機をかけるべく和室へと向かう。
適当に掃除機をかけ適当に吹き掃除をし適当に空き部屋の整理をする、全てが適当だ。
どうせ後でお母さんがやるでしょ、と他人任せ。
一通り終わらせたあたしは先ほど買ってきたばかりのジャンプを読むべくリビングのソファにゴロリと横になった。
ジャンプだけは読む漫画の順番があたしの中で決まっていて、一番にナルトを読んでそれからブリーチ、ワンピース、次にテニプリで大笑いして後のを順番に読む。
毎週毎週試合のシーンだけでも色々テニプリで大爆笑してるのは多分あたしだけじゃないはず。
どんなに真面目な試合でも噴き出さずにはいられない。
そうこうしているうちにピンポーンとチャイムの音が部屋の中に響き渡る。
時計を見てみるとお母さんの言っていた六時半を少し回っていて、帰ってきたのかと立ち上がり玄関へと向かった。
勝手に鍵が開き、ただいま〜なんていうお母さんの声と一緒に玄関の扉が開けられる。
「おかえんなさい」
「掃除しといてくれたー?」
一応ね、と返すとお母さんはならいいのよ〜とばかりにドアの向こうにいるのだろうイトコ二人に入ってらっしゃいなんて声をかけている。
この間会った時同様飛びつかれるもんだと覚悟して無駄に構えていたあたしの前に現れたのは。
「はい、なんちゃってイトコの周助くんと裕太くん」
なんだかさっきジャンプで見かけた人たちだった。