「受け取るとイイネ!」
「うぎゃお!」
何故か背後から突然斬りつけられた、新撰組ならこれだけで切腹モノだ。
ただし、斬りつけた人間も普通じゃなければ斬りつけられた人間も普通じゃなくシュっと音をたてて振り下ろされた刀は地面を思い切り抉り取るだけで終わった。
「ななななにすんのさ、フェイタン!母親を斬りつける人間がいるか、フツー!?」
「ここにいるね!とりあえず受け取るといいよ」
あっさりとかえされた返事にはガックリしながらも目の前に立つフェイタンが放り投げるようにして寄越した箱を受け取った。
なにこれ、と箱をあけてみれば可愛いチョコレートが三つ、コロンと並べられている。
「お!かわいいじゃないのさ、どうしたのこれ。しかもこの箱、メルンデボルカのチョコじゃないの。いやだぁ、フェイタン男前〜」
「ささと食べるといいね。それでささとくたばるといいよ」
「・・・は?ちょっと聞き捨てならない言葉が今あったような」
「気のせいね」
絶対に気のせいじゃないと思い、近くをたまたま横切った猫に無理矢理チョコを一つ押し込んでみる。
猫はフギャーと嫌がったものの一応飲み込んでくれ、けれど何もらしき反応は起こらなかったので安心して離してやると一目散にの傍から逃げていく。
しかしその猫の姿を追ってみているとしばらくしてピクピクと痙攣し始めたかと思うとバタリと倒れてしまったのが視界に入る。
ヒィ!と叫び声をあげながら猫のところへ走っていけば、猫は口から泡を吹き出しながら絶命してしまっている。
「フェイタン!!!」
「・・・・・ちっ、今年も失敗ね。そろそろ回りくどいことはやめた方がいいかもしれないね」
「おまっ、おまっ、母さんのことなんだと思ってんの!毎年毎年毒盛りやがって!」
「なにて、ちょと解剖させてほしいだけね」
「ちょっとで解剖されてたまるかっつの!こんのクソガキャ!!」
「お母さん、ワタシお母さんをちょと解剖してみたいよ・・・おねがいね・・・」
「うおぉぉぉぉ!!そんな可愛い顔してちょっとかわいこぶった声をだしてもさせてやらんわ!!」
ヤメロヤメローと言いながら自分の頭を掻き毟る一応母親の姿をフェイタンは失敗かと舌打ちしながら見つめた。
やはりかくなる上は力ずくしかないようだ、この普通じゃない母親が相手だけれども。
フェイタンはギリっと自分の刀を握る手に力をこめると、再びに向かって斬りかかっていった。
これでも一応二人は親子である。